ウクライナ 停戦の実現が最優先だ

朝日新聞 2015年02月13日

ウクライナ 停戦の実現が最優先だ

ロシアと欧州の間に位置するウクライナでの戦火の拡大は、世界の安全を脅かしている。新たな合意を、実効性ある和平体制への一歩とすべきだ。

ドイツ、フランス、ロシアとウクライナの4カ国首脳が会談し、ウクライナ東部での政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘について、今月15日から停戦に入ることなどで合意した。

約16時間の徹夜の協議をへた合意と共同声明は、ウクライナの主権と領土保全を尊重しつつ、東部の自治権を拡大することなどをうたっている。

これらの多くは、昨秋の停戦合意に盛り込まれながら、実現されずにきたものだ。今回も、詳細については意見の違いが残されており、本当に履行されるか不安は尽きない。

しかし、紛争による死者は約5500人に達し、最近の戦闘で急増している。まず停戦を最優先し、今度こそ合意の実現に全力で当たってもらいたい。

それには、まずロシアの責任が大きい。東部地域へのロシア軍の展開や親ロシア派への武器供与が米欧から批判されていたが、ほとんど改善されないまま今回の事態を招いた。

ロシアが相変わらず合意の実行に誠意を見せないならば、国際社会は経済制裁の強化で対応せざるをえない。それは、国内経済が苦境にあるロシアにとって、さらなる打撃となる。

米政府が示唆するウクライナ政府軍への武器供与も現実味を帯びてこよう。そうなれば米国とロシアの「代理戦争」の性格を帯び、世界の安全を不安定化させる。ロシアは本気で強硬策を転換するべきだ。

ウクライナ政府にも、姿勢を改める重い責務がある。

現在の政権を握る親欧米派勢力は、1年前の政変で親ロシア派のヤヌコビッチ前大統領を退陣させた。だが、その際に勢力の一部が暴力に訴えたうえ、さらにロシア語系住民の権利を制限する措置をとったことで、東部の住民の反発を招いた。

その後もウクライナ政府は、武力による制圧に傾きがちで、東部の不信を解く努力が十分だったとは言えない。東部住民との共生をめざす対話に今度こそ真剣に取り組む必要がある。

もとより不振だったウクライナ経済は破綻(はたん)の瀬戸際にある。国際通貨基金(IMF)はきのう、多額の金融支援を発表したが、そうした援助を生かすためにも国内の安定が欠かせない。

今回の合意の意味はきわめて重い。不毛な紛争に終止符を打てるよう、国際社会全体で合意の実現を支えたい。

毎日新聞 2015年02月14日

ウクライナ情勢 停戦合意を確実に守れ

ウクライナ東部で年明けから激しい戦闘を再開した政府軍と親ロシア派武装勢力が、15日から停戦に踏み切ることで合意した。ドイツ、フランス、ロシア、ウクライナの4カ国首脳が16時間に及ぶ徹夜交渉の末に合意文書をまとめ、ロシア、ウクライナ、親露派武装勢力と、停戦監視役の全欧安保協力機構(OSCE)の各代表がこれに署名した。

