国連「70年」討論 歴史を曲げる中国の反日宣伝

朝日新聞 2015年02月26日

戦後70年談話 未来を語るのならば

戦後70年の「安倍談話」について意見を交わす有識者懇談会がきのう、初めての会合を開いた。懇談会として草案を書くわけではないというが、国内外から評価される談話づくりに向け、バランスのとれた議論を期待したい。

戦後70年だからといって、必ずしも首相談話を出さねばならないわけではない。それでも安倍氏は2012年に首相に再登板してから、「安倍政権として未来志向の談話を出したい」と繰り返してきた。

首相はかねて村山談話への違和感を漏らしてきた。06年に初めて首相に就任したころから「その精神を引き継いでいく」としながらも、「国策を誤り」「植民地支配や侵略」といった村山談話の根幹部分への評価は明確にしてこなかった。

村山談話を「全体として引き継ぐ」と言い始めた最近も、その違和感の根本は変わっていないようだ。

いったい何のために新しい談話を出すのか。有識者の議論が始まるにあたり、この原点に立ち返ってみたい。

首相は「先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、アジア太平洋地域や世界のためにどのような貢献を果たしていくのか」を書き込み、世界に発信したいという。

日本のさらなる貢献をうたうことに異論はない。だが、その基礎となるのは、戦前の日本の行為についての明確な認識と反省である。それをあいまいにしたまま未来を語っても、説得力は生まれない。

全体として引き継ぐと掲げながら、植民地支配や侵略といったキーワードを村山談話もろとも棚上げにしてしまうのが新談話の目的ならば、出すべきではない。そうした意図があればすぐに見透かされ、「過去に目を閉ざす者」と世界に受けとられるのが落ちであろう。

先の国連安保理の討論会で、中国の王毅外相が「真実を認めることをためらい、過去の侵略の犯罪をごまかそうと試みる者がいる」と演説した。

王毅氏は演説後、「だれかに照準を合わせることはない」と述べたが、植民地支配や侵略を否定するかのような日本政界の一部の発言を牽制(けんせい)する意図があったのは明らかだ。

首相はきのう、懇談会の委員に「未来への土台は、過去と断絶したものではあり得ない」と語った。その通りである。

談話を出すならば、国連での王毅発言が的外れであることを首相自身の言葉ではっきりとさせるべきである。

毎日新聞 2015年02月27日

70年談話の論点 教訓をあいまいにせず

安倍晋三首相が戦後70年の首相談話に盛り込もうと考えているテーマの輪郭が見えてきた。有識者会議(21世紀構想懇談会)の初会合で示された5項目の論点がそれである。

読売新聞 2015年02月26日

戦後70年懇談会 21世紀の世界を構想したい

戦後70年の日本の歩みを踏まえ、未来志向のメッセージの発信に向けた議論を期待したい。

安倍首相が今夏に発表する予定の戦後70年談話に関する「21世紀構想懇談会」の初会合が開かれた。

首相の私的諮問機関で、経済界、学界、メディアなどの16人の委員で構成されている。座長には西室泰三・日本郵政社長が就任した。月1回程度のペースで会合を重ね、今夏に議論を集約して首相に報告する予定だ。

ただ、報告は、政府が談話の内容を検討するための参考にするものであり、談話はあくまで首相の責任でまとめるという。

首相は会合のあいさつで、戦後日本について「先の大戦への反省の上にアジア太平洋地域の平和と繁栄を支えてきた」と語った。

「途上国への開発協力など、大きな責任を果たしてきた。この平和国家としての歩みは、今後も変わらない」とも強調した。

未来志向の談話の前提として、戦前・戦中への反省と戦後の歩みをきちんと踏まえるのは、国際社会の理解を得るうえで重要だ。

さらに、首相は、今後の日本の方向性について「国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、国際社会を平和にし、豊かにし、人々の幸福を実現する上で、より大きな役割を果たす」と述べた。

アジアと世界の平和と繁栄を維持・発展させるため、日本がどのような役割を担う覚悟があるのか。同盟国の米国をはじめ、国際社会とどう連携していくのか。明確な理念と具体策を70年談話で打ち出すことが大切である。

