ギリシャは財政再建に誠実に取り組むのか。具体策をしっかり見極める必要がある。
欧州連合(EU)は、金融支援延長の条件としてギリシャが提出した構造改革案を了承した。
EU各国は、今月末で期限切れとなる支援策を、4か月延長するための国内手続きを進める。
ギリシャの改革案は、脱税対策の強化による税収増や、無駄な歳出の削減によって、財政再建を進めることを約束した。
EUは声明で「十分に包括的だ」と前向きに評価したが、肝心の中身は踏み込み不足である。
EUとともにギリシャ支援を担う国際通貨基金(IMF)などが、「具体性に乏しい」と批判しているのはもっともだ。
ギリシャ政府の資金繰りは、既に綱渡り状態とされる。ギリシャでは、財政破綻への懸念を背景に金融不安が高まり、銀行預金を引き出す動きも強まっている。
「反緊縮」を公約し、国民の支持を得たチプラス政権としても、差し迫った危機を回避するため、EU側と一定の妥協を図らざるを得なかったのだろう。
ギリシャが今後、より詳細な改革案を提出し、4月末までにEU側の合意を取り付けないと、支援延長は白紙に戻る。交渉の先行きは、予断を許さない。
今回の改革案でさえ、反緊縮を掲げるギリシャの与党内から反発の声が出ている。これまでの緊縮策の副作用で、失業率が25%を超えるなど経済の低迷が続き、国民の不満も強まっている。
EU側との合意に向けて、緊縮財政の継続について連立与党の意見をまとめ、国民を説得するのは容易ではあるまい。
しかし、交渉が決裂し、債務不履行(デフォルト)などの事態となれば、ギリシャ経済は壊滅的な打撃を受ける。ツケを払わされるのは、ギリシャの国民である。
チプラス政権は、実効性のある構造改革案を、早急に策定しなければならない。
ユーロ体制は、共通通貨のもと、各国が独自に財政を運営している。国力や経済情勢によって政策の足並みが乱れる構造的な弱点があり、これを補うため加盟国に厳しい財政規律を課している。
その国の経済規模の大小にかかわらず、財政運営を巡る不協和音で「落後者」を出せば、欧州統合の推進力は弱まりかねない。
ギリシャ問題を乗り切れるかどうかは、ユーロ体制の行方を占う試金石である。
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