与那国の住民投票 南西防衛の強化を進めよ

読売新聞 2015年02月24日

与那国住民投票 国防を地方政争の具にするな

島を二分する政争を展開してまで、住民投票を行う意味が果たしてあったのか、甚だ疑問だ。

日本最西端の与那国島の沖縄県与那国町で、陸上自衛隊の沿岸監視部隊配備の是非を問う住民投票が行われ、賛成が過半数を占めた。

陸自部隊配備は、防衛省が2009年に与那国町の要望を受け、11年に決定した。隊員は約150人で、地上レーダーで艦船や航空機を監視する計画だ。来年3月の配備に向け、昨春から駐屯地の造成工事を進めている。

外間守吉町長は、一貫して陸自配備を推進しており、09年と13年の町長選で反対派候補を破った。13年は47票の僅差だった。

反対派は昨年11月、町議会で住民投票条例を可決し、激しい反対運動を展開してきた。今後、施設建設の差し止め訴訟を起こすことも検討しているという。

そもそも住民投票の結果は、法的拘束力を持たない。仮に反対が多数を占めても、配備を中止することは難しかった。

住民投票は本来、市町村合併への対応など、地域で完結する身近なテーマで実施することが望ましい。国全体の安全に影響を与えるような自衛隊配備や米軍基地の問題で行うことは避けるべきだ。

看過できないのは、今回、中学生以上の未成年や永住外国人にも投票を認める異例の措置をとったことだ。賛否を逆転したい反対派の思惑によるものだろう。

国防を政争の具にして、選挙権のない中高生らを巻き込み、国の安全保障に関する判断を迫った町議会の責任は重い。

外間町長ら推進派は、陸自誘致による経済効果で、人口約1500人の町の過疎化に歯止めをかける必要性を訴えた。

これに対し、反対派は「有事に陸自駐屯地が攻撃目標にされる」などと主張したが、説得力を持たず、支持は広がらなかった。

沖縄本島から与那国島までの約500キロの地域には、航空自衛隊のレーダー基地が宮古島などにあるが、陸自部隊は不在だ。

中国は、急速な軍備増強を背景に、尖閣諸島周辺などで海洋進出の動きを強めている。南西諸島の防衛態勢を強化し、武装集団による離島占拠などの事態に備えることが急務である。

菅官房長官は「計画通り部隊配置を淡々と進めていきたい」と語った。政府は、「国境の島」に部隊を置く意義を丁寧に説明し、町の協力を得ながら、配備を円滑に実現することが重要だ。

産経新聞 2015年02月24日

与那国の住民投票 南西防衛の強化を進めよ

日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)で行われた陸上自衛隊「沿岸監視隊」配備をめぐる住民投票は、賛成票が6割を占めた。

この住民投票には法的拘束力はないとはいえ、仮に反対票が多数となっていれば、その政治的効果から町が部隊配備に協力しない姿勢に転じる恐れもあった。

南西防衛の重要性を認める住民の判断が多数となったことは、常識的な結果といえるだろう。

中谷元防衛相は「賛成してもらい心強く思う」と語った。予定している平成27年度末までの部隊発足へ準備を急いでもらいたい。

沿岸監視隊は150人規模で、付近を通過する中国海空軍の動きを見張る重要な役割を果たす。陸上部隊を離島へ配備すること自体が抑止力となる意味も大きい。

南西防衛の強化には、部隊の配備に加え、入念な訓練の積み重ねが欠かせない。それが抑止力を確かなものにする。海空自衛隊の増勢を図るのと同時に、部隊配備によって陸自のプレゼンスを確保することが必要だ。

沖縄本島以西の守りを固めるため、陸自は宮古島や石垣島への警備部隊の配置も検討している。効果的な抑止力を持たせるため、この地域への対艦ミサイルの配備も考えるべきだろう。

安倍晋三首相は国会で、中国公船による尖閣諸島周辺の領海への侵入が常態化していることに関し「わが国の領土、領海、領空を断固として守り抜く」との決意を重ねて表明した。島嶼(とうしょ)部の守りを重視するのは当然の姿勢だ。

そもそも国の安全保障政策を左右しかねない住民投票は極めて問題だ。

自衛隊の配備は防衛の核心であり、国の専権事項だ。自治体や地域住民の投票で覆そうというのは地方自治の本旨から外れ、憲法に触れるとの指摘もある。

しかも与那国の住民投票は、部隊配備反対派が推進し、永住外国人や中学生にまで投票権を与えた。到底容認できない。このような異常な形式の住民投票が各地で続いたとしたら、日本の安全保障がいつか損なわれるのではないかと心配だ。

住民投票を推進したにもかかわらず、反対派には駐屯地工事の差し止め訴訟の動きがあるという。いかにも矛盾しており、あきれるばかりである。

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