イスラエル首相 危うい挑発的外交

朝日新聞 2015年03月07日

イスラエル首相 危うい挑発的外交

米国とイスラエルといえば、切っても切れない緊密な同盟関係にあるはずだ。ところが異様な「首脳外交」がおきた。

イスラエルのネタニヤフ首相が米国を訪問し、議会を舞台にオバマ大統領の外交政策をこきおろしたのである。

ネタニヤフ氏を招いたのは、野党共和党の下院議長だった。頭ごしの訪米に大統領府は不快感を隠さず、オバマ氏は演説を非難し、会談を拒んだ。

問題の焦点は、イランの核問題である。米政府が主導するイランとの交渉をネタニヤフ政権は批判し続けている。今回は、米議会の野党と組んでオバマ政権に圧力をかけた形だ。

だが、この振る舞いは、イスラエルのためにも、世界のためにもならない。米国内の政争に便乗して自らの外交得点を挙げようとする試みは、両国間の関係に禍根を残しかねない。それは中東、ひいては世界の一層の不安定化につながる。

ネタニヤフ氏は危うい挑発行動を控え、米政府と真摯(しんし)に向き合い、議論を深めるべきだ。

イランの核問題の解決は、世界の安保と経済のために必須である。このまま悪化すれば、中東に核開発の連鎖が起き、原油市場も揺るがしかねない。

過激派組織「イスラム国」対策や、イラク、シリアの再建に向けてもイランの協力が不可欠だ。米政府が対話による核問題の解決を探る努力を重ねるのは理にかなっている。

本来ならば地域の大国であるイスラエル自身が取り組むべき課題のはずだ。だが、ネタニヤフ氏は制裁強化を唱えるなど強硬策一辺倒で、イランとの共存の道筋を真剣に探る意思があるようにも見えない。

イスラエルは近く総選挙を控えているが、もしネタニヤフ氏が国内の強硬派を引きつける狙いで今回の行動に出たとしたら、軽率というほかない。

米政界の超党派的なイスラエル支持の伝統に陰りが出れば、イスラエルの長期的な国益を著しく損ねるだろう。イランの核問題をめぐる交渉進展を妨げ続ければ、国際的にも孤立を深める。ネタニヤフ氏は国家指導者として冷静に考えるべきだ。

イランの国際協議は、枠組み合意の期限である3月末を前に山場を迎えている。米国とイランは歩み寄りを見せつつも、様々な条件をめぐって、なお隔たりを抱えているようだ。

米政府は、今回の騒動に影響されることなく、粛々と交渉の詰めを急いでもらいたい。イラン核問題は、世界が打開を待ち望む喫緊の課題である。

読売新聞 2015年03月08日

米VSイスラエル 中東安定へ亀裂の修復を図れ

イランの核開発疑惑を巡り、長年の盟友国が重大な対立に陥っている。異例の事態である。

イランと米欧露などによる核協議が大詰めを迎える中、イスラエルのネタニヤフ首相が米議会で演説し、協議中の合意案を「非常に悪い取引だ」と公然と批判した。

ネタニヤフ氏は「これでは核開発は阻止できない。ない方がいい」とも述べ、核関連施設の全廃を主張した。17日の総選挙に向け、イランへの強硬姿勢をアピールする政治的な狙いがあるのだろう。

核問題の平和的な解決を目指す国際社会の努力に水を差す、非生産的な言動と言うほかない。

ネタニヤフ氏訪米は、イラン核協議に懐疑的な共和党のベイナー下院議長が、政権の頭越しに実現させた。それへの反発もあり、オバマ大統領は会談しなかった。

両国の亀裂がここまで表面化したのは深刻な状況だ。中東の不安定化を避けるには早期修復が望ましいが、楽観できない。米国内の党派対立が外交に悪影響を及ぼしたことも、見過ごせない。

米欧露などとイランは一昨年11月、イランが濃縮度20%ウランの製造を停止し、プルトニウムを生産できる重水炉の建設も中断する「第1段階」措置で合意した。

今月末までに「枠組み合意」を、6月末に最終合意を目指している。イランに原子力平和利用の権利を認めつつ、遠心分離器の削減などに応じて、対イラン制裁を解除することが柱である。

残り任期が2年を切ったオバマ氏には、核合意を政権の「遺産」としたい思惑がうかがえる。功を焦らず、イランの核開発を阻止するため、検証可能で包括的な合意を追求するべきだろう。

オバマ氏の場当たり的な中東外交が、イスラエルの反発を招いたことも否定できない。

シーア派大国のイランは近年、同じシーア派政権下のイラク、シリアに加え、レバノンやイエメンでも影響力を強めている。スンニ派の過激派組織「イスラム国」の掃討作戦においても、米国は、イランと利害を共有する。

このため、オバマ政権は、35年間も断交状態にあるイランに接近した。「イスラム国」掃討作戦では水面下の共闘も指摘される。

米国のイラン接近は、やむを得ない面もあるが、中東全体の安定を考えれば、イスラエル、サウジアラビアなど同盟国への配慮は欠かせない。オバマ氏は、新たな対イラン戦略を丁寧に説明し、理解を得る努力を尽くすべきだ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2118/