子育てビジョン 財源論を欠いて実現できるか

毎日新聞 2010年02月04日

子育てビジョン 幼保一元化に踏み込め

子ども手当だけでは足りない。保育所の待機児童解消、安心して子どもを産み育てられる職場づくりを求める声は大きい。鳩山政権の「子ども・子育てビジョン」はそうした期待に応えることができるだろうか。

5年間で認可保育所の定員を計26万人増、延長保育を17万人増、休日保育を5万人増とするほか、小学1~3年生が対象の児童クラブの定員も30万人増、認定こども園も358カ所から2000カ所以上に増やす--などがビジョンの内容だ。

市町村の保育所の整備は年々進んでいるが、どれだけ整備しても待機児童が増える状況が続いている。長引く不況で家計が苦しくなり働かざるを得なくなった主婦が増えていることや、保育所の整備によって潜在的な就労意欲が掘り起こされているためという。特に3歳未満の乳幼児の保育ニーズは高く、現在の待機児童約2万5000人のうち約8割を占めている。ビジョンは3歳未満の子の4人に1人しか利用できない現状を、3人に1人が利用できるようにすることを目指している。財源は示されなかったが、十分な予算措置をしなければ絵に描いた餅になることは言うまでもない。

待機児童は一部の地域に偏在しており、少子化の進展によってはいずれ解消するとの見方もある。制度を抜本的に変え、建物の新設などハード面に過剰な予算を投入するよりも、今ある制度や資源を有効活用することをまず考えるべきだ。実際、幼稚園の定員割れは進んでおり、小中学校の空き教室も増えている。

06年に制定された「認定こども園」は就学前の子どもの教育と保育を一体的に行うもので、非効率な利用状況の改善が期待されたが、思ったほど増えていない。乳児を預かるには専用のトイレやもく浴の設備、調乳・離乳食などに対応した給食設備などが必要だが、予算措置が不十分であることが原因といわれる。幼稚園と保育所では職員の資格や勤務時間が異なることなどもネックになっている。さらには文部科学省と厚生労働省に族議員もからんだ縄張り争いが長年にわたり壁を作ってきた。

政権交代によってしがらみや規制を排除できる環境が整った今こそ、幼保一元化へ大胆に踏み出すべきだ。夜間や病気などの緊急時の対応も重要だ。看護師資格を持ちながら離職している人は地域に大勢いる。24時間体制で運営している高齢者や障害者福祉の事業所もある。さまざまな資源の活用を検討する価値はないだろうか。高齢者と乳幼児が一緒に過ごす小規模多機能型のデイサービスだってある。管轄する省が違うだけで子どもを分離して壁を作っている理由はもはやないのではないか。

読売新聞 2010年02月01日

子育てビジョン 財源論を欠いて実現できるか

鳩山政権が「子ども・子育てビジョン」をまとめた。政権交代後に初めて打ち出す、包括的な子育て支援策である。

正式には少子化対策基本法に基づく「大綱」だが、あえて堅い名称を避けた。少子化対策と呼ぶより、子どもを中心とした家族全体の支援策であると政府は強調している。

保育所定員を年に5万人ペースで増やす、といった今後5年間の数値目標を掲げ、意気込みは感じられる内容だ。

鳩山政権は子ども手当の創設をマニフェスト(政権公約)の柱にすえ、大規模な現金支給の実現に力を注いできた。

だが、子育て家庭が求めているのはお金だけではない。延長保育や支援拠点の拡充など行政サービスも重要である。今回のビジョンで、鳩山政権はようやく「両輪整備」に動き出したと言えよう。

ただし、自公政権でも内閣が替わるたびに、新しい少子化対策や子育てプランが何度も打ち出されてきた。

それらが子育て家庭のニーズを満たせなかったのは、財源の裏付けを欠いていたからだ。

今回のビジョンはどうか。必要となる追加支出は年間1・6兆円と試算されているが、財源がやはり明確ではない。

これも予算の無駄を見直し、組み替えることで捻出(ねんしゅつ)するというのだろうか。だとすれば、新ビジョンに盛られた施策の実現には疑問符を付けざるを得ない。

鳩山政権は2011年度から年5・3兆円を投じて、子ども手当を完全実施する、との方針を変えていない。

これに固執した場合、まずその財源確保だけで難航し、とても新ビジョンに回す予算は出てこないのではないか。むしろ、しわ寄せを受ける懸念すらある。

仮に子ども手当の設計や優先順位を見直すなら、新ビジョンの実現性は高まるだろう。その場合でもやはり、無駄減らしと予算の組み替えだけで必要な財源を得るのは容易でない。

少子化対策をはじめ社会保障施策の財源は、現行の消費税を福祉目的のみに使う「社会保障税」とし、税率を引き上げることできっちりと確保すべきだ。

財源論を欠いたままでは、どんなに意欲的な少子化対策も、これまで同様、絵に描いた餅にしか見えない。

社会保障施策の優先順位を再検討し、消費税の議論に早急に着手すべきだろう。

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