言葉のセクハラ 厳格な処分を支持した最高裁

読売新聞 2015年02月27日

言葉のセクハラ 厳格な処分を支持した最高裁

度を越した従業員のセクハラ発言に、企業が厳格に対応するのはもっともだ――。最高裁の明快なメッセージだろう。

女性従業員にセクハラ発言を繰り返した男性社員2人に対する懲戒処分を巡り、最高裁は処分を妥当だとする判決を言い渡した。

大阪の水族館運営会社で課長代理を務めていた2人は、部下の女性に「結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで」「夜の仕事とかせえへんのか?」といった言葉を度々発した。

露骨な性的話題を口にすることもあったという。

会社は、2人を30日間と10日間の出勤停止処分としたうえで、係長に降格させた。

最高裁は、「強い不快感や嫌悪感、屈辱感を与え、執務環境を著しく害した」と、一連の発言の悪質性を認定した。

体への接触の有無にかかわらず、性的な言動で相手を不快にさせることは許されない。そんな警告と捉えることもできる。

1審の大阪地裁は、会社の処分を支持した。2審の大阪高裁は逆に、処分を無効と判断した。

高裁は、女性が明確に抗議しなかったことから、2人は自分たちの発言が許容されていると受け止めたと認定した。これを踏まえ、処分が重すぎると結論付けた。

セクハラへの理解を欠いた判断だったと言わざるを得ない。

最高裁は、セクハラの被害者について、「職場の人間関係の悪化などを懸念し、抗議や抵抗、会社への申告を躊躇ちゅうちょすることが少なくない」という点を重視した。実態を的確に捉えている。

ハラスメント被害に対し、「我慢した」「諦めて仕事を辞めた」という女性は、それぞれ3割前後に上るという調査結果もある。

2人は、職場のセクハラ防止に努めるべき管理職の立場にあった。それにもかかわらず、悪質な発言は1年余りにも及んだ。

こうした状況を考えれば、最高裁が、処分無効を求めた2人の訴えを退けたのは、当然である。

2007年に施行された改正男女雇用機会均等法は、相談体制の整備など、必要な措置を講じるよう事業主に義務付けた。運用指針では、厳正な対処を就業規則に定めることも求めている。積極的に取り組んでいる企業は多い。

だが、言葉のセクハラを軽視する風潮は、一部に根強く残っているのも事実だろう。最高裁判決を機に、セクハラに対する意識改革をさらに進めたい。

産経新聞 2015年03月02日

セクハラ判決 職場の意識変える契機に

職場での言葉のセクハラに、最高裁は厳しい判断を示した。女性従業員にセクハラ発言を繰り返した男性社員の懲戒処分をめぐり、最高裁は出勤停止などの処分を「妥当」と認めた。

各企業はセクハラ防止対策を進めているが、問題は絶えない。自らの言動を軽くみて相手を傷つけていないか。胸に手をあて職場の意識を変える契機としたい。

水族館などを運営する「海遊館」(大阪市)の課長代理の男性2人が、部下の女性派遣社員らに「俺の性欲は年々増すねん」などの性的発言を繰り返したとして、出勤停止の懲戒処分を受け、降格された。男性側がこれを不服として会社側を訴えていた。

1審大阪地裁は処分を有効と判断したが、2審大阪高裁は「事前の警告がない重い処分」などとして男性側の逆転勝訴とした。

最高裁は、管理職が弱い立場の女性が一人でいるときにセクハラ発言を繰り返したことなどを重くみて、「極めて露骨で卑猥(ひわい)」「著しく下品な言葉」が繰り返されたことにより、「強い不快感や嫌悪感、屈辱感を与えた」と、厳しい言葉を並べて指弾した。

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