認知症国家戦略 「5人に1人」時代が来る

毎日新聞 2015年01月25日

認知症国家戦略 「5人に1人」時代が来る

認知症の人が2025年に最大で730万人になるという推計を厚生労働省の研究班が出した。65歳以上の5人に1人である。

産経新聞 2015年01月28日

認知症戦略 着実な実行につなげたい

もはや認知症は誰もが当事者となり得る「国民病」であり、総合的な対策が急がれる。

安倍晋三政権が省庁を横断してまとめた国家戦略は、取り組みに向けた政府の強い決意を示すものだ。病気に対する国民の理解を深める大きな契機ともなろう。

国家戦略は「住み慣れた地域で、自分らしく暮らし続けられる社会」を目指している。その理念はもっともだ。しかし、課題を羅列しただけで終わったのでは意味がない。具体的政策として着実に展開する必要がある。

最も評価したいのは、患者本人や家族の視点を重視した点だ。発症間もない段階でのニーズを把握し、政策に反映していくという。地域でともに暮らすには当事者の声は不可欠である。企画・立案から評価に至るすべての段階で、専門家と同じ立場で議論に参加できるように求めたい。

厚生労働省の推計では、団塊世代が75歳以上となる平成37年には高齢者の5人に1人が患者になるという。若年性認知症に苦しむ人も多く、極めて深刻な状況だ。

だが、発症段階で適切な治療をすれば症状を一時的に抑えたり、遅らせたりできる。物忘れなどの予兆がありながら、誰に相談すべきか分からず対応が遅れる人は少なくない。自覚しても将来への不安から受診を避ける人もいる。

根治薬の開発に力を入れるのはもちろんだが、まずは早期診断・対応に結びつく支援態勢を築くことが大切だ。

国家戦略は、医師の研修受講者目標を引き上げただけでなく、歯科医や薬剤師や認知症サポーターの養成も充実させるとした。人材育成を加速してもらいたい。

同時に求めたいのが、気軽に相談できる雰囲気作りだ。専門家がサポートする「初期集中支援チーム」を30年度に全市町村で実施するともしているが、自治体任せにせず、政府が責任を持って実現させてゆくことが肝要だ。

重症化した人や家族への支援強化も忘れてはならない。老老介護や働き盛りの介護離職も目立つ。一時預かりサービスや、家族が悩みを打ち明けられる態勢をさらに整えてゆきたい。

患者が住み慣れた地域で暮らし続けるには、地域住民や職場の理解が不可欠だ。患者の尊厳を保ちながら、さりげなく支える。認知症の知識の普及も急務である。

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