ギリシャ支援 長続きする再建策を

朝日新聞 2015年02月26日

ギリシャ支援 ユーロ安定につなげよ

欧州連合(EU)とギリシャが、対ギリシャ支援策について合意した。これで財政・金融危機の再燃といった事態は当面避けられる見通しになった。

しかし、今回の合意は、今月末で期限が切れる従来の支援策を4カ月間、延長するに過ぎない。ギリシャの経済と財政をどう再建するのか。ユーロを安定させるには、根本に立ち返った論議が必要だ。

これまでギリシャはEUなどの支援を受けて、資金繰りをしてきた。支援の条件の一つが緊縮財政だった。しかし、1月の総選挙で反緊縮を掲げる政権が誕生、条件の見直しを求めた。

今回の合意は、ムダな歳出の見直しなど従来の緊縮路線の継続という色彩が濃く、ギリシャ新政権にとっては大幅な妥協となった。それでも貧困層対策を認めるなど、EU側も最低限の譲歩はした。期限切れが迫る中で探った、現実的な着地点だったと言えるだろう。

ギリシャ政府は国営企業の民営化など、EUに約束した改革を着実に進めなければならない。改革は財政再建だけでなく、経済の効率化や体質強化につながることを、国民に説明し、理解を得る必要がある。

それでも、今回の支援策は6月末に期限を迎える。問題は次の支援の枠組みだ。

2009年の債務危機発生後、ギリシャの国内総生産(GDP)は約25%縮小し、失業率はいまだに約25%にのぼる。経済がこれほど縮んだままでは、いくら歳出を絞っても、財政は再建できないだろう。

規律を守るのは当然だとしても、いかに成長にも目配りした財政運営をするか。ギリシャの経済と財政を立て直すには、そんな考えに基づく長期的な取り組みが欠かせない。そのことを考慮したうえで、EU各国、中でも中心的な存在のドイツは、ギリシャと協議すべきだ。

債務危機は、ユーロの構造的な問題も明らかにした。ユーロには、ドイツのような経済力が強い国も、ギリシャのような弱い国も加わっている。ドイツの経済力から見ればユーロの相場は割安になりがちだが、ギリシャにすれば割高で、輸出産業の振興などは難しい。しかしユーロ圏各国の財政はバラバラで、各国間の経済のひずみを財政で調整することはできない。

ユーロ各国が国債の代わりに共同で発行する「ユーロ圏共同債」が一時検討されたが、ドイツなどの反対で具体化していない。長い目で見てユーロをどう安定的な通貨にするのか。そんな知恵が試されている。

毎日新聞 2015年02月26日

ギリシャ支援 長続きする再建策を

ギリシャ支援を巡る欧州諸国などとギリシャの交渉が、おなじみのパターンを繰り返そうとしている。

読売新聞 2015年02月26日

ギリシャ改革案 実効性のある具体策が肝心だ

ギリシャは財政再建に誠実に取り組むのか。具体策をしっかり見極める必要がある。

欧州連合(EU)は、金融支援延長の条件としてギリシャが提出した構造改革案を了承した。

EU各国は、今月末で期限切れとなる支援策を、4か月延長するための国内手続きを進める。

ギリシャの改革案は、脱税対策の強化による税収増や、無駄な歳出の削減によって、財政再建を進めることを約束した。

EUは声明で「十分に包括的だ」と前向きに評価したが、肝心の中身は踏み込み不足である。

EUとともにギリシャ支援を担う国際通貨基金(IMF)などが、「具体性に乏しい」と批判しているのはもっともだ。

ギリシャ政府の資金繰りは、既に綱渡り状態とされる。ギリシャでは、財政破綻への懸念を背景に金融不安が高まり、銀行預金を引き出す動きも強まっている。

「反緊縮」を公約し、国民の支持を得たチプラス政権としても、差し迫った危機を回避するため、EU側と一定の妥協を図らざるを得なかったのだろう。

ギリシャが今後、より詳細な改革案を提出し、4月末までにEU側の合意を取り付けないと、支援延長は白紙に戻る。交渉の先行きは、予断を許さない。

今回の改革案でさえ、反緊縮を掲げるギリシャの与党内から反発の声が出ている。これまでの緊縮策の副作用で、失業率が25%を超えるなど経済の低迷が続き、国民の不満も強まっている。

EU側との合意に向けて、緊縮財政の継続について連立与党の意見をまとめ、国民を説得するのは容易ではあるまい。

しかし、交渉が決裂し、債務不履行(デフォルト)などの事態となれば、ギリシャ経済は壊滅的な打撃を受ける。ツケを払わされるのは、ギリシャの国民である。

チプラス政権は、実効性のある構造改革案を、早急に策定しなければならない。

ユーロ体制は、共通通貨のもと、各国が独自に財政を運営している。国力や経済情勢によって政策の足並みが乱れる構造的な弱点があり、これを補うため加盟国に厳しい財政規律を課している。

その国の経済規模の大小にかかわらず、財政運営を巡る不協和音で「落後者」を出せば、欧州統合の推進力は弱まりかねない。

ギリシャ問題を乗り切れるかどうかは、ユーロ体制の行方を占う試金石である。

産経新聞 2015年02月26日

ギリシャ支援延長 改革を着実に具体化せよ

ギリシャに対する金融支援延長の条件と位置づけられていた同国の財政改革案を、欧州連合(EU)が承認した。ドイツなど各国は、4カ月の延長に向けた国内手続きに入る。

支援の期限は2月末に迫っていた。ギリシャの資金繰りが悪化し、財政破綻やユーロ離脱に陥る懸念は、いくぶん遠のいた。問題は、痛みを伴う改革をいかにして実現していくかである。

支援の延長で稼いだ時間を無駄にしてはなるまい。ギリシャとEU側の双方が受け入れ可能な打開策を確立しないかぎり、欧州ひいては世界経済のリスクは解消されない。

「反緊縮」一辺倒だったギリシャのチプラス政権が、緊縮策を伴う現行支援の延長を受け入れ、EU側に歩み寄りをみせたのは前進といえよう。これに対し、ギリシャ国内では、公約に反するとして、与野党や世論からの反発が高まっている。

内政上の事情でEU側との約束を後戻りさせてはならない。政権には国民への説明を尽くし、着実に改革を実行する責務がある。

ギリシャ政府の改革案は、政権発足後にみられた強気の路線に修正が加えられている。例えば、政権が計画の凍結を目指した国有企業の民営化については、すでに手続き中の案件は進める。

貧困家庭への支援策が、財政に悪影響を及ぼさないことも約束した。公約である最低賃金の引き上げは、EUなどとの協議で決めるという。

もっとも、今回は当面の危機回避が優先され、改革項目を並べただけという印象も拭えない。ギリシャとEUが改革の詳細を詰める4月末までに、実効性のある具体策を確実に示してもらいたい。

ギリシャは7、8月に国債の大量償還を控えており、支援の延長期間を終えた後も資金繰りの不安は残る。ギリシャは債務負担の緩和を求めており、新たな支援の枠組みも検討が急がれる。

その際、ギリシャはもちろんEU側にも柔軟さが求められる。カギを握るのは、財政規律や構造改革を重視する最大支援国のドイツである。

肝心なのは、ギリシャ財政の持続可能性を高めるのと同時に、経済成長を促すということだ。それを実現する上でユーロ圏の結束が必要なことは言うまでもない。

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