◆住まいの再建へ支援が必要だ
1万8000人を超える死者・行方不明者が出た東日本大震災の発生から4年を迎えた。
犠牲者の冥福を改めて祈りたい。
大津波は、岩手、宮城、福島3県の沿岸部を破壊した。多くの人々が生活の基盤を失った。
現在も約8万人がプレハブの応急仮設住宅で暮らす。手狭なうえに、防音面などでプライバシーを保ちにくい。
被災者の住環境の向上は、今なお最優先の課題である。
今年から来年にかけ、住宅再建が本格化する。新たな生活拠点の創生は、地域再生へ向けた確かな一歩となろう。
◆コミュニティー再生を
仙台空港の南に位置する宮城県岩沼市に、1000人が暮らせる街が生まれた。市が海から3キロの土地を2メートルほどかさ上げし、この1年で約180戸の復興住宅の建設を進めてきた。自ら家を建てる人のための宅地も造成された。
水田だった土地に真新しい家が整然と並ぶ。公園も整備された。夏にはスーパーが開業する。仮設住宅暮らしを余儀なくされていた人たちの入居が始まっている。
3県を合わせると、今月末までに1万戸近い復興住宅の完成が予定される。1年後には約2万戸にまで増える見通しだ。
用地取得のため、各自治体の職員が人海戦術で地権者と交渉を重ねた。3県の自治体の4割余で、2015年度中の事業終了が見込まれる。この流れを減速させないことが大切だ。
住宅整備の遅れが目立つ自治体も少なくない。平地の少ない三陸沿岸部などでは、事業終了までに3年以上かかる地域がある。
丘陵を切り崩すなど、大規模な工事を要する例が多い。建設資材の高騰も、工事の進捗を阻む。
政府は、資材の逼迫に対応するため、岩手県内に生コンクリートの製造プラントを建設した。こうした取り組みを充実させ、住宅整備を後押しすることが重要だ。
住まいの復興が進んだ後は、移転先でのコミュニティーの形成が大きな課題になる。
阪神大震災では、仮設住宅から復興住宅に引っ越した高齢者の孤独死が相次いだ。この教訓を踏まえた対策が求められる。
◆自立をいかに助けるか
体操などの交流イベントで住民同士のつながりを強める。自治体などの見守り活動で、高齢者の異変を察知する。仮設住宅で行われてきた取り組みを継続して、住民の孤立を防ぎたい。
家賃負担が生じる復興住宅への転居には、二の足を踏む被災者もいる。仮設住宅に残る人たちへの目配りは当分の間、欠かせまい。経済的な自立をいかに助けるかは、今後の重いテーマである。
3月1日には、東北の太平洋岸と首都圏を結ぶ常磐自動車道が、全線で開通した。物流の活発化が期待される。不通になっていた鉄道の復旧も進む。
病院や学校の復旧率は、被災地全体で90%を超えている。
インフラ整備など、ハード面の復興には一定のメドがついた分野が多い、との声が政府内にある。確かに、被災地の復興は、ソフト面に重点を移す段階に差し掛かっていると言えよう。
病院の再開を控える沿岸部では、医師や看護師を十分に確保できるのかという不安は拭えない。不登校が増加する中、子供の心のケアも急がねばならない。
◆集中期間の終了見据え
15年度は、政府が掲げる5年間の集中復興期間の最終年度だ。事業費は計26・3兆円に上る。
宮城、岩手両県の18市町村の首長らは先月、竹下復興相に期間延長を要望した。ほとんどの自治体で、復興事業は16年度以降も続く。3県の試算では、さらに8兆円超が必要だという。
安倍首相は記者会見で、新たな5年間の復興支援の枠組みを今夏に策定する方針を表明した。
住宅再建など、被災者の生活基盤に関わる事業への国費投入は、引き続き必要である。
ただ、26・3兆円は、所得税の特別増税などで、ようやく確保した財源だ。集中期間終了後に、全体として支援規模が縮小していくのは、やむを得ないだろう。
復興を成し遂げるために何が必要か。それを精査し、優先度の高い事業に、重点的に財源を充てるなど、メリハリをつけた支援が、より重要になってくる。
首相は「被災者に寄り添いながら、復興に全力を挙げていく」と語った。国民全体で被災地を支えることを再確認したい。
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