「戦後70年」を巡る中国の反日宣伝活動が、本格的に始まった。
国連安全保障理事会が戦後70年と国連創設70年に合わせた公開討論を開いた。2月の議長国である中国が提案した会合で、約80か国の代表が発言した。
議長を務める中国の王毅外相は第2次大戦について「いまだに真実を認めたがらず、侵略の犯罪をごまかそうとする者がいる」と語った。名指しは避けたが、日本を念頭に置いているのは明白だ。
日本が侵略の事実を認め、反省と謝罪を表明してきた経緯を無視しており、看過できない。日本をおとしめる意図もうかがえる。
韓国の国連大使も「歴史の教訓を無視しようとする試み」への注意が必要だと呼びかけた。基本的に中国に同調したとみられる。
これに対し、吉川元偉国連大使は「日本は戦後、大戦の深い反省に立ち、平和国家としての道を歩んできた」と強調した。その姿勢は「日本人の誇りであり、決して変わらない」とも言明した。
この70年間を踏まえた適切な主張だ。日本は、世界の平和と繁栄に寄与し、国際社会で信頼を着実に築いてきた。国連にも巨額の分担金を拠出し、その機能を強化する安保理改革を提唱している。
不当な批判には、的確かつ冷静に反論したい。菅官房長官が「主張すべき点はしっかり主張する」と述べ、対外発信を強める考えを示したのは当然だろう。
王氏は、中国が「反ファシスト戦争」の「戦勝国」として、国連を支持し、平和と安定を守ってきたと述べた。戦後秩序を維持する姿勢をアピールしたものだ。
だが、中国は戦後、インドや旧ソ連、ベトナムなど周辺国と武力衝突を繰り返してきた。現在も、力による現状変更を図り、地域を不安定化させている。
南シナ海の岩礁の基地化など、国際法上の根拠がない実効支配の拡大や、東シナ海での度重なる日本領海侵入が典型例である。
中国は、今回の討論を70年行事の「序幕」と位置づける。今後、国際的な反日宣伝を強めよう。
中国との協調姿勢が際立つのが、ウクライナで一方的な現状変更を試みているロシアだ。
5月の対ドイツ、9月の対日戦勝記念日に合わせ、習近平国家主席とプーチン大統領が、モスクワと北京を相互訪問する。
一連の動きが日本の国益を損なわないか。中露の連携を注視するとともに、双方に戦略的外交を展開することが重要である。
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