小沢氏不起訴 政治責任は免れない

朝日新聞 2010年02月05日

小沢氏不起訴 このまま続投は通らない

土地取引をめぐる政治資金収支報告書の虚偽記載事件で、東京地検特捜部は小沢一郎民主党幹事長を不起訴処分とした。虚偽記載にかかわった嫌疑が「不十分」との判断だ。

小沢氏の元秘書の石川知裕衆院議員ら3人は、政治資金規正法違反の罪で起訴された。

特捜部が昨年3月、西松建設の違法献金事件の強制捜査に着手して以来、総選挙をはさんで、約1年間に及んだ小沢氏の政治資金をめぐる捜査に大きな区切りがついたことになる。

小沢氏は幹事長続投を表明し、鳩山由紀夫首相も認める考えだ。

■国会で疑問に答えよ

しかし、一件落着というわけにはいかない。

捜査の焦点は、小沢氏が虚偽記載にかかわっていたかどうか、土地購入の原資にゼネコンからのヤミ献金が含まれていなかったかどうかだった。

石川議員は自らの虚偽記載は認めながらも、小沢氏の関与やヤミ献金の受け取りを否定した。小沢氏も2度にわたる特捜部の事情聴取に対し、虚偽記載は承知しておらず、不正な裏金は一切もらっていないと主張した。

捜査を尽くした結果、公判で有罪にできる確証が得られなければ、検察が不起訴と判断するのは当然だが、多くの疑問が残されたままである。

原資に不正な金が含まれていないというなら、なぜ資金の流れを隠す必要があったのか。土地購入と同時期に岩手県内のダム工事を下請け受注した中堅ゼネコン幹部が石川議員に5千万円を渡したと供述している疑惑も、完全には晴れていない。

今後、この捜査が国民の代表からなる検察審査会で検証されれば、今回の処分が見直される可能性もある。問題がなお、尾をひくことは間違いない。

今回、刑事責任こそ問われなかったとはいえ、小沢氏が負うべき責任は極めて重い。

まず果たすべきなのは、国民への事実の説明である。

土地購入の原資についての小沢氏の説明は二転三転した。巨額の資金を長期間、タンス預金していたことにも不自然さが残る。小沢氏周辺では、他にも収支報告書に記載のない巨額の資金移動の疑いが持たれている。

不起訴が決まった以上、「捜査中」を理由に野党が求める参考人招致を拒むのはつじつまが合わない。国会の場で堂々と疑問に答えてもらいたい。

より重大なのは、政治的、道義的な責任である。

現職衆院議員を含む元秘書ら3人が逮捕、起訴された事件が、日本社会に与えた衝撃は大きく、深い。

■政権交代への幻滅も

昨年、歴史的な政権交代を実現させた民意は、政治そのものが新しく生まれ変わることへの期待に満ちていたはずである。それなのに、政界はまたしても自民党政権時代と変わらない「政治とカネ」の問題一色。野党は今後も、小沢氏の資金問題と、谷垣禎一自民党総裁のいう「小沢独裁」政権的な体質を厳しく追及する構えだ。

新年度予算案の審議や米軍普天間飛行場の移設先の決定など、鳩山政権はこれから胸突き八丁を迎える。今の「政策以前」の状況から一刻も早く脱し、再出発しなければならない。

小沢氏は長く、「政治改革」実現をめざす動きの先頭に立ってきた。政権交代可能な2大政党を育て、緊張感のある政策論争を通じて日本の政治をよりよくする。そのことと今のありさまとの落差をどう考えているのか。

このままでは、政権交代そのものへの幻滅さえ招きかねない。政治改革の進展も、それを通じた民主主義の前進も台無しになりかねない。

小沢氏がこれらの責任を果たすことができないのであれば、潔く幹事長を辞任するべきである。

政治の局面を転換し、建設的な政策論争の場を国会に取り戻すためには、それしかない。不起訴だからというだけでは、とても続投の理由にはならない。

起訴された石川議員も、自ら議員辞職を決断すべきだろう。

民主党自身の自浄能力も問われる。この間、小沢氏に国会での説明を求めたり、政治責任を問うたりする声はほとんど聞かれなかった。

選挙対策や国会対策、党運営における小沢氏の手腕は大きいが、いつまでも小沢氏頼みであっていいわけがない。事件を小沢氏依存から卒業する契機にするくらいのしたたかさが議員たちに欲しい。

