「イスラム国」人質 早期解放に全力挙げよ

朝日新聞 2015年01月26日

「イスラム国」人質事件 暴挙に立ち向かう連携を

非道と言うほかない。

中東の過激派組織「イスラム国」が、拘束している日本人に関するものとする新たな画像と音声をネット上に公表した。

人質の後藤健二さんが写真を手にもっており、英語のメッセージが流れている。写真には、もう一人の人質、湯川遥菜(はるな)さんが殺害されたとみられる画像が写っていた。

安倍首相はきのうのNHK番組で、「残念ながら、今の時点で信憑性(しんぴょうせい)は高いと言わざるを得ない状況だ」と語った。

湯川さんの安否について確実なことはまだわかっていない。だが、過激派が予告通りに殺害を強行したのだとしたら、心の底から怒りを禁じ得ない。

「イスラム国」はこれまでもシリアやイラク北部で少数派の異教徒を殺害、奴隷化したり、米国人らを誘拐して殺したりと残虐の限りを尽くしてきた。

こんな言葉が届く相手ではないとわかりつつも、あえて言わねばならない。

これ以上、命を奪うな。

どの国籍であろうが、どの民族であろうが、どんな宗教を信じていようが、人の命を一方的に奪うことは許されない。

ましてや、殺害予告で家族らを不安の底に突き落とし、画像の公表で犯行を世界に誇示しようとしているのなら、卑劣であり、言語道断である。

民族や宗教がからみあう中東地域では、第2次大戦後も繰り返される紛争で数えきれぬ人命が奪われてきた。

そしていまでも「イスラム国」や、そのほかの武装勢力や、政府軍も入り乱れた戦闘行為などで、たくさんの罪のない市民が犠牲になっている。

現地のこうした窮状に、多くの日本人も心を痛めている。安倍首相が最近表明した2億ドルの拠出は、周辺諸国への難民の「命をつなぐ支援」にほかならない。戦後日本が培ってきた平和主義に基づく、この地域の人々との協調の証しである。

黒装束の脅迫者が口にした「日本は十字軍への参加を志願した」などという言葉は、とんでもない言いがかりだ。

後藤さんは、紛争地の実情を取材し、世界に伝えようとしたジャーナリストだ。湯川さんも人々に危害を与えようとシリアに入ったわけではなかろう。

2人とも、死の恐怖にさらされなければならない理由は全くない。イスラムの名をかたった理不尽な拘束と脅迫を、世界が厳しく指弾している。

この事件はもはや、日本と「イスラム国」との問題にとどまらなくなった。

脅迫者らは人質解放の条件を、身代金ではなく、ヨルダンに収監されている仲間の釈放に変えたとしているからだ。

ヨルダンの首都アンマンで05年に起きた爆破テロの実行犯として、死刑判決を受けて収監されている。イラクの混乱が隣国ヨルダンにも拡散した衝撃を内外に与えた事件であり、釈放は簡単ではあるまい。

この要求には、「イスラム国」への空爆作戦に加わっているヨルダンに揺さぶりをかける意図もうかがわれる。

アンマンには日本政府が現地対策本部を置いており、人質事件について両政府が緊密に協議してきただけに、その分断を狙っているのかもしれない。

両政府にとって立場は極めて難しいが、テロ組織側の思惑に乗せられることなく、団結を保ちながら立ち向かうしかない。

ヨルダンに限らず、トルコやイラク、サウジアラビアを含む湾岸諸国など周辺の国々との連携を深める努力も欠かせない。

この地域には、部族のつながり、人の流れ、宗教上の事情などを通じて、「イスラム国」や、その関係者らにアクセスできる様々なルートがある。あらゆる可能性を探りつつ、事態の打開を図る必要がある。

中東・北アフリカ地域では、今後も日本人がテロや事件に巻き込まれることが予想される。このような事態に備えるためにも、日ごろから周辺の国々と一定の深度の協力関係を築くことが中期的に求められる。

現時点ではとりわけ、「イスラム国」による脅威が深刻だが、その不安は地域を問わず、どの国も共有している。

民族や宗派間の憎悪をあおり、平和的な統治の秩序を破壊する組織は、アラブ諸国の政府にとって重大な懸案だ。

過激思想に触発された者たちによるテロの脅威に直面した欧米社会にとっても、「イスラム国」への対処は喫緊の難題だ。

日本人の人質事件を注視する世界各国のまなざしには、これからの世界の安全をどう守るかをめぐる不安がある。

アラブ、欧米を中心にした反過激派の連帯の中で、日本も多様な取り組みを重ねたい。多くの国を巻き込んだ協力態勢の中で、捕らわれた人たちが元気な姿で戻って来ることを望む。

