与党安保協議 迅速な協力へ恒久法の制定を

朝日新聞 2015年02月15日

与党安保協議 無理筋を押し通すな

今国会の焦点となる安全保障法制に関する自民、公明両党の与党協議が始まった。

昨年7月の閣議決定をどう法案化するか。集団的自衛権の行使をめぐる「存立事態(仮称)」▼自衛隊の「後方支援」▼武力攻撃にいたらない「グレーゾーン事態」――が柱となる。

グレーゾーン事態から始まった議論で、いきなり両党間の溝があらわになった。

閣議決定は、自衛隊とともに行動する「米軍部隊の武器等」を防護できる考えを盛り込んでいた。だが政府はオーストラリア軍を念頭に、米軍以外にも対象を広げる方針である。

そうなると、あの閣議決定は一体何だったのか、という疑問がふくらむ。公明党から慎重論が出たのは当然だろう。これを認めるのなら、閣議決定の見直しが必要ではないか。

与党協議をへて閣議決定したはずなのに、今も法案化をめぐって与党内に溝が残る。このこと自体、閣議決定の中身が生煮えだったことを物語る。

同じ閣議決定でも、自民党はできるだけ自衛隊の海外活動を広げようとし、公明党は歯止めをかけようとする。結局は、あいまいな閣議決定をもとに、あいまいな法案をつくろうとしているのではないか。

たとえば現行の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)をもとにした、周辺事態法を存続させるか、どうか。

政府・自民党は当初、周辺事態法を廃止し、自衛隊の多国籍軍などへの後方支援を常に可能とする「恒久法」に一本化して自衛隊の活動範囲を地球規模に広げる腹づもりだった。

だが、難色を示す公明党に配慮して、周辺事態法を存続させる方向になっている。

もともと周辺事態法は、海外での武力行使はしないという一線を引いた法律である。とすると、集団的自衛権の行使との兼ね合いはどうなるのか。武力行使への一線を越えるなら、大きな変質と言わざるをえない。

政府・自民党の論議から見えてくるのは、自衛隊をすばやく派遣するため、政府の裁量を大きくする考え方だ。国会の関与が不十分なまま、いかようにも解釈可能な法律のもとで、政府の一存で自衛隊を動かす恐れがぬぐえない。根底には、憲法と国会を軽んずる発想がひそんでいないか。

そのときの都合で簡単に解釈を拡大するのでは、原則がないも同然だ。安保法制への国民の信頼は得られまい。

筋の通らぬ話を与党だけで押し通してはならない。

読売新聞 2015年02月14日

与党安保協議 迅速な協力へ恒久法の制定を

日本の平和と安全をより確実にし、世界の安定にも積極的に役割を果たす。そのために自衛隊を効果的に運用できる法制にすることが肝要だ。

自民、公明両党が、新しい安全保障法制整備に関する協議を開始した。集団的自衛権の行使を限定容認する昨年7月の政府見解を反映する法制の全体像を来月中にまとめたうえ、5月に関連法案を国会に提出する予定だ。

武装集団による離島占拠など、有事に至らない「グレーゾーン事態」に関し、政府は、自衛隊と共同で警戒監視中の他国軍艦船を防護できるようにしたい考えを示している。公明党は、米軍以外の艦船防護に慎重姿勢を示した。

平時から有事まで、切れ目のない防衛体制を構築するうえで、平時の米軍艦船防護を可能にする意義は大きい。ただ、防護対象を米軍に限定すべきではあるまい。

自衛隊は近年、米軍に限らず、豪州軍などとの共同活動を行う機会が増加している。今後は、さらに増えよう。より多くの軍との連携を強化しておくことが、効果的な事態対処を可能にする。

国際協力では、自衛隊の海外派遣に関する恒久法の制定の是非が最大の焦点となる見通しだ。政府・自民党は自衛隊の迅速な派遣が可能になるとして前向きだが、公明党には慎重論が少なくない。

日本は従来、インド洋での給油、イラクでの復興支援活動など、必要に応じて特別措置法を制定し、対応してきた。だが、この手法は立法作業に時間を要するうえ、事態対処に「切れ目」を作る。

恒久法を制定すれば、補給・輸送・医療など他国軍への後方支援に備えて、平時から訓練を行い、必要な装備を整えられる。

国連安全保障理事会決議がある場合に限定せず、決議がない有志連合による活動に参加できるようにすることも大切である。

自衛隊の活動には、地理的な制約を設けるべきではない。自衛隊の国際任務を拡大し、他の地域の安定に寄与することは、日本自身の安全確保にもつながる。

集団的自衛権の行使に関しては、米艦防護、ミサイル防衛などに加え、中東での機雷除去を可能にするかどうかについて、自公両党の意見が分かれている。

様々な事態を想定し、柔軟に対応できる余地を残すことが安全保障の要諦だ。自衛隊の活動を最初から制約することは、抑止力の向上という目的を損ねかねない。政府に一定の裁量範囲を持たせる法制にすることが欠かせない。

産経新聞 2015年02月16日

与党安保協議 恒久法制定で切れ目なく

集団的自衛権の行使容認など昨年7月の閣議決定を反映する安全保障関連法案の整備に向け、与党が協議を再開した。

日本や国際社会の平和と安定を守るために何をすべきか、その行動を可能にする法制はいかにあるべきか、という観点こそ議論の核心だ。

焦点は海外で行動する米軍や多国籍軍に対し、自衛隊を派遣して補給や輸送、医療支援などの後方支援を随時行えるようにする「恒久法」である。

集団的自衛権の行使とともに、円滑な後方支援は日米協力に欠かせない。公明党は自衛隊の海外活動が「際限なく広がりかねない」と制定に慎重だが、恒久法を安保法制のカギと位置付ける安倍晋三首相は、実効性ある与党合意に向けて指導力を発揮してほしい。

後方支援は国際貢献の柱にもなる。日本はこれまで2度、個別案件への時限立法である特別措置法で、自衛隊を海外へ派遣した。

米中枢同時テロ後に、インド洋での給油支援に当たったテロ対策特措法(平成13年)と、イラク戦争後のイラク人道復興支援特措法(15年)である。

だが、後方支援が必要になる度に個別の特措法で対応するやり方は、国際社会のニーズに迅速に応えられない。積極的平和主義に沿った制度を構築しておく恒久法の意義は大きい。

首相は施政方針演説で「切れ目のない対応を可能とする」安保法制を強調した。恒久法は切れ目をなくす役割を果たす。

恒久法を制定しても、後方支援への参加は閣議決定に基づいて行われる。議院内閣制をとる日本では、この手続きにより与党の意向が反映される。首相は国会答弁で、派遣に関する国会承認の導入にも前向きな考えを示した。

公明党には、後方支援について国連安全保障理事会の決議があった場合に限るべきだとの意見がある。だが、中国やロシアなどの常任理事国が拒否権を行使しても、多国籍軍への後方支援が必要なケースは考えられる。

中東の過激組織「イスラム国」壊滅のため、有志連合が行う空爆への後方支援について、安倍政権は検討の対象外としている。

日本の国際貢献を難しくしてきた、これまでの安保法制のあり方が問われている。平和構築のため、自衛隊をいかに活用できるかに主眼を置く議論が必要だ。

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