戦後50年の村山談話や60年の小泉談話当時と比べ、日本を取り巻く国際環境は大きく変化した。

中国は経済、軍事両面で台頭し、影響力を強めた。尖閣諸島や歴史認識をめぐって日本との対立が拡大している。日韓関係も、慰安婦問題などで冷え切っている。

戦後70年の今年、中国は反日宣伝を本格化させており、首相談話も歴史をめぐる宣伝戦に組み込まれようとしている。そうした国際情勢も踏まえ、冷静で戦略的な対応が安倍首相には求められる。

懇談会では、「日本は戦後70年、どのような和解の道を歩んできたか」「20世紀の教訓を踏まえ、21世紀のアジアと世界のビジョンをどう描くか」など、五つのテーマについて議論する予定だ。

初会合では、「日本と世界を切り分けずに捉えるべきだ」といった意見が出たという。多角的な議論を展開してほしい。

産経新聞 2015年02月27日

戦後70年談話 未来志向の発信が大切だ

戦後70年談話に向けた有識者会議が発足し、安倍晋三首相は「これからの日本がどのような国を目指すのか考えていきたい」と、未来志向の談話を出す考えを示した。

談話を構想するにあたり、有識者から意見を聞くのは順当な手法といえよう。談話はあくまでも首相の責任で作成されるが、示唆に富んだ論点が提示されることが期待される。

留意すべきは、政府が特定の歴史観を打ち出すような談話は望ましくないということだ。

戦後50年の村山富市首相談話は、過去の「侵略」や「植民地支配」を一方的に謝罪した。その弊害が極めて大きかったことを、忘れてはなるまい。

村山談話は日本が「過去の一時期」に国策を誤ったと断罪したものの、時期は特定しなかった。閣僚への十分な説明がなく、「終戦の日」に唐突に閣議へ提出されるなどその内容、手順ともに問題があった。

にもかかわらず、村山談話に反する言動をしたと見なされた閣僚や政府関係者は強い批判を受けてきた。こうした日本国内の情勢から、中国や韓国は「歴史問題」が日本に対する効果的な外交カードになるとみて利用してきた。

安倍首相は村山談話について「全体として受け継いでいく」といった見解を示している。

与野党には、村山談話にある「侵略」や「植民地支配」をキーワードと断じ、70年談話に書き込むことが重要だとの意見がある。だが、その表現にこだわりすぎれば、中韓の歴史戦、宣伝戦にからめとられかねない。

歴史にはさまざまな見方があることを無視する態度はおかしいし、特定の見方が入り込む懸念がある。西室泰三座長が初会合後、「キーワードを談話に入れろと指示するつもりは全くない」と語ったのは当然である。

むしろ、戦後に日本が果たしてきた役割、未来へ向かう道筋をうたうことこそ、建設的な談話に必要な要素といえよう。

若い世代を含め、自虐的な歴史観を迫られ、国民が萎縮するような内容の談話が、いつまでも受け継がれるべきではない。

首相は「中韓をはじめとするアジアの国々との和解」を論点の一つに挙げた。反日に傾く中韓に限らず、アジアの多くの国と築いた関係にも目を向けてほしい。

毎日新聞 2015年02月25日

戦後70年談話 国際理解を得るために

政府は戦後70年の首相談話を検討する「21世紀構想懇談会」の有識者メンバー16人を発表した。安倍晋三首相の私的諮問機関という位置づけで、きょう初会合が開かれる。

読売新聞 2015年02月25日

国連「70年」討論 歴史を曲げる中国の反日宣伝

「戦後70年」を巡る中国の反日宣伝活動が、本格的に始まった。

国連安全保障理事会が戦後70年と国連創設70年に合わせた公開討論を開いた。2月の議長国である中国が提案した会合で、約80か国の代表が発言した。

議長を務める中国の王毅外相は第2次大戦について「いまだに真実を認めたがらず、侵略の犯罪をごまかそうとする者がいる」と語った。名指しは避けたが、日本を念頭に置いているのは明白だ。