■検察も時代に対応を

検察にも注文がある。

国会開会直前の石川議員の逮捕は異例の捜査手法だった。西松建設事件でも、総選挙を控えた時期の捜査着手に「国策捜査」との批判があった。

疑いがあれば捜査を尽くすのは当然だし、公判維持を考えれば、詳細を明らかにできない事情も理解できる。

ただ、政権交代時代を迎え、世論が政界捜査に公平性や透明性を求めるようになっていることも軽んじてはいけない。法務・検察当局にも、節目節目で可能な範囲で国民に説明を試みる努力が必要なのではないか。

政権交代で幕を開けた新時代の土台には、まだ古さも残る。日本の政治をさらに前に進めるために、今回の事件から学ぶべき教訓は数多い。

毎日新聞 2010年02月12日

石川議員離党 選良として説明責任を

元秘書ではなく選良としての身の処し方を期待したい。

小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体の土地購入を巡る事件で、政治資金規正法違反で起訴された石川知裕衆院議員が民主党を離党した。

当然の対応である。政治家にとってもっとも厳しくあらねばならない政治資金の処理で、元秘書という立場ではあるものの、億単位の虚偽記載をしたことを本人自身が認めており、けじめとしては必要最低限のラインであろう。過去の政治とカネをめぐる不祥事でも「起訴なら離党」が取りあえずの慣習的措置となってきた。だが、それだけでいいのか。

まずは、自民、公明、みんなの野党3党が提出済みの同議員に対する議員辞職勧告決議案の扱いをどうするか。自民党が速やかな本会議採決を求めたのに対し、民主党の山岡賢次国対委員長は決議案の採決に応じない考えを示している。しかし、衆院では過去3回可決された例がある。もちろん、法的拘束力はなく、いずれも議員辞職には至らなかったが、採決で国会の意思を明確にするところまでは踏み込むべきだろう。

国会は、事実関係についてもさらに調査、審議すべきだ。石川議員は9日、保釈後の初会見で「政治資金の出所を不明にするなどの目的で意図的に虚偽の収支報告をしたことはない。水谷建設などから不正な金銭を受領したことも一切ない」と主張した。虚偽記載の故意性に対する否認発言は、小沢氏の「単なる計算違い」との説明と整合性をとったとも受け取れるが、「(小沢)先生が大きな金を持っていることが分かるのはよくない」と語ってきた、とされる従来の動機とは矛盾するようにも見える。石川議員はその後、会見発言を訂正したようだが、どうもすっきりしない。ゼネコンマネーについても事件の核心部分だけにもう一つ丁寧な説明が欲しい。

国会は、政治倫理審査会から参考人招致、証人喚問などこの種の問題を扱う場をいくつももっており、権威のあるオープンな場での疑惑解明という機能をそれなりに果たしてきた。決議案を処理した後は、速やかにこの責務に移るべきである。小沢氏が先の会見で国会での説明責任に消極的な姿勢を示しているだけにここは野党も譲るべきではない。

石川議員には次のことを言いたい。確かに、今回の事件は小沢ファミリーの元秘書としての仕事に対する検察の訴追であった。小沢氏が強調するように「国会議員として問われた」わけではなかった。だが、これから先の出処進退はまさに国民の負託を受けた選良としての仕事になる。立場が変わったことを自覚したうえで行動してもらいたい。

読売新聞 2010年02月12日

石川議員離党 小沢幹事長の監督責任は重い

小沢民主党幹事長の資金管理団体による土地購入事件で、政治資金規正法違反に問われた石川知裕衆院議員が、民主党に離党届を提出した。

保釈後の記者会見で離党しないとしていた石川議員が一転、離党届を出したのは、世論の厳しい批判や、党内からの離党を促す声に抗し切れなかったためだろう。

石川議員の政治責任は重大である。仮に秘書当時の事件だから不問に付されてよいと思っているなら、大きな勘違いだ。「政治とカネ」を巡る重大な不正を隠したまま国会議員になったこと自体、有権者を欺いていたことになる。

出処進退は議員自らが判断すべきことだが、議員辞職を要求する野党の厳しい攻勢に引き続きさらされよう。

事件は依然、多くの疑問点を残している。小沢氏は関与を全面否定しているが、石川議員は、土地購入の原資の4億円を政治資金収支報告書に記載しない方針を小沢氏に報告し、了承を得ていたと検察に供述しているという。

政治倫理綱領にある通り、政治家は「みずから真摯(しんし)な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにする」ことが求められる。石川議員は国会の場で今回の事件の事実関係を明らかにすべきだ。

