様々な事態が発生した際に、自衛隊を機動的に派遣し、世界の平和と安定に協力できる法制にすることが肝要だ。
新たな安全保障法制に関する与党協議が本格化してきた。自衛隊の国際協力活動は、現行の周辺事態法と国連平和維持活動(PKO)協力法の改正と、新たな恒久法の3本柱の法制とする方向で調整している。
無論、自衛隊が戦闘行動に参加することはない。他国部隊に対する補給・輸送などの後方支援を柔軟かつ効果的に実施できるようにしておくことが欠かせない。
その観点から、周辺事態法を改正し、地理的な制約を外すとともに、米軍以外の他国軍への後方支援を可能にすることが重要だ。
肝心なのは、危機が発生した場所がどこかでなく、日本の平和と安全にどんな影響を与えるかだ。朝鮮半島有事に限らず、日本から離れた地域の事態が重大な影響を及ぼすことは十分あり得る。
米軍以外の部隊と自衛隊が連携する機会も少なくなかろう。
恒久法では、国連安全保障理事会の決議がない場合も含めるかどうかが焦点となっている。
自衛隊が役割を果たせる活動はPKOやインド洋での給油、イラク復興支援のように国連決議に基づくものに限定されまい。
2000年以降だけでも、スリランカやフィリピン・ミンダナオ島の停戦監視、ソロモン諸島の治安維持など、決議がない活動に多国籍部隊が従事した例は多い。
そもそも安保理は、一部の国が拒否権を発動すれば、決議の採択はできない。決議のない「有志連合」の活動にも自衛隊が参加する余地を恒久法に残すべきだ。
恒久法を制定すれば、平時から訓練や調査を重ね、装備を整えるなどの派遣準備が可能となる。
自衛隊はすべての活動に参加するわけではない。任務の重要・緊急性や、日本との関係、他国の動向などを総合的に勘案し、その都度、派遣の是非を判断する。
原則、国会の事前承認を得るなどの手続きを定めておくことが、文民統制上の歯止めとなろう。
自衛隊による海外で拘束された邦人の救出や、周辺事態以外での船舶検査を可能にすることも検討されている。邦人救出は、受け入れ国の同意などの厳しい条件が付くし、特殊な訓練も必要だ。
実際に自衛隊を派遣する可能性が高くなくても、あらゆる事態に備えた法制を整備することが、切れ目のない対応と、迅速な国際協調行動を可能にしよう。
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