群馬大病院調査 連続死を許した甘い管理体制

朝日新聞 2015年03月05日

群馬大病院 異常な医療なぜ許した

言語道断の事態である。

腹腔(ふくくう)鏡による肝臓手術で8人が相次ぎ死亡していた問題で、群馬大病院が全員の診療で「過失があった」とする調査報告書を公表した。

驚かずにはいられない。

要するに、腹腔鏡での肝臓切除では経験の乏しい医師が、十分な事前検査も検討もなしに、むやみに新しい手技に挑み、術中・術後にも不適切な処置があったというのである。

報告書を読むと、医師の行動には患者を大事にする思いがまるで感じられない。「医師の適格性に問題がある」(病院長)として、すべての診療行為から外されたのは当然のことだ。

だが、より大きな疑問は、最も組織的に高度な医療を提供するはずの大学病院で、こんなでたらめがなぜ許されてきたのか、ということである。

群馬大病院は、報告書を受けて組織の見直しも併せて公表した。だが、従来の組織運営のどこに問題があったかは、必ずしも明確になっていない。

他の大病院も参考にできるよう、詳細に公表すべきである。

報告書によると、第2外科の40代医師は、死亡した8人を含め58人に保険適用外の腹腔鏡による肝臓切除を実施していた。

本来、臨床試験として、安全性や倫理性を病院の審査委員会で慎重に検討したうえで実施すべきなのに、申請しなかった。

本人や家族への説明も、手術に耐えられる状態かどうかの事前検査も、不十分だった。

そんな状況を第2外科は放置・黙認していた。

科内での症例検討会で医師の診療方針に異議は出なかった。病理解剖はされず、死亡後の検討もほとんどなかったようだ。

最も重要な反省材料である死亡例の検証がこれほどおろそかになっていた事実は、組織全体の問題である。第2外科教授のみならず、病院全体の体質が背景にあるのではないか。

この病院では05年に第1外科の生体肝移植で臓器提供者が下半身まひになる事故が起きた。技術が未熟な医師による執刀、二つの外科が同じような治療を別々にしていることによるマンパワーの分散など、今回と共通する要因が指摘された。

当時の再発防止の決意は、どうなったのか。患者を守るはずの病院の取り組みは、なぜ十分に働かなかったのか。病院はさらに徹底解明すべきだ。

高度な医療を提供する「特定機能病院」は、地域医療の中核も担う。これを機に、各地の大病院は、同様の問題が潜んでいないか点検してもらいたい。

読売新聞 2015年03月05日

群馬大病院調査 連続死を許した甘い管理体制

ずさんな手術が、なぜ繰り返されたのか。患者の連続死を見過ごしてきた群馬大病院の責任は、極めて重い。

2010~14年に、群馬大病院第二外科で腹腔ふくくう鏡の肝臓手術を受けた8人が、100日以内に死亡した問題について、病院が調査報告書を発表した。全員のケースで「過失があった」と結論付けた。

8人の手術は、40歳代の同じ男性医師が担当した。報告書によると、肝臓を切除し過ぎて肝不全を起こしたり、縫合が不完全で感染症を引き起こしたりした事例があった。手術後の出血への対応が不適切だった点も指摘された。

過失と死亡の因果関係は明らかではないが、死亡に影響した可能性は大きいのではないか。

報告書は、患者に手術の同意を得る説明文書の記述が不十分だと指摘した。術後の合併症にどう対応したかが検証できないほど、カルテの記録がいいかげんだったことも、問題点として挙げた。

この医師が執刀した肝臓の開腹手術でも09年以降、10人が死亡している。うち1人は、後にがんでないことが判明したのに、医師は死亡診断書に「胆管細胞がん」と記していた。

医師としての適性を著しく欠いていると言わざるを得ない。

どうして腹腔鏡手術を繰り返したのか。報告書がこの点に触れていないのは物足りない。医師は学会で「手術成績はおおむね良好」と発表していた。患者の安全よりも、手術の実績作りを優先したとみられても仕方がない。

看過できないのは、腹腔鏡手術の死亡例について、第二外科の内部で、十分な検証が行われなかったことだ。責任者の教授は「認識の甘さ、指導力のなさに問題があった」と反省している。

早い段階で、この医師の技量を見極め、外科治療の現場から外していれば、患者の連続死を防げたかもしれない。

病院長が連続死の事実を把握したのは、昨年6月になってからだった。病院全体の安全管理体制にも不備があった。

群馬大病院は高度な医療を提供することで診療報酬が優遇される「特定機能病院」だ。菅官房長官は、「特定機能病院の取り消しを含めて検討を行っている。体制の見直しが必要だ」と指摘した。

群馬大病院は、死亡例を検証する専門委員会を新設する。外科の診療体制を再編する改善策も示した。地域の基幹病院として、再発防止体制を築くことが急務だ。

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