小沢氏は、石川議員について、「国会議員の職務に関連して責任を問われているわけではない」と説明している。

それならば、秘書時代の職務に関連して石川議員が規正法違反に問われた監督責任をどう受け止めるのか。小沢氏にも事件全体について詳細に説明する義務と、事件に対する重い政治責任がある。

民主党の場合、過去に刑事責任に問われたり、不祥事を起こしたりした議員への処分をみると、本人からの離党届は受理せず、除籍処分とするケースが多い。

石川議員について離党で済ませれば、なぜ対応に差が出るのか党内外から説明を求められよう。

野党が提出している石川議員の議員辞職勧告決議案も、採決を拒んでいるが、同種の決議案を積極的に国会に提出してきたのは、ほかならぬ民主党である。

小沢氏にさらなる説明責任を求めたり、進退問題に言及したりする党内の声は依然として小さく、多くの議員は沈黙を守っている。「小沢支配」への恐怖心からだとすれば「民主」の看板が泣く。

「政治とカネ」のけじめに加え、党の体質が問われていることを、民主党は深刻に受け止めなければなるまい。

産経新聞 2010年02月12日

石川議員 離党はけじめにならない

政治資金規正法違反罪で起訴された石川知裕衆院議員の民主党離党は、真相解明や自浄努力に結びつくものではない。

根本的な問題は、資金管理団体「陸山会」の土地購入に関する事件をめぐり、小沢一郎幹事長が自身の不起訴を受けて幹事長職を続投していることにある。小沢氏が改めて潔白を主張し、説明も十分果たしたなどと開き直っている状況をどうするかが問われている。

石川被告の離党を「一定のけじめ」などと評価するのは見当違いである。「トカゲのしっぽ切り」にしてはならない。民主党と国会には、小沢氏自身のけじめを明確にし、真相を解明することこそが求められている。

離党は、党にとどまれば野党の追及の的となり、国会運営にも支障を来すという判断からだろう。一方、民主党執行部は石川被告の逮捕・起訴に何の措置もとらず、社民党などから異論が出始めていた。だから石川被告が自ら離党を言い出したのは、「渡りに船」だったのではないか。それを了承するだけでは、政権与党としてあまりにも無責任である。

今回の離党が小沢氏に波及するかどうかで、党内には小沢氏に近い議員と距離を置く議員の間で水面下の対立があるという。しかし個利個略でなく、政権与党として何が求められているかを深く認識すべきだ。

石川被告は起訴内容に関して「意図的な虚偽記載はない」と9日の会見で主張し、その後撤回するなど発言に揺れもみられる。離党をけじめと考えるなら、国会の参考人招致などに進んで応じ、自浄努力を示す必要がある。

行政刷新担当相に起用された枝野幸男氏は、就任前に「国民の理解と納得が得られなければ、けじめをつけてもらわなければいけない」と、小沢氏に出処進退の決断を促していた。10日の就任会見でも「立場が変わっても政治的スタンスは変わらない」と強調したが、「党内の問題について見解は答えない」とも語った。

石川被告ら現元秘書3人が逮捕、起訴されただけでなく、起訴事実も21億円余の巨額の虚偽記入という過去に例がない内容だ。

小沢氏の政治的・道義的責任は明白かつ重大なのに、これにほおかぶりしている点が民主党だけでなく政治への信頼を失っていることを、枝野氏はじめ政権関係者は重く受け止めてほしい。

毎日新聞 2010年02月10日

小沢氏続投会見 まだ幕引きとはいかぬ

これで幕引き、というつもりだろうか。資金管理団体の土地取引をめぐる事件で不起訴となった民主党の小沢一郎幹事長が8日、記者会見した。小沢氏は幹事長続投を改めて表明、東京地検の事情聴取を2度受けたことを理由に「これ以上の説明はない」と述べ、すでに説明責任は果たしたとの認識を示した。

今回の不起訴処分を受け、自身の責任論も含めた「区切り」を意識した会見だったが、毎日新聞など各種世論調査で幹事長辞任を求める声がなお7割前後に達するなど、国民の疑念がふっしょくされたとみるには遠い状況だ。特に、説明責任を果たしたとする認識には首をかしげざるを得ない。小沢氏は国会での説明に、速やかに応じるべきである。

冒頭に陳謝こそすれ、ほとんどが強気な言動に終始した会見だった。不起訴処分に伴い「不正がなかったことが明らかになった」と強調、鳩山由紀夫首相から続投の了承を得たことを説明し、責任論とも一線を画した。5月連休の訪米にも意欲を示すなど、反転攻勢の意欲を鮮明にした場面と言えよう。