毎日新聞 2015年01月29日

日本人人質 「24時間」の厳しい壁

多くの日本人は胸がつぶれるような思いだったろう。オレンジ色の囚人服を着せられ、太い鎖つきの手錠をはめられた男性が27日深夜、インターネット上で「私には24時間しか残されていない」と訴えた。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)に拘束された後藤健二さんの映像である。

読売新聞 2015年01月24日

邦人人質事件 解放へあらゆる手段を尽くせ

事態は緊迫している。邦人2人の救出のため、政府は、あらゆる外交手段を尽くすべきだ。

中東のイスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループが、人質2人の身代金2億ドルの支払期限として一方的に設定した「72時間」が、23日午後に経過した。

湯川遥菜さんと後藤健二さんの安否は依然、不明である。

安倍首相は閣僚懇談会で、「内閣を挙げて早期解放に全力で取り組む」ことを改めて指示した。外務、防衛両省や警察庁が連携し、対処しなければならない。

2人はシリアで拘束されている模様だ。イスラム国の支配地域は、米国などの空爆を受けているうえ、シリア政府の統治が及ばず、治安が極めて悪い。イスラム国との直接の接触は容易でない。

シリア国内で一定の影響力を持つ有力部族や反政府組織、宗教指導者らに協力を求めて、交渉ルートを確保し、解放を粘り強く働きかける必要がある。

2004年にイラクで日本人3人が武装グループに拘束された際は、宗教指導者らの仲介により、無事解放されている。

シリアと国境を接するトルコとの緊密な協力も重要だ。

トルコ政府は、シリアの反体制派武装組織とのパイプがある。昨年9月、イラクでイスラム国に拘束されていたトルコ領事館職員ら49人の解放に成功している。

トルコのエルドアン大統領が安倍首相に対し、全面的な支援を約束しているのは心強い。

政府が現地対策本部を置くヨルダンは、多数のシリア難民を受け入れており、内情に詳しい。

米英両国もイスラム国に関する独自の機密情報を持つ。

各国から提供される様々な情報を総合的に分析し、イスラム国との交渉などに生かす。そうした巧みな外交戦術が求められる。

日本の中東諸国に対する2億ドル拠出について、イスラム国は自らに敵対する行為と決めつけたが、実際は、難民向け食料やインフラ整備など非軍事分野の支援だ。

外務省がホームページに、支援内容を紹介する英語とアラビア語のメッセージを掲載したのは適切である。海外メディアなどによる情報発信も積極的に行いたい。

ジャーナリストの後藤さんの母親は記者会見で、「健二は中立な立場で戦争報道をしてきた。イスラム国の敵ではない」と語り、早期解放を呼びかけた。

こうした後藤さんの立場や活動を海外に伝えることも大切だ。

産経新聞 2015年01月29日

イスラム国 あまりにも卑劣で残忍だ

これほど卑劣で残忍な犯行があるか。強い憤りとともに、過激組織「イスラム国」の蛮行を強く非難する。

イスラム国に拘束されているジャーナリスト、後藤健二さんとみられる新たな画像がネット上に公開された。後藤さんらしき英語による音声は、「私が生きるために残された時間は24時間しかない」と告げ、ヨルダンで収監中の死刑囚との交換を求めている。

手錠がはめられた両手には、イスラム国に捕らわれているヨルダン軍パイロットの写真があった。音声は「パイロットに残された時間はもっと少ない」とも述べ、「ボールは今、ヨルダン側のコートにある」と訴えた。

後藤さんは脅され、用意された文書を読まされているのだろう。生命の時間に期限をつける脅迫がどれだけ家族や関係者に恐怖を与えるか。その文書を本人に読ませる残虐さはどうだ。

朝日新聞 2015年01月21日

イスラム国 許しがたい蛮行だ

過激派組織「イスラム国」が、その凶暴な刃を日本人にも向けた。

日本人2人を人質とし、72時間以内に2億ドルを支払わなければ殺害すると脅迫するビデオをインターネットで公開した。

人命の重みを顧みず、国際社会に恐怖を与えて優位に立とうとするふるまいは、身勝手で、許されるものではない。「イスラム国」はすみやかに2人を解放すべきだ。

「イスラム国」は昨年6月、カリフ(預言者ムハンマドの後継者)制国家の樹立を一方的に宣言し、シリアとイラクで勢力を広げた。昨年来、欧米人らを拘束し、一部を殺害し、映像をネット上で公開してきた。被害者はジャーナリスト、援助活動家など、現地情勢を憂慮する民間人だった。

