アギーレ氏解任 日本協会に選択肢はなかった

朝日新聞 2015年02月05日

代表監督解任 経緯を検証し教訓に

日本サッカー協会が、日本代表チームのハビエル・アギーレ監督を任期途中で解任した。

アギーレ氏には2011年5月のスペインリーグ監督時代の試合を巡って、八百長疑惑が出ていた。地元検察当局の告発が裁判所に受理されたことを受けての決断である。

アギーレ氏は潔白を主張しており、まだ疑惑の段階だが、今後、捜査は本格化する。

6月からは、次のワールドカップ(W杯)ロシア大会アジア予選が始まる。

監督の不在によって、チームづくりや代表活動に支障が出かねないことを考えれば、解任を決めたタイミングも含め、妥当な判断だ。

協会の大仁邦弥(だいにくにや)会長は「監督に選んだことは間違いではなかった」と話している。選考にあたった担当者の責任は問わない考えを示した。

昨年8月の契約時に、八百長疑惑を把握することや、今回の告発受理を予見することは難しかったかもしれない。

しかし、アギーレ氏との契約交渉を担当した原博実専務理事は「スペインやイタリアではこういう(八百長疑惑の)話は常に出てくる」という認識を示していた。

さらに、八百長疑惑がスペインで報じられたのは9月末にさかのぼる。協会はすぐに担当者を現地に派遣することもしなかった。その後の4カ月間、調査や情報収集に手を尽くしたとは思えない。

グローバル化が進み、スポーツでも情報は貴重な武器になる。欧州を中心としたサッカー市場に目を配りつつ、情報を集める態勢やネットワークづくりが不可欠だ。今回のようなリスクがあることを、協会は常に想定しておく必要がある。

監督解任の影響は大きい。

W杯予選に向けて貴重な強化の場だったアジアカップ直後の監督交代で、チームづくりは振り出しに戻る。

そもそも、昨夏のW杯ブラジル大会で惨敗した検証も十分にされないまま、監督に迎えられたのがアギーレ氏だった。

いったんそこまで立ち返って、後任監督の人選や契約交渉を進めるべきだろう。

疑惑発覚後の対応について、大仁会長は自身を含めた役員や担当者の処分を協会理事会にはかる、と明かした。

そうであれば、選任過程やその後の対応策を細かく検証し、可能な限り明らかにすべきだ。その上で、協会の態勢を根本から見直し、今後の教訓として生かしてほしい。

毎日新聞 2015年02月05日

アギーレ氏解任 「灰色監督」は不適任だ

遅きに失した感はある。だが、勝敗を不正に操作する八百長行為が世界のサッカー界をむしばんでいる状況の中で、日本は疑惑を含め「不正には厳しく臨む」というメッセージを国内外に向けて発信することになったのではないか。

読売新聞 2015年02月05日

アギーレ氏解任 日本協会に選択肢はなかった

指揮官が八百長疑惑を抱えていては、チームに悪影響が及ぶ。解任は当然だろう。

日本サッカー協会が、日本代表のハビエル・アギーレ監督との契約を解除した。就任から半年足らずでの異例の解任である。

スペインの裁判所が、八百長疑惑に関する検察当局からの訴追を受理したことを受けた決定だ。アギーレ氏は「やむを得ない」と解任に応じたという。

今後は予審判事が、起訴するかどうかを審理する。アギーレ氏が出頭を命じられることもある。監督にとどまったままでは、日本代表の指揮に支障が生じかねない。疑惑は、選手と監督が信頼関係を築く上でも障害となる。

6月には、2018年ワールドカップ(W杯)のアジア予選が始まる。日本代表の重要な試合を前に、日本協会としては、騒動の早期収拾が必要だった。

アギーレ氏が八百長に手を染めたかどうかにかかわらず、解任しか選択肢はなかったと言える。

欧州など世界のサッカー界では、八百長疑惑が相次いでいる。アギーレ氏を招聘しょうへいする際、日本協会による身辺調査が甘かったと言わざるを得ない。

問題となっているのは、スペイン1部リーグの11年5月の試合だ。アギーレ監督率いるサラゴサが勝利し、1部残留を決めた。

この試合で、サラゴサ側から相手チームに1億円以上の現金が渡ったとされ、41人が訴追された。アギーレ氏の口座には、サラゴサ幹部から約1100万円が振り込まれ、八百長の報酬として相手側に流れたとみられている。

アギーレ氏は、一貫して疑惑を否定した。だが、昨年末の記者会見で、金の流れの真偽を問われると、「詳細は司法当局に話したい」と説明を避けた。核心部分について、口をつぐんだことが、疑惑を深める結果となった。

日本協会は、1月のアジア杯の指揮をアギーレ氏に委ねた。裁判所の対応が不透明な段階で契約を解除すれば、アギーレ氏側から訴訟を起こされる事態などを懸念したのだろう。

連覇を目指したアジア杯は、ベスト8止まりだった。不本意な結果に終わったことで、日本協会としては、解任に踏み切りやすくなったとも言えよう。

今回の問題は、外国人監督を招くリスクを浮き彫りにした。後任の人選を急がねばならない日本協会には、候補者のより入念な調査も求められる。

産経新聞 2015年02月04日

アギーレ監督解任 新体制で信頼を取り戻せ

解任の決断は当然だろう。サッカーの日本代表は、少年の夢にふさわしい憧れの存在であらねばならない。代表監督が八百長疑惑にさらされたままで、納得のいく応援を得ることは難しい。

一日も早く、万全の新体制を立ち上げて信頼を取り戻してほしい。

日本サッカー協会は、ハビエル・アギーレ代表監督を解任した。スペイン検察当局の告発が受理されたことを受けての決断だ。過去に成績不振や健康問題で代表監督が去った例はあるが、捜査が理由の解任は前代未聞だ。

協会の大仁邦弥会長は解任の理由をアギーレ氏の八百長関与ではなく、これから本格化する捜査がワールドカップ予選などの日程と並行して行われるリスクを排除するため、とした。

取り調べと両立できるほど、代表監督の仕事は甘いものではあるまい。判断は妥当である。ただしこの事態は十分に予想できた。協会の対応に問題はなかったか。

疑惑の試合は、アギーレ氏がスペインリーグのサラゴサ監督時代、1部残留を決めた試合で不可解な金銭の動きがあったとされるものだ。検察当局によれば、同氏の銀行口座に不自然な大金の出し入れが記載されていた。

アギーレ氏は一貫して「汚点はない」と疑惑を否定したが、金銭授受については「司法当局に答える」として口をつぐんできた。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2081/