朴大統領演説 関係改善望むなら行動を

読売新聞 2015年03月03日

朴大統領演説 硬直した対日姿勢が続くのか

歴史問題で日本側に一方的に譲歩を求める姿勢は、変わらなかった。日韓関係を改善する道筋が見えないのは残念だ。

韓国の朴槿恵大統領は1日の「3・1独立運動」記念式典で演説し、「今年は韓国と日本が国交正常化50周年を迎える意義深い年だ」と語った。両国が「より成熟した同伴者」になるべきだ、と未来志向の呼びかけもした。

一方で、現状について「歴史を巡る対立のため心の距離は縮められていない」と表現した。日本側に「勇気を持って歴史的真実を認める」ことも求めている。

韓国は「正しい歴史認識」を持っており、関係悪化の責任はすべて日本側にある。そんな偏った朴氏の外交基調は従来通りだ。

李明博前大統領の竹島訪問で悪化した日韓関係は、朴政権の2年間、その度を増している。

最大の原因は、慰安婦問題で日本側が新たな具体策をとらない限り首脳会談には応じない、という硬直した朴政権の方針である。

朴氏は今回の演説で、元慰安婦が高齢で「名誉回復の時間はいくらも残されていない」と、日本側に早期の対応を重ねて求めた。

元慰安婦を含む個人への補償問題は、1965年の請求権協定で「完全かつ最終的に」解決している。日本政府は、95年にアジア女性基金を設立し、韓国の元慰安婦61人らに、首相のおびの手紙とともに「償い金」も支給した。

韓国政府は当初、基金設立を評価したが、その後、日本の法的責任を追及する民間団体と歩調を合わせる立場に転じた。

日本側の努力を無視するように圧力をかけ続ける朴氏の発言は、受け入れがたい。

朴氏は「日本政府の教科書歪曲わいきょくの試みが続いている」とも批判した。米国の世界史教科書の記述訂正を外務省が出版社に求めたことなどが念頭にあるのだろう。

問題となったのは、旧日本軍が「最大20万人」の慰安婦を強制的に募集したとの記述だ。こうした史実とかけ離れた内容は、日本の名誉を不当におとしめるもので、放置できないのは当然である。

朴氏に対する名誉毀損きそんの罪で公判中の産経新聞前ソウル支局長に対し、韓国当局が半年以上も出国禁止措置を続けていることも、関係改善の障害となっている。人権問題として看過できない。

朴氏は、経済・福祉政策への不満などから支持率が30%前後に低迷し、求心力も低下している。対日政策を柔軟な方向に転換させることは当面、期待できまい。

産経新聞 2015年03月03日

朴大統領演説 関係改善望むなら行動を

韓国の朴槿恵大統領が「3・1独立運動」を記念する式典で行った演説で、「成熟したパートナーとして韓日が新たな歴史を築いていくことを望む」と語った。

真にそう考えるなら、歴史問題で日本側に新たな対応を求めるような前提をおくことなく、安倍晋三首相との首脳会談の実現に動くべきだ。

それは、慰安婦問題など「歴史」を外交カードとし、関係改善を遅らせてきた頑(かたく)なな姿勢を転換することにほかならない。今の韓国とでは、日本が共通の価値観を見いだすのは難しい状況になっていることを考えてほしい。

朴大統領は日韓が「価値を共有する」とも述べた。だが、日本の歴史問題をめぐり、共産党一党独裁の中国の習近平政権と共闘するかのような言動は、日本との価値共有とかけ離れている。

大統領に関するコラムをめぐり、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が名誉毀損(きそん)で在宅起訴され、出国禁止が半年以上解かれないのも、言論の自由を保障する国家として極めて異様な姿だ。

安倍首相が2月に行った施政方針演説では、韓国について「最も重要な隣国」と表現した。「基本的な価値や利益を共有する最も重要な隣国」という昨年の言い方から、はっきりと後退している。

それでも、安倍政権は中韓両国首脳に対して「対話のドアは常に開いている」と呼びかけてきた。その結果、日中首脳会談は昨年11月に実現した。

朴大統領は演説で、「歴史問題での対立で心の距離は縮まっていない」「教科書の歪曲(わいきょく)の試みが続いている」と日本批判も繰り返した。ただ、その批判のトーンは抑制的で、「重要な隣国」としての将来への期待感を打ち出したものとの見方もある。歩み寄りへのシグナルともみられるが、より明確に関係改善に動くべきだ。

日中韓3国が、今月下旬の外相会談開催を調整している。こうした機会も、日韓首脳会談開催への糸口となり得るだろう。

おりから、北朝鮮は短距離弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した。国連安保理決議違反であり、東アジアの安全保障環境が不安定なことを示している。日韓が共に対処すべき現実の課題だ。

国交正常化50年の節目に首脳会談のめどすら立たない異常事態から、抜け出すときだろう。

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