今回の事態は、「イスラム国」の脅威が遠い世界の出来事ではなく、日本と直接つながりがあることを如実に示した。

ビデオの中で脅迫者は、中東訪問中の安倍首相が2億ドルを「イスラム国」対策として避難民支援にあてると表明したことに矛先を向けた。首相の中東訪問のタイミングを狙った脅しとみられる。

しかし、日本からの医療や食料の提供は、住んでいた街や国を追われる人たちが激増するなかで、不可欠の人道的な援助である。「イスラム国」に向けた攻撃ではなく、脅迫者たちの批判は筋違いだ。

安倍首相は記者会見で「許し難いテロ行為に強い憤りを覚える」と述べ、中東地域の平和や安定を取り戻すための非軍事の支援を続けていく意思を強調した。毅然(きぜん)として向き合っていくべきだろう。

「イスラム国」は暴力的な戦闘行為を続けることを存立基盤としており、その統治システムも判然としない。今までの国際社会のルールも通用しない。そんな相手と対峙(たいじ)することは容易ではないだろう。

一方、国際協調なしにテロ行為には対処できない。日本政府は関係各国と連携して情報を集め、2人の救出に向け粘り強く交渉していく必要がある。

2人が拘束された経緯ははっきりしないが、どんな事情で現地にいたにせよ、人命の重みを最優先に対応すべきだ。

米国などが実施する「イスラム国」の空爆に日本は関与せず、人々の生命と生活を守ることに焦点をあててきた。

これまで培ってきた中東地域との協力関係もある。「イスラム国」が暴挙を重ねることのないよう伝えていくしかない。

毎日新聞 2015年01月26日

日本人人質殺害 許せない冷血の所業だ

冷血の所業と言うしかない。イスラム過激派「イスラム国」とみられる組織の人質として殺害予告を受けていた湯川遥菜さんの遺体とされる写真が24日、インターネット上で公開された。もう一人の人質、後藤健二さんが遺体の写真を手に持って、「安倍(晋三首相)がハルナ(湯川さん)を殺した」との声明を読み上げ、新たな取引を日本政府に提示したのである。

読売新聞 2015年01月23日

邦人人質事件 国際連携で救出策を探りたい

卑劣な殺害予告声明が指定した期限まで残された時間は短いが、関係国との連携により、人質救出の道を探りたい。

過激派組織「イスラム国」とみられるグループによる人質事件で、政府は、邦人2人の解放に向けて、情報収集や犯人との接触に全力を挙げている。

安倍首相や岸田外相は会談や電話で、欧米や中東の各国首脳・外相への協力要請を重ねてきた。

殺害予告声明の身代金支払いの期限は23日午後とされる。様々な外交ルートを駆使し、イスラム国に近い仲介者などを通じて、犯人と交渉する必要がある。

世界が注目するのが、2億ドル(約236億円)という巨額の身代金要求への日本の対応だ。

日本は1977年、日本赤軍の日航機ハイジャック事件で、600万ドルの身代金を払い、国際社会から強く批判された。99年のキルギスでの邦人人質事件でも、身代金の支払いが取りざたされた。

日英両政府がロンドンで開いた外務・防衛閣僚会合(2プラス2)では、ファロン英国防相が「強く対応しないと、後々いろんな問題が出てくる」と述べ、毅然きぜんとした姿勢を貫くよう促した。

国連の報告書によると、イスラム国が最近1年間で得た身代金は3500万~4500万ドルとされる。今回の要求は、その5倍前後に上り、極めて高額である。

仮に日本が身代金を支払えば、テロリストの新たな活動資金に使われることになる。日本が脅迫に屈しやすい国だとみなされ、今後、世界中で日本人がテロの標的になりかねない。

気になるのは、安倍首相の中東歴訪がテロリストを刺激し、今回の事件を招いたかのような、的外れの政権批判が野党の一部などから出ていることだ。

首相の中東訪問は、各国との連携を深め、地域の平和と安定に貢献することが目的である。

イスラム国対策として表明した2億ドルの支援も、イラク国内の避難民や周辺国に流出した難民向けの食料、医療などの人道支援だ。「我々の女、子供を殺し、イスラム教徒の家を破壊する」との犯人側の主張は全く当たらない。

