プラス成長に転じたものの、力強さには欠けている。景気の着実な回復に向けて、これからが正念場となろう。
昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比0・6%増、年率換算2・2%増と、3四半期ぶりに増加した。個人消費と輸出が、2期連続で伸びたことが主な要因だ。
昨年4月の消費税率引き上げ後で、初のプラス成長になったことを歓迎したい。
肝心なのは、安定成長の軌道に乗せることだ。回復ペースは緩やかで、先行きは楽観できない。
GDPの6割を占める個人消費の拡大がカギを握る。賃金上昇によって、家計の消費意欲を高める必要がある。
昨年の春闘は、2%超の高い賃上げ率となった。それでも、消費増税分を含む物価上昇率に、賃金の伸びは追いついていない。
所得増が消費を刺激し、それが企業業績をさらに押し上げる「経済の好循環」を本格化させることが大事だ。今年の春闘が果たす役割は、極めて大きい。好業績の企業が、積極的に賃上げに取り組むことを期待したい。
自動車、電機などの大手メーカーが、基本給を底上げするベースアップに前向きなのは心強い。
大企業を起点として、中小企業の社員や非正規労働者に賃金改善を広げることが求められる。
気がかりなのは、民間の設備投資が、微増にとどまったことだ。公共投資の伸びは鈍化している。成長の維持には、民間投資がもっと活気づく必要がある。
日本企業は、過去の利益の蓄積である内部留保が総額300兆円を超える。上場企業は今年度、過去最高益をうかがう好業績が見込まれる。賃上げや設備投資に回せる資金は潤沢なはずだ。
輸出産業は今、円安の恩恵を受けているが、国際競争は厳しさを増していこう。流通・外食などの内需産業は、人口減による国内市場の縮小に直面している。
企業は資金をため込むばかりでなく、成長分野を開拓し、生産性向上に資する先行投資に動かないと、生き残れまい。
挑戦する企業への政策支援も大切だ。安倍政権は、経済政策「アベノミクス」を引き続き推進し、規制改革などの成長戦略を、さらに強化しなければならない。
消費税率が10%に上がる予定の2017年4月までに、増税に耐えられる経済体力をつけ、成長と財政再建の二兎を得る。官民が連携して達成すべき目標だ。
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