テロと、その源泉である過激思想を封じ込めるため、国際社会が実効性ある重層的な包囲網を構築することが急務だ。
米国主催の「暴力的過激主義への対処に関するサミット」の閣僚級会合は、過激派組織「イスラム国」などの宣伝戦への対抗措置を強化するとの共同声明を発表した。
「イスラム国」は、巧みなインターネット戦術で、100か国以上から2万人以上の外国人戦闘員を勧誘したとされる。だが、出身国に帰還した元戦闘員には、大義のない残虐行為や過酷な生活に失望した人が少なくない。
そうした声を広く紹介し、「イスラム国」の宣伝がウソだらけであることを的確に指摘する戦略的な広報活動を、各国政府が協調して展開することが重要である。
オバマ米大統領は、十字軍や植民地支配の歴史を持つ西洋と中東が「戦争状態にある」とする、テロ組織による「文明の衝突」論を否定すべきだと訴えた。イスラム教指導者に「イスラム国」批判の声を上げることも呼びかけた。
国際社会が穏健なイスラム教指導者と共闘し、過激派組織を孤立化させることが欠かせない。
イスラム教徒の間で、暴力を正当化するイデオロギーを排除することが、「イスラム国」の勢力伸長に歯止めをかけよう。
会合は、家族や宗教関係者らが若者の過激化を防ぐ努力や、刑務所内での過激思想の拡散を阻止することの必要性で一致した。
危険人物の渡航制限のため、人定や移動に関する情報を国際刑事警察機構(ICPO)でデータベース化することも確認した。多国間の情報共有を急ぎたい。
日本も、従来以上に主体的な取り組みが求められる。
中山泰秀外務副大臣は会合で、中東、アフリカ諸国のテロ対処能力向上のため、国境管理の強化費などに1550万ドル(約18億円)を拠出する方針を表明した。
日本人が標的となり得る現実を見据え、積極的に役割を果たす必要がある。過激思想を生む貧困や腐敗、人権抑圧などの土壌を改善せねばならない。
中東諸国に対する医療や食料、教育などの人道支援を拡充し、地域の安定に寄与したい。
テロ防止策として外務省は、携帯電話による在留邦人らの安否確認システムを導入し、日本人学校の警備強化も支援する。
外国軍から情報を得るため、防衛駐在官を増員し、アラブ専門家を育成することも大切だ。
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