衆院代表質問 現実的な格差論議を深めよ

毎日新聞 2015年02月17日

岡田氏代表質問 「格差」議論もっと深めよ

安倍晋三首相の施政方針演説に対する各会派の代表質問が始まった。民主党の岡田克也代表は格差問題に重点を置き、再配分の強化を掲げながら首相の見解をただした。

読売新聞 2015年02月17日

衆院代表質問 現実的な格差論議を深めよ

政府の政策を多角的に点検し、現実的な対案を示す。野党がそんな論争を仕掛けてこそ、国会に緊張感が生まれよう。

安倍首相の施政方針演説に対する代表質問が始まった。先月の就任後初めて質問に立った民主党の岡田代表は、首相の経済政策「アベノミクス」について「成長の果実を分配する視点が欠落している」と批判した。

低所得層が増加し、格差が拡大しているとも主張した。

首相は「税や社会保障による再分配後の格差は、おおむね横ばいで推移している」と反論した。

どの指標を重視するかで、格差の現状認識は異なる。重要なのは、世代を超えた格差の固定化を避けて、「機会の平等」を確保することだ。子どもの貧困対策や教育の充実、非正規労働者のキャリアアップや処遇改善が欠かせまい。

岡田氏は格差是正策として、富裕層を対象に、所得・相続税の課税強化を検討するよう求めた。

だが、行き過ぎた所得再分配は、経済や社会の活力を失わせる。民間活力を喚起し、「稼ぐ力」を高めて、国民生活の向上を図るアベノミクスの方向性は妥当だ。

成長を維持しつつ、いかに格差を是正するか、与野党は、さらに議論を深めてもらいたい。

疑問なのは、岡田氏が、集団的自衛権の行使を限定容認した政府の新見解について「立憲主義に反する」と批判したことだ。

新見解は、従来の見解と一定の整合性を維持した、合理的な範囲内の憲法解釈の変更であり、批判は当たらない。民主党は、集団的自衛権行使の是非について党見解をまとめることが先決だろう。

今夏に発表する戦後70年の首相談話に関し、岡田氏は、村山談話の「植民地支配」「侵略」などの表現を明記するよう求めた。

首相は、先の大戦への反省や戦後の歩み、今後の国際貢献などを盛り込む考えを表明した。

過去への反省を踏まえ、未来志向の談話を目指す方針は適切である。国際的に注目される中、表現には工夫が求められる。

維新の党の江田代表は、「アベノミクスの方向性自体には賛成」と言明しながら、規制改革などが不十分だと指摘した。

政府の農協改革は「看板の掛け替え」に過ぎないとして、非農家の「准組合員」の利用制限など抜本的改革の断行も主張した。

維新の党が、規制改革や安保政策で、民主党と異なる視点から建設的な提案を行う意味は小さくない。その姿勢を維持すべきだ。

産経新聞 2015年02月18日

代表質問 安保環境踏まえた論戦を

安全保障関連法制をめぐる国会論戦が本格化した。昨年7月、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定に基づき、国民を守るために切れ目のない法制を整備しようというものである。

厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、実効的な法整備にならなければ、意味をなさない。

国民の生命と日本の存立に大きく影響するだけに、曖昧なところを分かりやすく説明し、国民の理解を取りつけてほしい。

安倍晋三首相は代表質問で、自衛隊の後方支援に関して「ニーズが発生してから立法措置を行うことは考えていない」と答弁した。海外派遣を随時可能とする恒久法制定の考えを明確にしたものであり、評価したい。

集団的自衛権を限定行使する事例も挙げた。日本周辺有事の際、避難する邦人を運ぶ米国船舶を自衛隊が守るケースと、重要なシーレーン(海上交通路)である中東・ホルムズ海峡での機雷除去に自衛隊が従事するケースだ。

首相の発言は、民主党の岡田克也代表が安保法制を取り上げたことに答えたものだ。しかし、民主党自体が日本の安保環境をどのようにとらえ、いかなる対応が必要だと考えているかが不明なのでは論議は深まらない。

中国の軍事的台頭は、力による尖閣諸島奪取の意図を隠さず、日本を含むアジア太平洋地域を不安定化させている。

日本を標的にする過激組織「イスラム国」などテロとの戦いへの備えも必要だ。

民主党は安保法制に関する協議を始めているが、集団的自衛権の行使そのものへの賛否もはっきりしない。岡田氏は、安保環境に対応して国民の平和をどう確保するかの具体論を語るべきだ。

首相もさらに踏み込んだ議論を展開してほしい。

重要なシーレーンはホルムズ海峡にとどまらない。米海軍の第7艦隊司令官は、海上自衛隊の警戒監視活動を南シナ海へ拡大するよう要望したが、日本としてどう判断するかが問われている。

安保法制協議をめぐっては、公明党から安倍首相や自民党のペースで進むことに、ブレーキをかけるような発言も出ている。

だが、日本の平和を確かなものとする抑止力をいかに高めるかが、議論の主眼となるのでなければならない。

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