ナチス・ドイツによるユダヤ人大量殺害の象徴であるアウシュビッツ強制収容所が第2次大戦末期、旧ソ連軍に解放されてから70年を迎えた。
ポーランド南部の現地では27日、記念式典が行われた。ガウク・ドイツ、オランド・フランス両大統領など欧米諸国の首脳・閣僚と約300人の元収容者らが出席し、犠牲者を追悼した。
戦後70年に「ホロコースト(大虐殺)を繰り返すな」という教訓を改めて確認する場となった。
ナチスは、ユダヤ人に対する差別政策を取り、大戦中、組織的な抹殺に乗り出した。殺害されたユダヤ人は約600万人とされる。アウシュビッツは、ガス室による「殺人工場」と言え、ユダヤ人ら110万人が亡くなった。
従来の戦争犯罪の域を超えた、言語を絶する残虐行為である。
ガウク氏は独連邦議会演説で、「ホロコーストに思いをはせることは、全ドイツ国民にとって重要であり続ける」と強調した。
西独、統一ドイツは、ナチスの蛮行への深い反省に基づき、人権尊重や民主主義の確立に努め、国際的地位を築いた。ガウク氏の言葉は、この基本姿勢を今後も堅持しようという呼びかけだろう。
世界では今なお、民族、宗教に根ざす紛争や過激派のテロが頻発している。今回の記念式典にも影を落としたのは残念だ。
ウクライナ紛争を巡って米欧と対立するロシアのプーチン大統領は、招待されなかったことを理由に、式典を欠席した。
安倍首相は中東歴訪中の19日、イスラエルのホロコースト記念館で演説した。「このような悲劇を二度と繰り返させない」との決意を表明し、「世界の平和と安定に貢献していく」と語った。
ナチスの迫害から逃れたユダヤ人約6000人に独断で日本通過ビザを発給し、命を救った外交官、杉原千畝の功績にも言及した。
一部の欧米メディアは、安倍首相を「歴史修正主義者」と問題視する。中国は、ホロコーストと旧日本軍の南京事件を同列に扱い、ナチスとイメージをだぶらせて日本批判を繰り返す。
首相の演説には、歴史に正面から向き合い、その教訓を重視する姿勢を示すことで、欧米の誤解を正し、中国の宣伝戦に対抗する狙いもあったのだろう。
日本は、過去への反省、戦後の平和国家としての歩み、そして将来にわたり、国際社会と協調するという明確なメッセージを海外に発信していくことが大切だ。
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