日本が侵略の事実を認め、反省と謝罪を表明してきた経緯を無視しており、看過できない。日本をおとしめる意図もうかがえる。

韓国の国連大使も「歴史の教訓を無視しようとする試み」への注意が必要だと呼びかけた。基本的に中国に同調したとみられる。

これに対し、吉川元偉国連大使は「日本は戦後、大戦の深い反省に立ち、平和国家としての道を歩んできた」と強調した。その姿勢は「日本人の誇りであり、決して変わらない」とも言明した。

この70年間を踏まえた適切な主張だ。日本は、世界の平和と繁栄に寄与し、国際社会で信頼を着実に築いてきた。国連にも巨額の分担金を拠出し、その機能を強化する安保理改革を提唱している。

不当な批判には、的確かつ冷静に反論したい。菅官房長官が「主張すべき点はしっかり主張する」と述べ、対外発信を強める考えを示したのは当然だろう。

王氏は、中国が「反ファシスト戦争」の「戦勝国」として、国連を支持し、平和と安定を守ってきたと述べた。戦後秩序を維持する姿勢をアピールしたものだ。

だが、中国は戦後、インドや旧ソ連、ベトナムなど周辺国と武力衝突を繰り返してきた。現在も、力による現状変更を図り、地域を不安定化させている。

南シナ海の岩礁の基地化など、国際法上の根拠がない実効支配の拡大や、東シナ海での度重なる日本領海侵入が典型例である。

中国は、今回の討論を70年行事の「序幕」と位置づける。今後、国際的な反日宣伝を強めよう。

中国との協調姿勢が際立つのが、ウクライナで一方的な現状変更を試みているロシアだ。

5月の対ドイツ、9月の対日戦勝記念日に合わせ、習近平国家主席とプーチン大統領が、モスクワと北京を相互訪問する。

一連の動きが日本の国益を損なわないか。中露の連携を注視するとともに、双方に戦略的外交を展開することが重要である。

産経新聞 2015年02月26日

国連70年 平和への貢献堂々と説け

中国の王毅外相は、「過去の侵略の罪を糊塗(こと)しようとするものがいる」と、国連創設70年を記念する安全保障理事会の公開討論で演説した。歴史認識をめぐり暗に日本を批判した内容だ。

吉川元偉(もとひで)国連大使は、日本が第二次大戦への「深い反省の念」に基づき「平和を愛する国家としての道を歩んでいる」と指摘し、「こうした姿勢は日本人が誇りとするところであり、今後も変わりない」と強調した。

当然の反論である。

日本が自由と民主主義、法の支配や人権を尊重し、世界の平和と繁栄に貢献してきたことは、いまや国際社会に広く認められ、高く評価されている。日本は過去70年間、一度も戦争をせず、力で領土の拡張を図ったこともない。

オーストラリアのアボット首相は昨年、安倍晋三首相の公式訪問の際、「日本は戦後ずっと本当に模範的な国際市民だった」と、日本の歩みをたたえた。

王氏の発言を受け、菅義偉官房長官は「日本が主張すべき点はしっかり主張することが大事だ」と述べた。

今年は国連が、日本をおとしめる宣伝戦の主舞台の一つとなるのは必至である。不当な批判、中傷には1つずつ丁寧に反論し、国際社会に発信してゆくことが、いっそう重要となろう。

公開討論は、安保理議長国の中国が「国連創設と反ファシズム戦争勝利70年」を理由に提案した。歴史認識問題で日本への牽制(けんせい)を強める「序幕」と位置づけているようだ。

だが、批判されるべきはどちらなのか。

中国は一党独裁体制の下で、ベトナムに侵攻するなど周辺国と武力衝突を繰り返してきた。

いまも東シナ海で日本領海を侵犯し、南シナ海では岩礁を一方的に基地化して実効支配を拡大させるなど、力による現状変更で地域の安定を脅かしている。

9月には習近平国家主席が国連本部で歴史問題をめぐる演説を行うという。中国は、ウクライナ南部クリミア半島を力で併合したロシアとも連携を強め、日本に対する宣伝戦を強める構えだ。

日本は、10月には安保理の非常任理事国への選出が確実となっている。最多の11回目だ。70年間の平和への実績を堂々とアピールすべきである。

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