ようやく合意した停戦を維持するには、定められた手順を当事者が順守することが不可欠だ。
ウクライナ政府軍と親ロシア派武装集団が激しく衝突するドネツク、ルガンスクの東部2州で、15日に停戦が発効することになった。
ロシアのクリミア編入後に始まった戦闘は昨年9月、いったん停戦合意が成立した。だが、今年に入って紛争が再燃し、空港や港湾都市などを親露派が攻略した。
民家や病院が容赦ない砲撃にさらされ、昨年4月以来の死者は5300人を超えている。
この状況に危機感を抱く独仏首脳がシャトル外交を重ね、ロシア、ウクライナの首脳との16時間の交渉の末、停戦合意をまとめた。
13項目の合意は、重火器撤去や幅50キロ・メートル以上の安全地帯設置、外国兵の撤収、停戦監視、捕虜交換などを期限付きで定めた。
まずは、政府と武装集団、ロシアの3者が攻撃を自制し、戦車や大砲を撤去するとの合意を誠実に履行することが大切である。
ただ、不安は残る。合意発表当日も、新たな衝突やロシアからウクライナへの武器搬入が伝えられた。兵員と兵器の越境を中止しなければ、合意は維持できまい。
全欧安保協力機構(OSCE)が担う停戦監視の実効性をどう確保するかも大きな課題である。
ウクライナ自身も、難題を抱える。親露派が多い東部と、反露感情が強いその他の地域との根深い対立をどう解消するかだ。
国土の一体性の維持は、国民の融和が前提となる。親露派支配地域への自治権付与や、紛争地域の住民の生活と経済の再建を通じ、和解を達成せねばならない。
そのためには、昨年以降、急速に財政が悪化したウクライナへの国際社会の支援が欠かせない。
国際通貨基金(IMF)は、行財政改革や汚職撲滅を条件に、今後4年間で175億ドル(約2兆1000億円)の大型の金融支援を行うことを決めた。
国際社会が、対露制裁の継続に加え、必要なら追加制裁を科すことで、ロシアに停戦順守の圧力をかけ続けることが重要だ。
欧州連合(EU)首脳会議は、露政府幹部らへの追加制裁について、停戦発効後の16日に予定通りに発動することを決定した。
日本は、ウクライナへの主要な援助国であり、対露制裁を発動している。「力による現状変更」を認めない立場から、欧米などと緊密に連携し、停戦の維持と和平達成を後押ししたい。
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