だが、小沢氏の主張にはさまざまな疑問がある。特に検察当局の事情聴取で説明責任が果たされた、との主張には賛成できない。土地取得の原資をめぐる小沢氏の説明は途中で変化しており、「実務は秘書に一切任せていた」とする説明も、説得力が問われている。

不起訴処分を受けた毎日新聞の世論調査で、小沢氏は幹事長を辞任すべきだ、との声がなお69%に達した。小沢氏は各種調査結果について「『小沢一郎は不正なカネを受け取っている』という報道が続いた。その直後の世論調査だ」とメディア批判を展開したが、国民の疑念が晴れていないことを自覚すべきだ。私設秘書だった石川知裕衆院議員も含め3人が政治資金規正法違反で起訴された監督責任も重い。自らの潔白に自信があるのならなおさら、野党が求める国会での説明に応じるべきだ。

首相も歯切れが悪い。小沢氏は続投を了承された際、首相から「ぜひ一生懸命頑張ってほしい」と言われたと会見で明かしたが、首相はこの「激励」を否定した。小沢氏と一蓮托生(いちれんたくしょう)とならないよう予防線を張りたいのであれば、自浄能力発揮に向け他になすべきことがあるはずだ。

小沢氏続投に伴い民主党内は、夏の参院選に向け世論の行方を見極めようと静観する動きが大勢となっている。自民党などが提出した石川議員に対する辞職勧告決議案が宙に浮く中で、石川議員は9日、議員辞職を否定した。問題が置き去りにされたまま、政治の停滞が続くことがあってはならない。

読売新聞 2010年02月07日

小沢幹事長 不起訴でも厳しい国民の視線

自らの資金管理団体の土地購入事件で、不起訴になった民主党の小沢幹事長に対する、国民の視線は極めて厳しい。

読売新聞の全国世論調査で、小沢氏が「事件の責任をとって幹事長を辞任すべきだ」と答えた人は74%に達した。そう回答した人のうち66%が、「衆院議員を辞職すべきだ」としている。

石川知裕衆院議員が逮捕された直後の前回調査では、同様の質問に対して、それぞれ70%だった。今回の「小沢氏不起訴」でも、進退問題で決断を求める声は相変わらず強い。

小沢氏は土地購入事件で、購入の原資4億円は「個人の資金だ」と説明し、政治資金収支報告書に原資を記載しなかったことについての関与も否定した。

しかし世論調査では、こうした小沢氏の説明に「納得できない」とする答えは86%に上った。国民の疑念は、それだけ深いというべきだろう。

鳩山首相は、5日の衆院予算委員会で「報道されている、あたかもグレーのような話は、検察捜査によって事実とは認定されなかったと考えている」と述べた。

的はずれの答弁である。小沢氏の不起訴は「嫌疑不十分」によるもので、嫌疑が全くないわけではない。疑惑は残されたままだ。まして小沢氏には、刑事責任とは別に、重い政治的責任がある。

小沢氏は、国民が納得できるよう、この先、説明を尽くさなければ、国民からの「辞任要求」はさらに強まろう。小沢氏は、この際進んで国会招致に応じ、真相をつまびらかにすべきである。

首相も、小沢氏をかばってばかりはいられまい。内閣支持率は、内閣発足以来初めて、「不支持」が「支持」を上回った。

また、国民の大多数は、首相が自らの偽装献金事件などについて説明責任を果たさず、民主党が今回の事件で、自浄能力を発揮しなかったとみている。

鳩山政権の「政治とカネ」をめぐる不祥事は、政権交代後の民主党政治への失望感を増幅させている。民主党支持率の低下や無党派層の増加は、その表れだろう。

このままでは国民の政治不信は一層深まり、鳩山政権の政策推進にも黄信号がともりかねない。

深刻なのは、鳩山内閣の下では景気回復は実現できず、また、今後の日米関係について不安を感じるという人が、それぞれ7割近くいることだ。

首相は、民意を正面から受け止めなければならない。

産経新聞 2010年02月10日

小沢氏「潔白」宣言 開き直りとしか思えない

自らの保身のために開き直っているとしか思えない。

民主党の小沢一郎幹事長が、政治資金規正法違反事件での不起訴を受けて「不正なカネは受け取っていないことが明白になった」と潔白の証明を主張しはじめたことを指す。2度の事情聴取に応じたので、さらなる説明は必要ないとの見解も示した。