読売新聞 2015年02月14日

ウクライナ停戦 合意順守へ国際圧力が重要だ

ようやく合意した停戦を維持するには、定められた手順を当事者が順守することが不可欠だ。

ウクライナ政府軍と親ロシア派武装集団が激しく衝突するドネツク、ルガンスクの東部2州で、15日に停戦が発効することになった。

ロシアのクリミア編入後に始まった戦闘は昨年9月、いったん停戦合意が成立した。だが、今年に入って紛争が再燃し、空港や港湾都市などを親露派が攻略した。

民家や病院が容赦ない砲撃にさらされ、昨年4月以来の死者は5300人を超えている。

この状況に危機感を抱く独仏首脳がシャトル外交を重ね、ロシア、ウクライナの首脳との16時間の交渉の末、停戦合意をまとめた。

13項目の合意は、重火器撤去や幅50キロ・メートル以上の安全地帯設置、外国兵の撤収、停戦監視、捕虜交換などを期限付きで定めた。

まずは、政府と武装集団、ロシアの3者が攻撃を自制し、戦車や大砲を撤去するとの合意を誠実に履行することが大切である。

ただ、不安は残る。合意発表当日も、新たな衝突やロシアからウクライナへの武器搬入が伝えられた。兵員と兵器の越境を中止しなければ、合意は維持できまい。

全欧安保協力機構(OSCE)が担う停戦監視の実効性をどう確保するかも大きな課題である。

ウクライナ自身も、難題を抱える。親露派が多い東部と、反露感情が強いその他の地域との根深い対立をどう解消するかだ。

国土の一体性の維持は、国民の融和が前提となる。親露派支配地域への自治権付与や、紛争地域の住民の生活と経済の再建を通じ、和解を達成せねばならない。

そのためには、昨年以降、急速に財政が悪化したウクライナへの国際社会の支援が欠かせない。

国際通貨基金(IMF)は、行財政改革や汚職撲滅を条件に、今後4年間で175億ドル(約2兆1000億円)の大型の金融支援を行うことを決めた。

国際社会が、対露制裁の継続に加え、必要なら追加制裁を科すことで、ロシアに停戦順守の圧力をかけ続けることが重要だ。

欧州連合(EU)首脳会議は、露政府幹部らへの追加制裁について、停戦発効後の16日に予定通りに発動することを決定した。

日本は、ウクライナへの主要な援助国であり、対露制裁を発動している。「力による現状変更」を認めない立場から、欧米などと緊密に連携し、停戦の維持と和平達成を後押ししたい。

産経新聞 2015年02月14日

ウクライナ停戦 解決への一歩にすぎない

ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘が続くウクライナ東部をめぐり、2度目の停戦合意が成立した。

昨年9月の停戦は破綻し戦闘の死者は5千人を超す。これ以上の流血を避けることは大切だ。

しかし今回の合意で設けられた双方の緩衝地帯は親露派の最近の猛攻による支配地域拡大が反映され、居座りを追認する形となった。

停戦の行方を左右するのは、ロシアのプーチン大統領だ。ロシアは兵器、兵力で親露派を後押ししているとみられ、関与を否定する言葉をそのまま受け取ることはできない。

親露派勢力とロシアが停戦を再び反故(ほご)にし、さらに勢力拡大を狙う隙を与えないよう、国際社会は警戒を続けることが重要だ。

今回の停戦交渉はウクライナとロシア、調停役のドイツ、フランスの4首脳がベラルーシの首都ミンスクで夜を徹して行った。

オバマ米大統領は、親露派の停戦破りを受けて米国が従来の対露経済制裁に加え、対戦車砲など殺傷力のある武器のウクライナ軍への提供を検討していると明らかにしていた。

独仏首脳の調停外交は米国の武器提供が戦火拡大につながることを懸念したものだろう。オランド仏大統領はこの調停を「最後の機会」と位置づけた。欧州が抱く危機感も理解できる。

交渉を終えた独仏首脳を迎えて欧州連合(EU)は首脳会議を開き、トゥスクEU大統領は、ロシアの停戦不履行に対しては「必要な措置をためらわない」と、追加制裁も辞さない考えを示した。

米国は、今回の合意を歓迎しつつ、ウクライナへの武器供与を依然、選択肢として排除していないと表明した。合意の成果は守らねばならないが、米欧は連携してあらゆる選択肢を残しておくべきだ。経済制裁などロシアへの圧力を安易に緩めてはなるまい。

この合意は、ウクライナ危機解決への第一歩にすぎない。同国東部の親露派住民の地位など今後の協議には難問が控えている。

忘れてならないのは、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の一方的な併合だ。力による現状変更は許されない。

国際社会はウクライナ和平の追求とともに、ロシアに対してクリミアの返還を要求し続けなければならない。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2090/