東京株式市場の日経平均株価がITバブルと呼ばれた平成12年以来、およそ15年ぶりの高値を連日にわたり更新した。
昨年4月の消費税増税で落ち込んだ景気が、底を打ったという期待感を反映した動きである。
市場の思惑に左右される株価動向に予断は禁物だ。だが、景気の先行指標といわれる株価の上昇が続けば、増税で冷え込んだ企業や家計の心理も好転する。この流れを確実にしていきたい。
それには、企業収益を所得増や消費拡大につなげる好循環が欠かせない。大企業はもちろん、中堅・中小企業も守りの経営から抜け出す努力が求められよう。
好調な株価を後押ししたのは大企業の業績改善である。
円安を追い風に、国際展開に積極的な自動車や電機業界などの収益が大幅に好転した。東証1部に上場する企業の27年3月期の最終利益合計額は、過去最高を更新する見通しだ。
業績が上向けば、春闘での賃上げや、デフレ下で手控えた設備投資、研究開発投資の余地が大きくなる。それを見越した市場の期待に企業が応えることが肝要だ。実体経済の力強さがないと、期待先行の株高で終わりかねない。
とりわけ注視すべきは、輸出企業に広がる景気回復の実感が、サービス業など内需型が多い地方経済に波及するかどうかである。中小・零細企業にも賃上げの動きを広げ、増税に伴う負担増を解消していかねばならない。
昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)伸び率がプラスに転じたとはいえ、肝心の個人消費は伸び悩んだままだ。株高で投資家の資産価値が増えても、それだけで消費を本格回復させられるわけではなかろう。大切なのは経済全体の底上げを急ぐことである。
今の株高は金融緩和にも支えられている。日銀にかぎらず、最近は欧州中央銀行(ECB)をはじめ各国の中銀が金融緩和を競い合っており、世界の金融市場に緩和資金があふれ返っている。
ただ、国境を越えた資金の流れは、しばしば海外経済の動向次第で大規模かつ急激に移動することを忘れてはならない。
そんななかで株高基調を維持するには、規制緩和などの成長戦略を通じて企業活動を活性化させるよう、政府がさらに環境整備を進めるべきは言うまでもない。
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