収支報告書に虚偽の記載をした罪で起訴された民主党の石川知裕衆院議員に対する議員辞職勧告決議案も、民主党はたなざらしにしている。議員辞職の必要はないという小沢氏の判断からだろう。

資金管理団体「陸山会」を取り巻く不透明な資金の流れは未解明のままだ。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、小沢氏の幹事長辞任を求める回答が70%、議員辞職は48%にのぼる。自浄能力を求められる政党の責任者の立場にありながら、そうした状況にほおかむりし、権力を手放すまいと突っ走る姿勢は見苦しい。

他の民主党議員や社民党などがほとんど異議を唱えないのは、正常な判断を失っているのではないか。与党の自覚があるなら、小沢氏や民主党執行部に働きかけ、自浄能力を果たすべきだ。

自民、公明、みんなの野党3党は、石川被告らが起訴された4日に辞職勧告決議案を衆院に提出したが、民主党は「秘書の時の事件であり国会議員としての問題ではない」と採決に応じていない。

現職議員として逮捕されたからこそ、重大な政治責任を問われている。民主党が採決に応じて決議案を否決すれば、国民の強い批判を浴びる。その事態を避けようとしているからとしかみえない。

石川被告も9日、会見で議員辞職を否定した。辞職して小沢氏の政治的責任に改めて焦点があたることを避けようとする狙いもうかがえよう。

小沢氏は「国会議員の職務に関連して責任を問われているわけではない」と石川被告の議員辞職の必要性を否定したが、石川被告は小沢氏が代表の陸山会の土地購入について罪を問われた。自分は潔白で、石川被告の責任もないという都合のいい説明は通じまい。

衆院議員の資産公開を通じて、陸山会所有だったマンションが小沢氏の個人資産になっていた新たな事実も判明した。「個利個略」がまかり通ることを国民は決して許さない。

毎日新聞 2010年02月05日

小沢氏不起訴 政治責任は免れない

これで落着というわけにはいかない。小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体の土地購入を巡る事件で、東京地検特捜部は4日、当時の事務担当者、石川知裕衆院議員ら3人を政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で起訴する一方、小沢氏は容疑不十分として不起訴とした。小沢氏は幹事長を続ける意向を表明した。

小沢氏が不起訴となったのは虚偽記載への関与を立証する明確な証拠がないとの理由からだ。だが、石川議員は不可解な巨額資金の流れを政治資金収支報告書に故意に記載しなかった点を認め、「小沢氏の手持ち資金と分かるような記載はしたくなかった」と供述しているという。つまり、これはあくまで小沢氏本人にかかわる問題であり、その監督責任、政治的責任は極めて重い。

小沢氏の説明が二転三転しているのも見逃せない。例えば土地購入の原資に関し、昨秋は「銀行からの借り入れ」と説明していたが、「小沢氏の個人資産」と変わった。小沢氏は「報道されたので、はっきり自己資金だと言うべきだと判断した」と語るが、報道されなければ正確に説明することはなかったのか。

「実務は秘書に一切任せていた」とも強調しているが、仮に小沢氏が言う通り収支報告書を見たこともないとすれば、これまた政治家として無責任だ。07年の記者会見で小沢氏は問題の土地所有権が小沢氏ではなく資金団体にあるとする「確認書」を公表したが、今回の捜査で書類は当時の会見直前に作成し、確認書の日付を偽装した疑いも出ている。

小沢氏が今も説明責任を果たしていないのは明らかであり、野党が求めている国会での参考人招致などにも進んで応じるべきだろう。

一方、一連の捜査に疑問を持つ国民も少なくない。特捜部はこの日の処分に際し、事件の核心部分であり、石川議員らが否定しているゼネコンからの裏献金が原資の中に含まれていたと判断したのかどうかは明かさなかった。今後の公判で明らかにするとしても、捜査の根幹にかかわるだけに、きちんと説明すべきだったと考える。

小沢氏の進退問題は、参院選前に国民世論が厳しさを増した場合には民主党内で浮上する可能性もありそうだ。しかし、進退問題以上に深刻なのは、繰り返されてきた「政治とカネ」の問題と決別しようという声が民主党内からほとんど聞こえないことだ。

有権者の多くは「政治とカネ」も含めて自民党政治からのチェンジを政権交代に期待したはずだ。捜査への批判の前に、既に国民を失望させつつあるという政治的責任を、鳩山由紀夫首相をはじめ党全体で冷静に考える時ではないのか。

