大相撲の歴史に新たな足跡が刻まれた。横綱白鵬が初場所で33度目の優勝を飾った。「昭和の大横綱」大鵬の32度を上回る歴代最多記録である。偉業を称えたい。
今場所は、相手に攻め込まれる危うい一番が目立った。それでも、13日目に早々と優勝を決めた。得意の右四つではない苦しい体勢になっても負けないのが、白鵬の真骨頂と言えよう。
優勝決定後、「うれしい」と語り、全勝に向けて「引き締めていきたい」と前を見据えた。
2000年に15歳でモンゴルから来日した際には、体重60キロそこそこだった。そのやせた少年が大横綱に成長できたのは、基本に忠実な稽古を積み重ねた結果だ。
大鵬と、69連勝を成し遂げた双葉山を敬愛する。大鵬の納谷幸喜さんを「角界の父」と慕い、納谷さんの生前には横綱としての心構えなどのアドバイスを受けた。
日本相撲協会は、10年の野球賭博事件、11年の八百長問題など不祥事に揺れ続けた。信頼が地に落ちた時期に、一人横綱として土俵を支えた白鵬の功績は大きい。07年に横綱に昇進して以降、休場が一度もないのは立派である。
強力なライバルがいないことも、優勝回数を伸ばせた大きな要因だ。現在、29歳。円熟味を増す取り口を見る限り、しばらくは白鵬の時代が続くのではないか。
今後は、歴史に残る横綱としての品格が、より求められる。体勢を崩してまでの張り手や、勝負が決まった後のダメ押しなど、時として見られる感情的な行為は慎む必要がある。
今場所は満員御礼が続き、天覧相撲も実現した。大相撲人気は確実に回復している。土俵をより盛り上げるには、白鵬を脅かす日本人力士の台頭が待たれる。
白鵬は以前、「親方になって弟子を育てたい」と、引退後の思いを語っている。
相撲協会には、日本国籍を有した力士しか親方になれないという内部規則がある。白鵬は、日本への帰化について、態度を明らかにしていない。帰化に消極的だとの見方もある。
北の湖理事長は「昔から守ってきた。ここは譲れない」と、規則の見直しを否定する。
3横綱全員がモンゴル国籍という現状の中、技量に優れた横綱が引退後、帰化せずに角界を去れば、貴重な指導者を失うことになる。功績が大きい横綱には、国籍を問わず一代年寄を与えるなど、柔軟な対応も検討すべきだろう。
2013年3月の春場所終了時点の優勝回数ベスト5
1位:大鵬32回
2位:千代の富士31回
3位:朝青龍25回
4位:白鵬24回、北の湖24回
取り消す白鵬の優勝記録
2013年度:
夏・・・全勝
名古屋・・・13勝2敗
秋・・・14勝1敗
初・・・14勝1敗
2014年度:
夏・・・14勝1敗
名古屋・・・13勝2敗
秋・・・14勝1敗
九州・・・14勝1敗
初・・・全勝