対テロ閣僚会合 重層的な包囲網の構築を急げ

毎日新聞 2015年02月22日

対テロ国際会議 この結束から再出発を

「我々はみな同じ船に乗っている。助け合わねばならない」。そんな平凡とも映る比喩が、これほど強い実感を伴って響くのも珍しい。ワシントンで開かれた「暴力的過激主義対策サミット」におけるオバマ米大統領の演説である。

読売新聞 2015年02月21日

対テロ閣僚会合 重層的な包囲網の構築を急げ

テロと、その源泉である過激思想を封じ込めるため、国際社会が実効性ある重層的な包囲網を構築することが急務だ。

米国主催の「暴力的過激主義への対処に関するサミット」の閣僚級会合は、過激派組織「イスラム国」などの宣伝戦への対抗措置を強化するとの共同声明を発表した。

「イスラム国」は、巧みなインターネット戦術で、100か国以上から2万人以上の外国人戦闘員を勧誘したとされる。だが、出身国に帰還した元戦闘員には、大義のない残虐行為や過酷な生活に失望した人が少なくない。

そうした声を広く紹介し、「イスラム国」の宣伝がウソだらけであることを的確に指摘する戦略的な広報活動を、各国政府が協調して展開することが重要である。

オバマ米大統領は、十字軍や植民地支配の歴史を持つ西洋と中東が「戦争状態にある」とする、テロ組織による「文明の衝突」論を否定すべきだと訴えた。イスラム教指導者に「イスラム国」批判の声を上げることも呼びかけた。

国際社会が穏健なイスラム教指導者と共闘し、過激派組織を孤立化させることが欠かせない。

イスラム教徒の間で、暴力を正当化するイデオロギーを排除することが、「イスラム国」の勢力伸長に歯止めをかけよう。

会合は、家族や宗教関係者らが若者の過激化を防ぐ努力や、刑務所内での過激思想の拡散を阻止することの必要性で一致した。

危険人物の渡航制限のため、人定や移動に関する情報を国際刑事警察機構(ICPO)でデータベース化することも確認した。多国間の情報共有を急ぎたい。

日本も、従来以上に主体的な取り組みが求められる。

中山泰秀外務副大臣は会合で、中東、アフリカ諸国のテロ対処能力向上のため、国境管理の強化費などに1550万ドル(約18億円)を拠出する方針を表明した。

日本人が標的となり得る現実を見据え、積極的に役割を果たす必要がある。過激思想を生む貧困や腐敗、人権抑圧などの土壌を改善せねばならない。

中東諸国に対する医療や食料、教育などの人道支援を拡充し、地域の安定に寄与したい。

テロ防止策として外務省は、携帯電話による在留邦人らの安否確認システムを導入し、日本人学校の警備強化も支援する。

外国軍から情報を得るため、防衛駐在官を増員し、アラブ専門家を育成することも大切だ。

産経新聞 2015年02月23日

テロ対策会議 幅広な総力戦で壊滅図れ

「イスラム国」に代表される過激組織の脅威を封じ込めるには、国際社会の緊密な連携と情報共有など幅広い対策が不可欠だ。

米国が主催し、60カ国以上が参加した閣僚級の「暴力的過激主義対策サミット」で、イスラム国の宣伝戦への対抗措置強化や影響を受けやすい若者たちの経済的環境改善などをうたった共同声明が発表された。

イラクとシリアの一部を実効支配するイスラム国は敵の兵士や外国人人質の残虐な殺害映像をインターネットで流す一方、ソーシャルメディアなどネットを悪用した宣伝の手口は極めて狡猾(こうかつ)だ。

テロとの戦いで、経済的、社会的な不満を抱く各国の若者が過激思想に洗脳されないよう、穏健かつ中庸な考え方をネットなどを通じて発信することの重要性が増している。国際社会が新しい側面に焦点を当て、具体的に動き始めたことを歓迎する。

ただ、こうした中長期的な取り組みは即効性を伴わない。米国を中心とする有志連合による軍事作戦が、イスラム国を弱体化させ、最終的に壊滅に導くカギを握ることを忘れてはならない。

米中央軍は国際会議の開催中に、イスラム国が占拠するイラク第2の都市モスルの奪還作戦を4~5月に開始できるよう準備を進めていると明らかにした。

軍事作戦の時期を事前に明らかにするのは異例であり、米国の決意を示すものと受け止めたい。

昨年以降、イスラム国に忠誠を誓う過激派がリビアやナイジェリア、エジプトなど各地に現れ、欧州などでもイスラム国支持者らによるテロが続く。

国際会議では今年9月の国連総会に合わせ首脳級のサミットを開催し、「暴力的過激主義」に対する包括的な行動計画を策定することも決まった。息の長い対策も重要だが、過激主義の伸長阻止は時間との闘いであることを自覚し、可能な対策を次々打つべきだ。

今回、日本からは中山泰秀外務副大臣が出席、中東、アフリカでの国境管理強化などのため1550万ドル(約18億4千万円)の拠出を表明した。重要な貢献だ。

イスラム国は日本人もテロの標的だと宣言している。2020年には東京五輪を控え、外国人観光客は増え続けている。テロリストの入国を阻止する水際対策など、国内の守りも着実に固めたい。

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