読売新聞 2010年02月05日

小沢氏不起訴 重大な政治責任は免れない

民主党・小沢幹事長の資金管理団体による土地購入事件で、東京地検は元秘書の石川知裕衆院議員ら3人を政治資金規正法違反で起訴した。

小沢氏は「嫌疑不十分」で不起訴となった。しかし、自らの政治資金をめぐる事件で、元秘書ら3人が刑事責任を問われたことを厳しく受け止めねばならない。政治責任は重大である。

◆事実関係を正確に語れ◆

小沢氏は不起訴処分について、「公平公正な捜査の結果だ」と語った。そう言う以上、不起訴理由が「嫌疑不十分」で、いわば“灰色”とされたことも、謙虚に認めるべきだろう。

小沢氏は従来、「捜査中」を理由に事実関係を十分説明してこなかった。捜査が終結した今、国民に対して、より詳細な説明を行う責任がある。

一方、野党から議員辞職勧告決議案を提出された石川議員は自ら進退を判断することが大事だ。

今回の事件の焦点は二つある。一つは、土地購入の原資の4億円を政治資金収支報告書に収入として記載しなかったことに小沢氏は関与していたのかどうか。

もう一つは、その中に、ゼネコンからの裏献金が含まれていなかったのか、である。

起訴された石川議員は、調べに対し、小沢氏の事件への一定の関与を認める供述をしていた。

小沢氏からの4億円を隠すため金融機関から同額の融資を受けることや、4億円を収支報告書に記載しない方針のいずれも報告し、了承を得ていたという。だが、小沢氏は関与を全面否定した。

地検は、岩手県の胆沢ダムの下請け工事を受注した中堅ゼネコンの元幹部から、土地購入直前に5000万円を石川議員に渡した、という供述も得ていた。これに対しては、小沢氏だけでなく、石川議員も一貫して否認した。

小沢氏は、原資について「個人の資金」と説明した。

地検は、こうした反論を突き崩せず、虚偽記入への関与を明確に示す証拠も得られなかった。

だが、今回の事件は、小沢氏がいまだに強調するような「形式的ミス」ではない。

原資に関する説明は、「政治献金」から「金融機関の融資」「個人資金」へと変転した。「政治献金」という説明は、小沢氏自らが資料まで示して行ったものだ。

◆なお残る多くの疑問◆

資金管理団体の収支報告書の実態と異なる記載は、石川議員らの起訴事実となった計20億円余りの虚偽記入を含め、総額約30億円にも上る。関連政治団体との間で、複雑な資金移動を繰り返したのは、何のためなのか。

小沢氏は、野党の求める国会招致に応じ、こうした疑問について丁寧に答えるべきだ。

小沢氏は、不起訴処分を受けて「幹事長の職責を返上しなければならないとは考えていない」と、続投する考えを表明した。鳩山首相も、これを容認している。

だが、首相は以前、「秘書の犯罪は議員の責任」「私なら議員バッジを外す」と明言し、自民党議員らを追及していた。今回、小沢氏の責任を問えないのは、偽装献金事件での自らの責任にはね返るからと見られても仕方がない。

国会議員と秘書は本来、日常の政治活動から資金集めまで、一心同体の関係にある。一連の事件で起訴されたのは、すべて議員秘書だが、「トカゲの尻尾(しっぽ)切り」を続けることは許されない。

秘書だけが責任をとらされるような現在の仕組みに関して、法改正を検討する時だ。

◆検察も十分な説明を◆

疑惑を解明しきれなかった検察にも問題がある。

地検は、小沢氏不起訴の理由について、石川議員らとの共謀に問う証拠が足りなかったとし、捜査批判には「特定の政治家を狙ったわけではない」と言うが、この説明では不十分だ。

社会的に注目を集めた事件の捜査結果は、公判を控えているとはいえ、しっかり説明しなければ、批判が高まりかねない。

政府・民主党内では、石川議員の不起訴を「望みたい」という首相発言をはじめ、検察捜査への介入と受け取られるような不穏当な言動が繰り返されてきた。

小沢氏の不起訴を機に「民主党対検察」という不毛な対立が再燃することがあってはなるまい。

一方、一連の事件報道に対し、民主党や支持者などから、検察の意図的な情報漏洩(ろうえい)に基づくものではないか、という批判もあった。これは誤解である。

読売新聞は真実に迫るため、検察官や弁護士、ゼネコン関係者などに幅広く、丹念な取材を積み重ね、その結果を報じてきた。今後も同様の姿勢で取り組み、国民の知る権利に応える報道機関としての責務を果たしていきたい。

