中国全人代開幕 安定成長へ軟着陸できるか

朝日新聞 2015年03月08日

中国全人代 改革は誰のために

改革は革命よりも難しい。政治の世界でそう言われることがある。

ひとたび仕組みが出来上がれば様々な利害が絡まり、変えるのは容易ではない。どの国にもあろうが、いまの中国もまた、この難題に直面している。

中国の全国人民代表大会が開かれている。習近平(シーチンピン)国家主席が見守るなか、李克強(リーコーチアン)首相が経済について「改革の深化と構造の調整を行わなければ安定した健全な発展は達成しがたい」と述べた。

改革メニューは多岐にわたる。民間銀行設立を認め、金利を市場化する金融改革。予算の透明度を高める財政改革。許認可手続きを簡素化する行政改革。一見したところ「官」をスリム化し、「民」を生かし、さらに高い経済水準を実現しようという方向がうかがえる。

が、どうしても疑問が残る。

たとえば、今年は公共投資を拡大する。8千キロに及ぶ鉄道の新規建設をはじめ、水利、エネルギー関連の事業が予定されている。これら巨額の投資の決定権をすべて政権が握っている。しかも大型公共投資への民間参入は厳しく制限され、請け負ってきたのは国有企業だ。それをどこまで開放できるのか。

一方、政府部門の予算と決算を公開し、社会の監督を受けさせるという改革は、中国史上、画期的と言っていい。が、納税者の代表が集まって予算を決められるわけではない。

民間の力を借り、民意をくむこともあるが、あくまでも共産党による強力なコントロールのもとで国家を統治する。それが目指す全体像なのだろう。

習政権の強権ぶりが目立つのも、こうした文脈で考えれば合点がいく。

すさまじいのは汚職の摘発である。党最高幹部だった周永康氏の事件のあとも、一向に手を緩める気配がない。昨年末には胡錦濤・前国家主席の側近だった令計画氏が摘発された。

「巨悪」追及は多くの市民に支持されている。だが党による調べが司法機関に先行する不透明な手続きであり、単純に指導者・公務員の清廉さを追求しているようには受け取りがたい。

締め付けは汚職にとどまらない。言論統制の圧力は前政権をしのぐ。知識人が拘束され、インターネットは監視下にある。

習政権の発足から2年。大方の予想に反し、まれにみる「強い政権」となった。しかし、改革を進めるのであれば、それは本来、人々の暮らしを向上させるためにある。社会を息苦しくするのが目的ではない。

毎日新聞 2015年03月07日

中国全人代 軍事より民生が重要だ

中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が開幕し、李克強(り・こくきょう)首相が政府活動報告を行った。成長率目標を昨年までの7.5%から7%に引き下げ、構造改革推進と安定成長で中国経済のかじ取りを進める方針が打ち出された。

読売新聞 2015年03月06日

中国全人代開幕 安定成長へ軟着陸できるか

世界2位の経済大国・中国は、高成長から安定成長へうまく軟着陸できるのか。その成否は世界経済の行方にも大きな影響を与えよう。

中国の国会にあたる全国人民代表大会が開幕した。

李克強首相は政府活動報告で、経済成長率の目標をこれまでの「7・5%前後」から「7%前後」に引き下げた。

昨年の成長率は、目標を下回る7・4%にとどまった。電力消費量や鉄道輸送量などから推計すると、実際の成長率はもっと低いとの見方もある。

李氏は報告で「経済発展は新常態(ニューノーマル)に入った」と述べた。「大規模投入、資源・エネルギーの高消費、数量の拡張に偏った発展パターンは、もはや続けられない」とも強調した。

成長の減速は、大規模なインフラ整備をはじめとした投資主導の成長路線が、限界に近づいていることを示していると言える。

労働者の賃金が高騰し、輸出競争力や「世界の工場」としての魅力にも陰りが見えている。

一定の減速を「常態」として容認し、経済構造の転換を図ろうという狙いは理解できる。

李氏は、課題として、成長の質の重視、個人消費の促進、金融リスクの拡大防止などを挙げた。

不動産市況の悪化により、土地開発を主導してきた地方政府などへの巨額の融資が、不良債権化していると言われる。特に、地方都市の疲弊が目立つ。社会不安をどう回避するかが問われる。

肥大化した国有企業の整理・再編を進めることで、民間企業の成長を促すことも必要だ。

既得権益に切り込む改革は痛みが伴う。国民の不満を抑えながら、大なたを振るうのは、容易ではあるまい。習近平政権は、難しいかじ取りを迫られている。

一方、経済減速にかかわらず、中国の国防予算は前年より10%以上増え、日本の防衛関係費の約3・4倍に膨らんだ。海洋進出や米国への対抗をにらんだ海空軍と核戦力の増強が重点となる。

研究開発費なども含めれば、実際の予算は公表分を大きく上回ろう。不透明な軍拡は、国際的な対中不信を増幅させるだけだ。

李氏は、戦後70年に関して「第2次大戦の勝利の成果と、世界の公平、正義を守る」と述べた。

「戦勝国」として世界秩序を守ると強調したいのだろうが、インドやベトナムとの武力衝突を繰り返し、戦後秩序に挑戦してきたのは、中国ではないか。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2116/