通常国会召集 言論の府として再興を

朝日新聞 2015年01月27日

国会と「70年」 大いに論じよ歴史認識

第3次安倍内閣が発足してから初の本格論戦の舞台となる通常国会が、きのう開会した。

成長戦略や安全保障関連など、重要法案が目白押しの国会なのに、安倍首相の演説は来月まで先送りされた。肩すかし感は否めない。

ところが開会前日に、首相から聞き流すことができない発言が出てきた。戦後70年の「安倍談話」についてである。

首相はこのところ、戦後50年の「村山談話」や60年の「小泉談話」を「全体として受け継いでいく」と繰り返している。

その村山談話の根幹は「植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」と率直に認め、「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明している点にある。

首相はおとといのNHK番組で、司会者から「植民地支配や侵略という文言を引き継ぐか」と問われ、こう答えた。

「いままで重ねてきた文言を使うかどうかでなく、安倍政権としてこの70年をどう考えているかという観点から出したい」 「今までのスタイルを下敷きとして書くことになれば、『使った言葉を使わなかった』『新しい言葉が入った』というこまごまとした議論になっていく」

驚くべき発言だ。

植民地支配や侵略というかつての日本の行為を明確に認めなければ、村山談話を全体として受け継いだことにはならない。同じ番組で公明党の山口代表が「(談話の継承が)近隣諸国や国際社会にちゃんと伝わる表現でないと意味がない」と語った通りだ。

こうした表現をめぐる議論を、「こまごまとしたこと」と片づけるわけにはいかない。安倍談話の内容は、中国や韓国だけでなく、東アジアの安定を求める欧米諸国も注目しているからだ。

最近は封印しているが、安倍氏は村山談話の見直しに意欲を示していた。だが、村山談話はその後のすべての首相が継承し、国際社会でも高い評価が定着している日本外交の基礎である。いかに国会で圧倒的多数を占める政権とて、これをあっさりと覆すことはできない。

「未来志向」の談話にしたいという思いはわかるにせよ、首相の発言を聞くにつけ、内外からの批判をかわしつつ、村山談話を骨抜きにするための狭き道筋をひたすら探っているように思えてならない。

談話そのものは国会で審議するものではない。だが、背景にある首相の歴史認識について、国会は大いに論じるべきだ。

毎日新聞 2015年01月27日

通常国会召集 言論の府として再興を

第189通常国会が召集された。第3次安倍内閣が発足し、民主党の新代表に岡田克也氏が就いてから、初の議論の場となる。

読売新聞 2015年01月27日

通常国会召集 「改革断行」に値する論戦を

安倍首相が「改革断行国会」と名付ける通常国会が召集された。

経済再生や安全保障体制の強化、医療・農業・雇用の改革など、多くの政策課題にどう取り組むべきか。与野党は、建設的で深みのある論戦を展開してもらいたい。

麻生財務相が今年度補正予算案に関する財政演説を行った。27日に各党の代表質問に入る。

首相は、今年も「経済最優先」の方針を掲げる。来週中に補正予算案を成立させたうえ、越年編成となった来年度予算案を2月中旬に国会に提出し、3月末までに成立させることを目指している。

景気回復への足踏み状況を早期に脱するため、予算案の成立を極力急ぐのは当然である。

予算案審議では、経済政策「アベノミクス」に加え、シリアでの邦人人質事件や戦後70年の安倍首相談話などがテーマとなろう。

人質事件では自民、民主両党が、首相、官房長官、外相の国会出席に関して、事件解決を優先することで一致した。適切な対応だ。

問題なのは、一部野党が、首相の中東訪問が事件の要因であるかのような批判をしていることだ。2億ドルの支援は人道援助が中心で国際社会も高く評価している。

非難すべきは、過激派組織「イスラム国」側である。与野党は党利党略を排し、結束する姿を海外に発信することが重要だ。

安倍談話に関し、首相が、過去の植民地支配や侵略に対する反省やおびなど、戦後50年の村山談話の表現にこだわらないととれる考えを示したのには疑問が残る。首相の真意は不明だが、野党は反発し、公明党も懸念を示した。

戦後の平和国家としての歩みや今後の世界平和への積極的な貢献に言及し、未来志向の戦後70年談話とすることに異論はない。

だが、歴代内閣の歴史認識を基本的に踏襲しないと、国際社会に誤ったメッセージを送ることにもなろう。首相には、発言に細心の注意を払うことが求められる。

通常国会では、昨秋の臨時国会で廃案となった労働者派遣法改正案、女性活躍推進法案など100本超の法案審議が予定される。

焦点は、集団的自衛権の行使を容認した新政府見解を反映する安全保障法制の整備である。

日米同盟と国際連携を強化し、様々な危機への抑止力を高める新法制の制定は急務である。より幅広い合意形成を図りたい。

政府・与党は、その必要性を丁寧に説明し、民主、維新両党など野党との連携を模索すべきだ。

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