人質の1人は、紛争地で苦しむ女性や子供の報道に力を入れてきたジャーナリストの後藤健二さんだ。日本記者クラブは「『報道の自由』を脅かす」とし、2人の解放を求める声明を発表した。

政府は、欧米や中東のメディアを通じ、こうした事実を丁寧かつ繰り返し発信する必要がある。

産経新聞 2015年01月26日

人質殺害画像 卑劣な蛮行を許さない 対テロで国内外の結束強めよ

過激組織「イスラム国」に拘束されていた湯川遥菜さんが殺害されたようにみえる画像がインターネット上に投稿された。日本政府は画像の信憑(しんぴょう)性が高いことを明らかにしている。

殺害が事実だろうが、事実でなかろうが、人の命の価値をとことん軽んじる、到底許し難い、卑劣で残虐な蛮行だ。

強く抗議するとともに、拘束されているジャーナリスト、後藤健二さんの即時解放を求める。

憎むべきは、恐怖と暴力によって相手を屈服させようとするテロリズムである。

日本政府はテロと戦う国際社会と連携を深め、後藤さんの救出に全力をあげてほしい。

≪人質交換は容易でない≫

安倍晋三首相は改めて、「テロに屈することなく、国際社会と協力して世界の平和と安定に積極的に貢献する考えに変わりない。過激主義の流れを止めないといけない」と語った。この姿勢を堅持しなくてはならない。

イスラム国は湯川さんと後藤さんを拘束し、日本政府に身代金2億ドル(約236億円)を求めていた。24日深夜にネット上に投稿された画像では後藤さんが、湯川さんが殺害されたようにみえる写真を持たされていた。

流れる英語の音声は後藤さん自身のものとみられる。湯川さんが殺害されたと告げるとともに、ヨルダンに収監されているイラク人女性死刑囚「サジダ・リシャウィ」の釈放を求めた。

音声は「サジダを釈放すれば私は解放される」「いかに私の命を助けることが簡単なことか」などと伝えていた。これは後藤さんが脅迫され、用意された文章を読まされたと受け取るべきだろう。

女性死刑囚は多数の犠牲者を出した自爆テロの実行犯として死刑判決を受けたテロリストである。その釈放は容易ではない。

ご家族や関係者の悲痛な気持ちや心労は、いかばかりだろう。想像を絶する。

湯川さんは昨年8月にイスラム国に拘束されたとされる。半年に及ぶ長い監禁で、どれほど恐ろしい思いをしてきただろう。

湯川さんの父親は「本人でなければいいと思うが、非常に残念だ」と述べ、後藤さんについて「息子を心配して命がけで現地入りした。心苦しい」と案じた。

後藤さんの母、石堂順子さんは23日、都内で会見して息子の解放を訴え、出国の2週間前に後藤さんの子供が生まれたことを明かしていた。後藤さんの妻は「拘束されている知人を救出するため、何が何でもと飛んでいった」と説明していたのだという。

湯川さんの殺害は虚偽であってほしい。後藤さんを一刻も早く解放してほしい。

だが、相手はテロ集団である。良識や慈悲を求める説得、懇願のたぐいは一切、通用しない。

≪日本の役割も問われる≫

当初、イスラム国側から要求された2億ドルの身代金は、安倍首相が中東歴訪の際に、イスラム国対策に拠出を表明した額と同額だった。このことからか、首相の歴訪や演説が事件を誘発したとの発言が野党陣営などから相次いだ。

支援金拠出の中止や、首相の辞任に言及する声まであった。足を引っ張っている場合か。

一方で、米国のオバマ大統領は「後藤さんの即時解放を改めて要求する」とした上で「日本との結束」を強調し、日本の中東地域における「平和と経済開発への関与」を称賛した。

英国のキャメロン首相は「困難な局面にある日本国民と結束し、日本政府にできる限りの支援を続ける」と声明を発表した。豪州のアボット首相も「人質の家族や日本国民の心痛は想像もできない」とする声明を出した。

近隣のヨルダンやトルコも、日本政府に協力している。

イスラム国は、過去にも空爆停止の要求が入れられなかったなどとして、米国や英国のジャーナリストらを殺害した。フランスでは、イスラム教預言者を登場させた風刺画を掲載した週刊紙が過激組織のメンバーに銃撃された。