産経新聞 2010年02月05日

小沢幹事長不起訴 政治責任を改めて問う 国会は証人喚問で疑惑解明を

政治のありようを示す言葉に「信なくば立たず」(論語)がある。信頼がなければ政治はやっていけない−という意味だ。

鳩山政権の最高実力者である小沢一郎民主党幹事長は、現元秘書3人が政治資金規正法違反の罪で起訴された事実に伴う、自らの政治的・道義的責任がいかに大きいかを見据え、出処進退を決めなくてはならない。

自らが不起訴処分になったとはいえ、国民の「信」を失いつつあることを認識すれば、幹事長続投はありえないだろう。だが、小沢氏は続投を表明した。

小沢氏は1月25日の記者会見で「もし誤ったことをしたとすれば私の(資金管理団体の)代表者としての責任ももちろんある」と述べている。収支報告書の虚偽記載の監督責任が存在することを認めたものだが、石川知裕容疑者らの起訴で責任は明確になった。

最低限のけじめもつけようとしないのは情けない。秘書に責任を押し付けて逃げ切ろうとしているようにもみえる。

小沢氏は国会で自ら進んで疑惑について説明しなければならない。政治倫理審査会での弁明にとどまらず、証人喚問なども必要だろう。今こそ立法府としての自浄能力を、最大限に発揮すべきである。石川被告への辞職勧告決議案は早急に可決すべきだ。

≪期待を裏切った検察≫

検察当局が小沢氏の違法行為を立証できず、「秘書の犯罪」を問うにとどまったのはきわめて残念である。検察が能力を十分に発揮できない以上、国会がその責務を果たさなければ、国民の間の政治不信は極限にまで高まっていくだろう。

小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入資金の虚偽記載に関し、検察はその威信や存在意義をかけて解明に臨んだはずだが、期待とは大きく異なる結果と言わざるを得ない。

問題は、小沢氏の不起訴が国民や社会に与える負のイメージの大きさである。

鳩山由紀夫首相の偽装献金事件も、元秘書2人の起訴にとどまり、首相は「何も知らなかった」との主張が受け入れられて不起訴となった。首相は母親から提供された約12億6千万円の資金について、5億円余りの贈与税を支払うことで一件落着になった。

今回も、権力中枢の人物の違法行為は見逃された格好になった。政治資金の不透明な流れが横行する現状に、歯止めをかけることはできなかった。

国政のトップに立つものが社会規範を破って省みないようでは、信は成り立たない。納税意識などにも悪影響を与えかねない。国民に広く道徳心を求めることなどもできまい。

小沢氏はかつて著書「日本改造計画」の中で「政治腐敗防止制度を確立すべきだ」として、違反者の公民権停止や連座制強化の必要性を指摘するとともに、「自分自身を厳しく律する自律・自浄の措置」を訴えた。記述したことと、行ってきたことがまったく違っている。民主党はこうした“豹変(ひょうへん)”に異論も唱えないのか。

≪高まる一方の政治不信≫

小沢氏が問われているのは監督責任だけでなく、自ら代表を務める陸山会をめぐる約24億円の資金移動への関与だ。自民党の谷垣禎一総裁は「限りなくクロに近い」と指摘している。

陸山会は平成6年以降、東京都内のマンションを中心に18件計10億円以上の不動産を購入していたという。その目的が何か、購入資金の全容がどうなっていたのかなど、石川被告らの起訴後も未解明の点は数多く残っている。

首相は4日、小沢氏が特捜部の事情聴取に応じ、記者会見を行ってきたとして「説明責任は果たした」と評価したが、見当違いもはなはだしい。

検察当局としても、今回の虚偽記載の事件で終わりにしてはならない。ゼネコンからの献金の実態をさらに解明し、旧政党を解党した際の資金が小沢氏関連の政治団体に移されていた問題など、不透明な資金の流れを引き続き追う必要がある。

