新政権に望む 脱官僚へ足場固めよ 自民も移行に協力を

朝日新聞 2009年09月02日

鳩山新政権へ 「政権主導」の強い基盤を

民主党の鳩山代表は、途方もない重荷を負って荒海に乗り出す船長の思いではなかろうか。

特別国会で16日、首相に選出される。船出までに政権が政治を主導する態勢を築かねばならない。過去にモデルはない。白地に絵を描く作業の始まりである。

鉄は熱いうちに打て、という。

総選挙直後に朝日新聞が行った世論調査では、政権交代を「よかった」、民主党政権に「期待する」と答えた人がともに7割前後に達した。長年の自民党政治を変える、官僚主導から国民主導の政治へ。そうした民主党の訴えに対する熱い思いが読みとれる。

この民意にどう応えるか。まず重要なのは、司令塔として政府全体に号令をかけ、果敢に政策の優先順位を判断していく人事、組織づくりである。

内閣と与党の意思決定のプロセスを一元化する。官僚への丸投げではなく、政権党が責任を持って決める。これが民主党の掲げる政権主導のシステムだ。「国益」「国民益」重視の政権運営の仕組みに根っこから変えていきたいということだろう。

そのために、約100人の与党の国会議員が政府に入って、省庁ごとに大臣を中心にした政治家集団で政策づくりを主導する。官僚のおぜん立てに乗るのではなく、まず政治家が判断し、官僚を動かす。そんなイメージだ。

この「政権主導」「脱・官僚依存」の仕組みを動かす鍵は、新設される首相直属の「国家戦略局」が握る。

これまで財務官僚を中心に下からの積み上げでつくられていた予算編成のプロセスをひっくり返し、優先すべき政策を決め、下へおろす。外交政策など国家ビジョンの策定にもあたる。

首相を頂点にした意思決定の扇のかなめに位置する組織である。

この方向は時代の要請でもあろう。だが、自民党政権時代は、経済人や学者を交えた経済財政諮問会議や霞が関の巨大な官僚組織が束になって取り組んできた仕事だ。それをまったく新しい組織で動かそうというのだから、大変な大手術になるのは明らかだ。

だからこそ、戦略局の担当閣僚の人選は大事であり、難しい。政策に明るいことはもちろん、党内外の抵抗を封じる強力な政治力が求められる。国会議員だけでなく、民間の人材も積極的に登用し、意欲と能力のあるスタッフをそろえるべきだ。

民主党政権が最重視する行政のムダと不正の排除に取り組む「行政刷新会議」。担当相は財源をひねり出すだけでなく、政治と行政を透明化し、有権者の積年の政治不信をぬぐう任務も負う。自民党政権時代と何が変わるのか、成果を直ちに出さねばならない。

財政政策を直接仕切る財務相。党内や連立与党を調整しつつ、外交交渉の先頭に立つ外相。政府のかなめを握る官房長官。これら主要閣僚の人選にしくじれば、新政権はすぐにも立ち往生してしまうだろう。

政権の屋台骨を支える閣僚については、基本的に途中で交代させないという長期戦略も必要ではないか。

官僚機構との間に、活力に富んだ協力関係を築くことも重要である。

政治主導は当然のことだが、限られた数の政治家がすべてを担うわけにはいかない。

官僚は、知識と経験を兼ね備えた政策の企画や執行のプロ集団だ。政権の下支えとしてその力を引き出せなければ、政権運営はとてもおぼつかない。

官僚の側にも注文がある。戦後の日本の繁栄を支え、国益を担ってきたという自負を、新しい政治の枠組みの中で生かしてもらいたい。公平で効率的な行政のあり方を進言し、政権が人気取りに走ろうとすれば歯止めをかける。そんな新しい「官」の姿をつくる気概を見せてはどうか。

140人を超える民主党の新人議員たちにも考えてほしいことがある。皆さんを当選させ、政権交代を実現させた民意は、民主党に何を期待しているのかをである。

政府に加わらない多くの与党議員たちにも、政治家として自らの責任で発言し、政策づくりのプロセスに意見を反映させるべく、大いに行動してもらいたい。

だが、同時に、政権党として決めた結論には自らも責任を負うことをしっかり認識する必要がある。民意によって与えられたパワーをいたずらに分散させることがあってはならない。

