高浜住民説明会 行政の都合で見送るな

朝日新聞 2015年02月14日

関西電力高浜原発 再稼働前に地元を見直せ

関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)について、原子力規制委員会が「新規制基準を満たしている」と正式に認めた。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)に続いて2例目となる。

今後の焦点は地元自治体の同意だ。その範囲に法的な定めはない。川内原発では鹿児島県知事の判断で、県と薩摩川内市に絞られた。安倍政権はこれを基本としており、今回も関電と福井県知事は福井県と高浜町のみを同意の対象にする方向だ。

原発事故が広大な地域に被害を及ぼすことは、東京電力福島第一原発事故が示した現実だ。事故前と変わらぬ枠組みで原発を動かしていいはずがない。

同意対象を県と立地の1自治体に限る方式を既成事実化するのではなく、再稼働の前に地元の範囲を定め直すことを改めて求めたい。

高浜原発は、事故時に住民の即時避難が必要な5キロ圏に京都府舞鶴市が含まれる。国が避難計画策定を義務づけた30キロ圏内だと京都、滋賀両府県の8市町が入る。人口は12万人を超え、福井県側の約5万人を上回る。

大飯(福井県)、玄海(佐賀県)、伊方(愛媛県)、島根(島根県)、志賀(石川県)。規制委の審査が進むこれらの原発も、近隣に他府県を含む。

高浜原発での地元同意は、試金石となってこよう。

地元同意の根拠は立地自治体が事業者と結ぶ安全協定だ。

全国に原発が増えた70年代以降、トラブルも多発した。しかし情報は事業者と国に握られ、地元はしばしばかやの外に置かれた。住民の立場から安全を監視しようと、立地自治体は協定を結び、情報を求めてきた。

福井県が各事業者と結んでいる協定には、事故後の再稼働の事前協議に加え、自治体が原発の運転停止を求めることができる条項もある。事故やトラブルのたび、事業者と粘り強い交渉を重ねて得てきた権限だ。

一方で福島の事故後、周辺市町村の住民も事故に不安を抱き、「立地並み」の協定を望む声が各地の自治体から相次ぐ。

関電はこの求めに否定的だ。京都府と協議中の新たな協定案でも、同意権は認めない方向だ。福井県知事も「立地自治体は責任を持ち、リスクを負ってきた経緯がある」と強調する。

かかわりの薄い地域にカギを握られることには、警戒感もあるだろう。

しかし周辺自治体が再稼働の判断に加わることは、より多くの目で安全性を広く監視していくことにつながる。安全性を独自にチェックし、不十分であれば再稼働にノーと言う。立地自治体が勝ち取ってきたこの成果を周辺自治体と共有することで、同意を得る地元の範囲を広げていきたい。

福井、京都、滋賀3府県と関係市町は、国の原子力災害対策指針にもとづき広域の避難計画をつくった。しかし計画通りに避難できるのか、細かな調整は緒に就いたばかりだ。

福井で原発事故が起きれば、3府県の十数万人が主に関西方面へ避難する可能性がある。

渋滞で混乱が生じる恐れもある。避難者用のバスの確保など、詰めるべき課題は多い。

2府5県と4政令指定市でつくる関西広域連合は今年1月、広域避難の実効性確保などに、国が主体的に取り組むよう申し入れた。「実行されなければ、高浜の再稼働を容認できる環境にない」とくぎを刺している。

住民の安全に責任を負う自治体からは、再稼働前の了解を得るのが筋だ。避難対象という側面から、当面は原子力災害対策指針が定めた30キロ圏を同意対象にすべきだ。そのうえで協定で位置づけている地元同意を、将来的には法に明記することを考えてもよい。それほど重いプロセスであることを、事業者側に認識させる意味もある。

12年の大飯原発再稼働の時には消費地・関西の首長らが一時反対を表明し、福井県が孤立感を深めたことがあった。電力を使う側の一方的な主張に、福井県では不信感が根強くある。

対立を乗り越え、広い意味での「地元」の関係を結い直す取り組みが不可欠だ。

国主導で、福井と関西各府県の知事、原発30キロ圏の首長に集まってもらい、新たな地元の範囲や権限について、合意形成を図ってはどうだろう。

原発内のプールにたまった使用済み核燃料をどこで貯蔵するか。老朽原発を廃炉にする場合、経済の柱を失う地域をどう支えるか。立地地域と、電力消費地が手を携えて解決しなければならない課題は数多い。

手間はかかる。だが、福島原発事故が残した宿題に向き合う時間を惜しむべきではない。

原発をどうするかは、国民全体で決めていくべきテーマだ。福井と関西とで、それに向けた一歩を踏み出してほしい。

毎日新聞 2015年02月13日

高浜住民説明会 行政の都合で見送るな

関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働に向けた安全審査で、原子力規制委員会が合格通知となる審査書を決定した。関電は11月の再稼働を見込んでおり、地元同意の手続きが本格化する。

読売新聞 2015年02月16日

高浜原発 関電は再稼働へ万全を期せ

原子力規制委員会が、関西電力高浜原子力発電所3、4号機に対し、再稼働に向けた安全審査に合格したことを示す「審査書」を交付した。

安全審査を終えたのは、昨秋の九州電力川内原発1、2号機に続き、2か所目となる。

関電は、再稼働への手続きに万全を期さねばならない。地元の同意と理解を得ることも重要だ。

今後、難関となるのは、規制委による認可手続きだ。設備の詳細設計や保守点検体制の確認、現地での検査が待ち受ける。

先行した九電は、安全審査に合格後、直ちに認可に必要な書類を提出したが、規制委から、書類の不備を指摘された。その後も、補正書類の作成に手間取り、認可手続きは滞ったままだ。

九電は、既にファイル25冊、計2万ページの書類を提出している。さらに設備の強度計算などを追加して補強するという。

川内原発の再稼働に向けたスケジュールは見通せない状況だ。

東京電力福島第一原発の事故を踏まえ、原発の新たな規制基準では、地震や津波など自然災害の規模を従来より厳しく想定するようになった。配管を補強し、万が一に備えて、複数の電源や水源などを設けることも求めている。

このため、必要な追加工事の量は膨大にならざるを得ない。原発運転員や保守担当者の仕事量も大幅に増えている。

これらをチェックする認可手続きに、規制委が厳しい姿勢で臨むのはうなずける。

関電は、安全審査の段階に増して、書類の不備や誤りがないよう細心の注意を払うべきだ。九電も、補正書類提出へ向けた作業を加速する必要がある。

規制委には、安全を最優先にしつつ、認可手続きを効率化することも求められる。

電力会社は、新規制基準に手探りで対応している面がある。既に基本的な安全確保策は確認済みであることを踏まえ、規制委は、書類作成や認可手続きの重要項目や留意点について、電力会社に明確に指示すべきだろう。

規制委は、2012年の設置以来初の中期目標を決めた。規制行政に対する信頼の確保、厳正かつ適切な規制の実施などが柱だ。

規制委による活断層の評価などでは、「独善的」といった批判が出ている。電力会社との意思疎通を欠いていることが、主な要因だろう。双方の不信が募っては、原発の安全を見極めるという規制委の使命は果たせまい。

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