スカイマーク 新たな挑戦に期待する

朝日新聞 2015年01月30日

スカイマーク 空の競争を立て直せ

国内航空3位のスカイマークが民事再生法の適用を申請した。日本航空と全日本空輸を中心とする体制に風穴を開けようと、政府の後押しも得て参入したが、20年弱での挫折である。

民間投資会社の支援で運航を続けながら、大手2社との業務提携も視野に再建を目指すという。航空会社にとって安全の徹底は最低限の責任だ。関係者全員が肝に銘じてほしい。

格安航空会社(LCC)が台頭するなかで、スカイマークが売りにしてきた「安さ」が強みを失いつつあった。その打開策としてもくろんだ国際線への進出は頓挫し、航空機を納めるはずだった欧エアバス社とトラブルに陥った。経営を主導してきた西久保慎一社長の退任は当然だろう。まずは足元を固め、戦略を練り直してほしい。

スカイマークの動向とともに気がかりなのは、わが国の国内航空の競争の行方である。

スカイマークなどの参入で価格(運賃)競争がやっと本格化した路線は少なくない。航空会社にとってドル箱でもある羽田空港の発着路線で、大手2社以外の「第3極」を維持・拡大していけるかがカギになる。

スカイマークと同様に羽田便に参入した地域航空3社は、いずれも単独での経営を断念し、全日空から出資を受けている。LCCが少しずつ力をつけてきているが、大手2社のグループ企業が中心だ。

国土交通省が進めてきた航空分野の自由化は大原則だ。ただ、その結果が寡占では利用者利益の実現が怪しくなる。大手2強と羽田一極集中という国内航空の特殊性を踏まえ、どうかじ取りするのか。国交省の役割と責任は小さくない。

その際のキーワードは「透明性」だろう。関係業界だけでなく国民の納得を得るには、政策判断の過程と理由を明らかにすることが欠かせない。

国交省は自らの姿勢を省みるべきだ。スカイマークを巡っても、日航との提携方針を打ち出した際に太田国交相が「厳しく判断する」と語り、全日空を巻き込む方向に事実上誘導した。

民主党政権のもとで破綻(はたん)しながら劇的な再生をとげた日航に対しては、かつて蜜月関係にあった自民党の厳しい姿勢が目につく。そんな政治状況への配慮がなかったと言い切れるかどうか。日航だけとの提携が公平な競争を妨げると考えたのなら、きちんと説明するべきだ。

スカイマークとともに頓挫した空の競争を立て直すには、国交省が「政治」との関係を見直すことが出発点となる。

毎日新聞 2015年01月30日

スカイマーク 新たな挑戦に期待する

国内航空3位のスカイマークが経営破綻した。民事再生法のもとで支援先を探し、再建を目指す構えだ。大手による寡占状態に風穴を開ける新参者として期待された同社だっただけに、残念な結果である。

読売新聞 2015年01月30日

スカイマーク 強引な経営手法が招いた破綻

強引な拡大路線が招いた破綻劇と言えよう。

国内航空会社3位のスカイマークが、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、受理された。

今後は裁判所の管理下で、経営再建を目指す。コスト削減のため路線や便数を絞り込み、運航を継続していく方針という。

突然の経営破綻だけに、社内の動揺も大きいだろう。現場の混乱を防ぎ、安全運航に万全を期さなければならない。

スカイマークは、独立系航空会社として1998年に就航した。全日本空輸と日本航空の2強に対抗する「第3極」を育て、競争を促進する。こうした政府の航空自由化政策に沿った設立だった。

「大手の半額」という低料金を売り物に注目されたが、値下げ競争で収益は低迷した。

2004年にIT企業創業者の西久保慎一氏が社長に就任し、業績を盛り返したものの、格安航空会社(LCC)の相次ぐ参入などで、再び苦境に立たされた。

LCCとの差別化を狙った座席の広い中型機への切り替えは、乗客数の伸び悩みで裏目に出た。

国際線への参入のため一括契約したエアバスの超大型機6機の購入も、支払いのメドが立たなくなり、7億ドル(830億円)の違約金を請求される事態となった。

6機の価格は、年間売上高の2倍と巨額だった。ワンマンとも評される西久保氏ならではのトップダウンの判断だったが、見通しの甘さは否めまい。

当面は、国内の投資ファンドが資金繰りなどを支える。だが、本格的な再建には、他の航空会社の協力が欠かせない。

スカイマークは、羽田空港に36の発着枠を持つ。乗客の多い「ドル箱路線」の増便が期待できることから、全日空や日航に加え、海外勢がスカイマーク支援に名乗りを上げる可能性もあろう。

ブランド力に勝る大手と、安さが人気のLCCの狭間はざまで、スカイマークがどう活路を開くか。再生計画の実効性が試される。

スカイマーク破綻に、航空行政も有効な手を打てなかった。

経営改善策として、スカイマークは日航との共同運航を提案したが、公的支援で再生した日航の事業拡大につながることを理由に国土交通省は難色を示した。全日空を交えた共同運航などを模索するうちに、経営が行き詰まった。

競争促進による利便性向上と、航空会社の経営安定をいかに両立させていくか。航空行政の在り方を点検すべきだ。

産経新聞 2015年01月30日

スカイマーク破綻 安全と競争忘れず再生を

国内3位の航空会社、スカイマークが民事再生法の適用を申請し、経営破綻した。競争の激化による業績悪化に、大型航空機への投資失敗が追い打ちをかけた。

当面の運航は継続し、不採算路線の縮小などで再建を目指す上で、安全確保を最優先すべきなのは言うまでもない。

航空自由化の中、同社は平成8年に日本航空と全日本空輸に続く「第三極」として誕生した。市場競争を通じ、国内航空の運賃低下を促す一定の役割を果たした。

それだけに、再生にあたっては顧客の利便性を高め、航空市場の発展につながるよう、健全な競争を維持する視点が欠かせない。

経営責任を取って退任した筆頭株主の西久保慎一氏に代わり、社長に就いた有森正和氏は「当面の資金繰りにはめどがついている。運航に支障が出ることは一切ない」と会見で強調した。

だが、突然の経営破綻で社内外には動揺が広がっている。パイロットを含む社員らに対し、改めて安全運航の重要性を徹底するだけでなく、利用者にも運航状況などを丁寧に説明し、不安の払拭に努めてもらいたい。

スカイマークは航空市場への参入に際し、収益性が高い羽田空港の発着枠を優先的に割り当てられ、大手2社の寡占を切り崩す役割を期待された。料金の引き下げを先導し、現在の格安航空会社(LCC)が台頭する足がかりを築いたといえる。

LCCとの競争激化で、西久保氏は欧州エアバスからの大型航空機導入で巻き返しを考えたが、売上高の2倍を超える投資は円安などで撤回に追い込まれた。

大型機の解約をめぐり多額の賠償を請求されたことも、資金調達を圧迫したようだ。公共輸送機関として企業統治が機能しなかったとすれば、大きな問題である。

業績不振を打開するため、日本航空と全日空に求めていた共同運航について、引き続き協議するという。収益向上には、効率的に座席を販売するため提携が必要との判断だが、大手2社を含む健全な競争環境の確保が前提でなければなるまい。

同社以外の新興航空会社も競争に苦戦し、全日空の支援を受け入れた経緯がある。競争を通じ、多様なサービスや料金を提供するという、航空自由化の本分が改めて問われている。

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