北方領土 70年を打開の節目に

毎日新聞 2015年02月07日

北方領土 70年を打開の節目に

戦後70年となる今年は、北方領土(歯舞<はぼまい>群島、色丹<しこたん>島、国後<くなしり>島、択捉<えとろふ>島)がソ連(現ロシア)に占領されてから70年の節目でもある。故郷を追われた元島民は、約1万7000人。その約3分の2が返還を見届けないまますでに他界した。

産経新聞 2015年02月08日

北方領土の日 71年目の不法占拠許せぬ 露は歴史歪曲改め即時返還を

ソ連・ロシアによる不法占拠から70年を迎えた。

7日開かれた「北方領土の日」の返還要求全国大会で安倍晋三首相は、「粘り強くこの問題に取り組んでいく」と述べ、改めて返還実現に強い決意を示した。節目の年を、4島返還の機運を高める機会としたい。

「北方領土の日」は1855年2月7日に日魯(にちろ)通好条約が結ばれたことに由来する。日本と帝政時代のロシアの間で、択捉(えとろふ)島とウルップ島の間を国境とすることが確認された。それ以来、択捉に加え国後(くなしり)、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の4島は一貫して日本の領土だった。このことは歴史的な事実だ。

≪長期の不誠実さに驚く≫

ソ連は、先の大戦終結直前の1945年、当時有効だった日ソ中立条約を破って対日参戦し、日本のポツダム宣言受諾後に武力により4島を占領した。それ以来、不法占拠を続けている。

56年の「日ソ共同宣言」では、ソ連は平和条約締結後の歯舞、色丹両島の返還に合意したが、ソ連、その後継国のロシアとも、この約束を履行しなかったのはもちろんのこと、択捉、国後両島の返還にも応じなかった。

ソ連は、「領土問題は解決済み」とするなどかたくなな姿勢を崩さず、今もって平和条約も結ばれていない。冷戦時代があったとはいえ、そうした態度をこれほど長期間続けてきたソ連、ロシアの不誠実さには、ただただ驚くほかはない。

ソ連末期の91年、ゴルバチョフ大統領は4島が平和条約締結に向け解決されるべき領土問題の対象であると文書で初めて認めた。

ロシアのエリツィン大統領も93年、細川護煕首相との間で交わした「東京宣言」で、両国合意のうえ作成した諸文書と、「法と正義の原則」を基礎に解決を目指すことに同意した。

返還交渉が進展するのではないかという期待が高まったが、プーチン大統領が2000年に登場した後、交渉は停滞し、過去約15年間、進展をみていない。

プーチン氏は01年に、「東京宣言」などに基づく交渉をうたった「イルクーツク声明」を森喜朗首相との間で発している。

だが、ロシアが相変わらず不誠実であることを端的に示すできごとが最近みられた。

ロシアが一方的にクリミア半島を併合し、軍事介入を続けるウクライナについて、岸田文雄外相は訪問先のベルギーで、北方領土問題と同様に「力による現状変更だ」と非難した。

ロシアはそれに対し、北方領土は先の大戦の結果、ロシアに正当に帰属したとし、「日本は歴史の教訓を学ぶことを望んでいない」と根拠のない反論を展開した。本音が表れたと見るべきだろうが、許し難い態度だ。

菅義偉(すが・よしひで)官房長官が「歴史を歪曲(わいきょく)したとの批判は全く当たらない」と述べたのも当然で、歴史を歪曲しているのはロシア側であることを忘れてはならない。

≪友人関係で解決するか≫

安倍首相は、プーチン氏とウマがあうといわれ、領土交渉の進展を念頭に、個人的な関係の強化に積極的に取り組んできた。

第2次安倍政権発足後の約2年間で、安倍氏とプーチン氏は7回会談した。トップ同士の意思疎通が重要なのは理解できる。しかし、その強固な個人的関係が領土返還交渉に生かされなければ、ただの「友人」にすぎず、何の国益ももたらさない。

クリミア併合などを受け、日本政府は計5回にわたってロシアへの制裁を科してきた。先進7カ国(G7)の一員として当然の判断だろう。その一方で、日露両首脳は昨年11月、北京での会談で、今年の「適切な時期」に大統領訪日を実現させるよう準備を始めることで合意した。

ロシアに対し欧米各国が強い態度を貫いているなか、それらの懸念を押し切ってまでプーチン氏を迎えるのであれば、首相はウクライナへの介入をやめるよう厳しく伝え、何よりも領土問題での進展を実現させなければなるまい。

一方、日本政府のなかに、歯舞、色丹の「2島返還論」や「面積折半論」など、4島返還を断念するかのような発言があるのも残念なことだ。領土交渉は数合わせではない。4島返還の主張に日本側から水を差す愚を繰り返してはならない。

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