小沢氏の説明には家族名義の口座の資金を自分のカネと主張するなどずさんな内容もある。不動産購入をめぐる税法上の問題なども指摘されている。

検察当局はあらゆる法令を駆使し、違法行為の解明を続けることで信頼回復につなげてもらいたい。本紙も、この問題を厳しく追及していく。

産経新聞 2010年02月04日

小沢幹事長 国民が納得できる処分を

東京地検特捜部は、自らの存在意義が問われかねない、かつてない重大局面にいることを考えに考え抜いて、国民が納得できる決断を下してもらいたい。

それは小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件で小沢氏の立件可否が焦点となっている問題だ。

特捜部に逮捕された小沢氏の元秘書で衆院議員、石川知裕容疑者はすでに虚偽記載の事実を認める供述をし、4日に起訴される見通しである。

小沢氏については、虚偽記載の具体的な指示が立証されなければ公判維持が難しいなどの慎重論があり、嫌疑不十分で不起訴処分とする方向という。しかし、この方向で決着した場合、検察に対する国民の信頼は失われかねない。これまでの一連の強制捜査や事情聴取は一体何だったのか、という検察批判が渦巻くだろう。

検察当局はすでに鳩山由紀夫首相の偽装献金事件では元秘書2人を起訴したものの、首相の関与は嫌疑不十分で不起訴とした。母親からの約12億6千万円の資金提供をおとがめなしにしたのである。それに続いての小沢氏不起訴は政府与党の最高責任者であることを配慮したと受け止められる。

国民の義務である納税を怠り、発覚したら贈与税を払った首相に対し、小沢氏は土地購入原資にしたとされる銀行預金を家族の名義にしておきながら、「私のおカネ」と断言した。法律違反である借名口座にはおかまいなしだ。

こうした「脱法行為」を見逃すことは国家を溶解させることを忘れてはならない。

小沢氏の規正法上の責任は免れない。小沢氏は個別の記載については秘書に任せていたとし、関与を否定している。しかし石川容疑者は虚偽記載を認めたほか、「小沢氏に相談し、了承を得た」と供述しているという。「相談、報告を受けたことはない」とした小沢氏の説明と矛盾していよう。

まして小沢氏は政治資金について「すべて公表している」と透明さを強調してきた政治家だ。秘書に任せていたという弁明はあまりに無責任である。

虚偽記載額はきわめて多額であり、関連政治団体を経由するなど複雑な資金操作は「ミス」などではなく、原資を隠そうとする悪質なものだ。全容を解明し、違法行為の摘発が検察の責務である。

産経新聞 2010年02月02日

小沢氏再聴取 議員辞職が責任の取り方

民主党の小沢一郎幹事長が1日の記者会見で、前日に東京地検特捜部による2回目の事情聴取を受けたことを認め、「私自身が刑事責任を問われることになれば、責任は非常に重いと思う」と述べた。

自らが刑事責任を問われる可能性に言及し、責任の重大さを認めたのは初めてだ。起訴された場合を想定しての発言だろうが、その場合は幹事長辞任にとどまらず、議員を辞職することが出処進退の取り方だろう。

昨年の西松建設の違法献金事件に加え、資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり、政治資金規正法違反容疑で元秘書ら3人が逮捕された。石川知裕議員は4日に勾留(こうりゅう)期限を迎えるが、小沢氏の政治的かつ道義的責任は明白だ。

それだけにとどまらない。小沢氏は1回目の事情聴取で、ゼネコンからの裏献金や収支報告書の虚偽記載への関与を否定し、これまで政治資金について「すべて公表している」と違法性はないことを強調していた。

しかし、そうした発言は、小沢氏が起訴された場合、その多くが虚偽であることが示されよう。政治家としての信を失うことになる。もはや幹事長辞任では、責任を取ることにはならないのだ。

鳩山由紀夫首相はこれまで「小沢氏の潔白を信じる」などと擁護してきた。政権与党の最高実力者が直接、捜査の対象となる異常事態を見守ることは許されない。鳩山政権と小沢氏の問題を切り離すべきである。

捜査が新たな段階を迎えるのを前に、民主党内からは小沢氏の幹事長辞任など進退に関する発言が出始めた。前原誠司国土交通相が「新たな局面が生まれたときには、厳しく自浄能力を発揮していかねばならない」と強調したほか、枝野幸男元政調会長は「国民の理解と納得が得られなければ、けじめをつけてもらわなければいけない」と語った。

石川容疑者らの逮捕後も、首相が小沢氏の続投を容認し、それに表だった異論は出なかった。そのことで民主党自体の自浄能力の欠如が指摘されてきた。前原氏らの発言は遅きに失した感は否めないが、自浄能力の大事さに気付いたのだろう。

小沢氏の政治責任の明確化に加え、党独自の調査チームを設置するなど、自浄能力を具体的な行動に結び付けることが必要だ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/210/