代表質問 迫力感じぬ首相の答弁

毎日新聞 2010年02月02日

代表質問 迫力感じぬ首相の答弁

鳩山政権の苦しい状況をそのまま映し出す質疑だった。衆院本会議で1日始まった各党代表質問で目立ったのは、鳩山由紀夫首相の答弁のそっけなさだった。自民党の谷垣禎一総裁ら野党側が政治とカネの問題だけでなく幅広い政策論争を仕掛けようとしていただけに、その印象は強い。首相がこんな消極姿勢を続けていては今後の論戦も深まらない。

政界の関心が、小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体による土地購入を巡る事件の行方に向かう中、谷垣氏がまず政治とカネの問題を取り上げたのは当然だろう。

しかも、世論調査によれば首相の献金問題より、小沢氏の問題の方により厳しい目を向けており、首相をはじめ小沢氏にものを言えない民主党の体質にも批判が集まっている。鳩山政権を「小沢独裁」と激しい言葉で非難し、「あなたは本当にこの国の施政者であり、最高意思決定権者か」とただしたのも、こうした世論を背景にしたものと思われる。

しかし、小沢氏の問題に関し、首相は「捜査を冷静に見守る」といった答弁に終始。「幹事長が党や政府を支配するということは一切ない」とも語ったが、自らが政権のトップだという迫力は伝わらなかった。

さらに物足りなかったのは政策課題に対する首相の答弁だ。谷垣氏は新年度予算案に盛り込まれた子ども手当に関し、自民党はあくまでも「自助」、つまり個人の自由と努力を尊重していると明言。そのうえで家族や地域社会による「共助」があり、それでも立ち行かないところは国民全体で支え合う「公助」が必要だと指摘した。所得制限なしの子ども手当は、いきなり「公助」ありきのばらまきだというわけだ。

これは、子ども手当の是非にとどまらず、どんな国を目指すのか、民主党と自民党の対立軸にもつながるテーマである。ところが、首相は子ども一人一人の成長を「社会全体で支援するもの」と淡々と答えるだけだった。

毎日新聞は所得制限なしの支給に賛成しているが、国民全体の理解が得られているとは到底いえない状況だ。なぜ今、「公助」なのか。首相がもっと丁寧に、そして熱意を込めて語るべき場面だった。

このほか、谷垣氏は年金や医療、介護など社会保障制度改革のため、財源も含めて議論する超党派による協議機関の設置も提案した。消費税率の引き上げなど財源問題も与野党で議論すべきだとの考えだろう。これに対し、首相は「まずは国会の中で真摯(しんし)に議論すべきだ」とかわした。確かにそれが前提だろうが、果たして今のままで「真摯な議論」が可能なのかと心配になってくる。

読売新聞 2010年02月04日

衆参代表質問 小沢問題でかすんだ政策論議

3日間にわたる衆参両院での各党代表質問が終わった。

政策課題では、民主党が目玉施策と位置づける子ども手当や、米軍普天間飛行場の移設問題などが論戦のテーマとなった。

しかし、質疑は小沢民主党幹事長の資金管理団体による土地購入事件に集中し、政策論議はすっかりかすんでしまった。

自民党の谷垣総裁は、民主党内から小沢氏擁護論や、検察批判が噴き出している現状をとらえ、鳩山政権は「小沢独裁に堕した」と批判した。

首相は、小沢氏が党や政府を支配することは一切ないと反論し、党側に「検察が捜査中であり、冷静に見守るように」と指示したことを強調した。

だが、報道機関への検察の情報漏洩(ろうえい)の調査や、捜査の全面可視化を法案にしようとする動きは続いている。政権トップの威令が届いていないのではないか。

首相の指導力に疑問符がつくようでは、普天間問題などの懸案について「自分で必ず決める」と言われても、空疎に響くだけだ。

小沢氏をめぐる疑惑に党として自浄能力を発揮できるかどうか。それは、鳩山政権の統治能力にかかわる問題である。

首相は答弁で、「同志の潔白を信じるのは当然」と繰り返した。ならば、国会への関係者招致や党の独自調査に積極的に取り組み、「潔白」を証明したらよい。

ところが、関係者招致には「国会で議論してほしい」と言うのみだ。首相が民主党代表として決断すれば、すぐ実現することだ。

党の独自調査も、「解明は検察にゆだねるべきだ」という答弁にとどまった。

結局、小沢氏の威を恐れて何もしないということではないか。そのような姿勢が、「小沢独裁」との見方を招いていることを自覚してほしい。

石川知裕衆院議員を含めて小沢氏の元秘書ら3人が逮捕されている。小沢氏には、検察の捜査とは別に、説明責任や政治的、道義的な責任がある。

最近、前原国土交通相や枝野幸男・元政調会長らが小沢氏の進退にようやく言及し始めたが、党内ではなお、圧倒的に少数派だ。

鳩山首相はもちろん、民主党議員も、なぜ「小沢独裁」と指摘されたのか、もっと深刻に受け止めるべきだろう。

自民党から「自由がないのが民主党」と揶揄(やゆ)されないように党の体質を改める必要がある。

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