そのことを一番身に染みて感じているのは、今回の選挙戦を事実上、指揮した小沢一郎代表代行かもしれない。

16年前、自ら主導してつくった細川政権が短期間で崩壊したのは、八つもの政党・会派が寄り集まった与党内の結束の乱れが大きな原因だった。

西松建設からのダミー献金事件で秘書の公判を控えていることもあって、小沢氏は今回は閣内に入らず、引き続き党で選挙対策を担う考えのようだ。

代表代行のままなのか、幹事長に就くのか。いずれにせよ、その力と経験を「鳩山首相」の指導力の確立に大いに役立ててほしい。

巨大与党を結束させていくのは容易なことではない。だが、それができなければ、大変な課題を前に新しい政治に託した民意に背くことになる。

毎日新聞 2009年09月01日

新政権に望む 脱官僚へ足場固めよ 自民も移行に協力を

これからがいよいよ政権交代の本番だ。民意の嵐が吹き荒れた投票日から一夜明けた31日、鳩山由紀夫民主党代表が9月中旬の首相指名、新政権発足に向けて動き出した。まずは、社会民主党、国民新党と連立協議を行い政権の枠組みを決めた上で、国家戦略局など新組織を作り、内閣・党人事に着手したい考えだ。

新政権移行期初日に確認しておきたいことは、あくまでもこの政権の基本的使命が何であるかだ。最大の眼目は、従来の官僚丸投げの政治から政権党が責任を持つ政治主導に大きく切り替えることだ。何事も最初が肝心である。どういう政権の形を作るのか。いくつか注文をつけたい。

第一に、連立協議である。民主党が衆院で308議席を獲得したのに連立を組まざるを得ないのは、参院(定数242)では統一会派を組む国民新党などを合わせても118議席で、過半数確保には社民党(5議席)の協力が欠かせないからである。

問題は、連立における政策合意の中身である。格差社会の是正、雇用と社会保障の再建、内需中心の経済へ転換するなど内政面については、多くの一致点があるが、外交・安保面では溝が深い。特に、インド洋での海上自衛隊の給油活動や非核三原則の扱いをめぐってはすでに思惑の違いが表面化している。外交・安保政策はあらかじめ政権の手をしばるべきではないが、最低限どこまで合意して何が合意できていないのか、は明らかにすべきである。

第二に、統治機構の改編問題である。縦割り省庁が行政を仕切る体制を改め、政治主導の実現をどう構築するかが問われる。民主党は国会議員100人以上の政府への登用や、省庁トップによる事務次官会議の廃止を公約に掲げた。こうした方針が骨抜きとならない体制を組まなければ、「脱官僚」はかけ声倒れに終わる。同党が掲げた行政のムダ削減による費用の捻出(ねんしゅつ)や「地域主権」の実現も、絵に描いた餅となろう。

まず、焦点となるのは首相直属で予算の骨格を作る新組織「国家戦略局」の構成だ。経済財政諮問会議に代わる司令塔と位置づけられるが、必ずしもその組織像は明らかでなかった。いくら首相の下に組織を作っても、各省から出向した官僚が事務局を取り仕切るのでは、これまでと実態は変わらない。国会議員が議論をリードするためには人選、配置など細部に目配りした制度設計が必要となる。

行政の経費削減や組織見直しに取り組む「行政刷新会議」も、民間のシンクタンクなどが蓄積した政策評価のノウハウを柔軟に活用しなければ、実効はあがるまい。

むろん、公務員は政治的中立を求められており、いたずらに恣意(しい)的な人事を行い「忠誠」を求めることや、「官僚たたき」で敵対関係をあおることは許されない。だが、新政権が警戒すべきことは変化に伴う混乱以上に、官僚に巧妙に取り込まれることだ。各省からの出向組が占めていた事務首相秘書官への民間人の起用なども大いに検討すべきだろう。

また、同党が掲げる「地域主権」を実現するうえで、分権改革を推進する体制も重要だ。やはり公約で示した国と地方の協議機関も、早急に検討を進める必要がある。

第三に、党と内閣の人事をどうするか。鳩山代表はこれらの人事については、首相指名の前後に一気に決めたいとしているが、名は体を表す。党と内閣の骨格を誰が支えるのかは、新政権が何を目指すのか、どこまで実現能力があるのか、を示す極めて大切な指標となる。一内閣一閣僚という中長期をにらんだ人事も必要かもしれない。菅直人代表代行、岡田克也幹事長ら党首脳クラス、前原誠司、野田佳彦、枝野幸男、玄葉光一郎、長妻昭、福山哲郎氏らエースをどう活用するのか。民間からの登用を含め、考え抜いた布陣を期待したい。

小沢一郎代表代行については、来年の参院選をにらみ選挙担当を継続させるとの構想もあるようだ。100人の小沢チルドレンが派閥化し党内権力構造が二元化するのではないかと心配する声もあるが、選挙制度改革や官邸機能強化により首相に権限が集中してからは、田中角栄元首相時代のヤミ将軍的な裏権力は考えにくい。すべては首相となる鳩山氏の腹一つであろう。

第四に、政権移行期の危機管理体制の強化である。麻生政権から鳩山政権に移行するまでの2~3週間は極めて重要な政権引き継ぎ期間になる。特に、新型インフルエンザや災害発生などの危機管理は、内閣官房を中心とした時の政権の初動対応が重要だ。お見合いにならないよう、責任の所在が明確で、かつ透明性の高い政権移行を求めたい。麻生政権の最後の仕事としてほしい。

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