国際社会の過激主義との戦いには日本も応分の役目を果たさなくてはならない。テロに対峙(たいじ)するための法を整備する必要もある。

イスラム国はあくまでテロ集団である。イスラム世界を含む国際社会との連携を強化し、なんとか救出に結びつけてほしい。

毎日新聞 2015年01月25日

日本人人質 解放へ幅広い連帯を

家族や友人らは一秒一秒、身を削られる思いだろう。中東のイスラム過激派「イスラム国」とみられる組織は日本人人質2人の身代金支払いの期限として「72時間」と主張した。その期限が過ぎて1日たった24日、不気味な情報が流れている。

読売新聞 2015年01月22日

米一般教書演説 対テロで一層の指導力発揮を

国際テロの拡散と激化を阻止するため、米国は従来以上に指導力を発揮してもらいたい。

オバマ米大統領が一般教書演説で、イスラム過激派組織「イスラム国」について「広範な有志連合を率い、最終的に壊滅させる」と述べ、打倒への強い決意を表明した。

イラクやシリアの一部を支配するイスラム国や、アル・カーイダ系国際テロ組織の過激思想と暴力は、中東にとどまらず、パキスタンやフランスで悲劇を生んだ。

日本も、イスラム国とみられる組織に邦人2人を拘束され、巨額の身代金を要求されている。

オバマ氏は、米国主導の有志連合の空爆について「イスラム国の伸長は阻んでいるが、(壊滅には)時間がかかる」と認めた。さらに、イスラム国への武力行使を正式に容認する決議の採択を、共和党が多数を占める議会に要請した。

イスラム国の打倒へ、米国の決意と結束を示す狙いだろう。卑劣なテロの封じ込めには、米国のより踏み込んだ対応と、日欧など関係国の協調が欠かせない。

オバマ氏は、中国や北朝鮮による頻繁なサイバー攻撃を念頭に、「進化する脅威に対応する」とも強調した。サイバー防衛の強化には、国際社会の官民の英知と最先端技術の結集が重要だ。

アジア太平洋地域の貿易についてオバマ氏は、「中国でなく、我々がルールを作る」と語った。中国が自国主導の通商圏構築を目指す中、日米が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結の重要性を訴えたものだ。

そのため、通商一括交渉権(TPA)を大統領に付与する法案の早期成立を議会に求めた。成立しないと、TPP交渉全体が漂流しかねない。オバマ氏は、議会の説得に全力を挙げるべきである。

米国経済は堅調だ。オバマ氏は、景気拡大や財政赤字縮小などの実績を誇示した。経済格差を是正するため、最富裕層の資産課税強化と、中間層以下への減税も唱えた。残り2年となった政権の「遺産」とする思惑があろう。

共和党は強く反発している。来年の大統領選の前哨戦が活発化する中、党派対立が先鋭化する恐れがある。オバマ氏は、共和党の協力が得られない場合、議会手続きを経ず、大統領令などの権限を行使することも辞さない構えだ。

だが、党派対立が政治の停滞を招けば、失速気味の世界経済に悪影響を与えかねない。オバマ氏と共和党は、米国の国際的責任の重さを自覚し、行動してほしい。

産経新聞 2015年01月23日

日本人人質 無事解放に全力を挙げよ

家族や関係者の心労はいかばかりだろう。

過激組織「イスラム国」が日本人2人を殺害すると脅迫し、時間を区切って巨額の身代金を要求している。

卑劣で無法な犯罪である。2人の即時解放を求める。日本政府は2人を無事に取り戻すため、あらゆる努力を重ねてほしい。イスラム世界の指導者にも協力を仰ぎたい。

拘束されているジャーナリストの後藤健二さんは、主に紛争や貧困など厳しい環境にある子供たちの姿を、映像や著作、講演で伝え続けてきた。

西アフリカのシエラレオネを舞台に書いた「ダイヤモンドより平和がほしい」(汐文社)は、平成18年の産経児童出版文化賞でフジテレビ賞を受賞した。戦地取材のベテランでもある。

知人の湯川遥菜さんは、昨年8月にイスラム国に拘束されたとされる。以後の長期間、消息は不明だったが、後藤さんは「湯川さんを捜しに行く」と話していたという。2人の姿が確認されたのは、身代金要求の脅迫映像だった。

彼らが傷つけられることはあってはならない。

中東歴訪中だった安倍晋三首相は予定を一部変更して帰国し、陣頭指揮にあたっている。すでに近隣のヨルダン国王、トルコ大統領、エジプト大統領らと電話会談を行い、情報収集や早期解放に向けた協力を取り付けた。

特にトルコのエルドアン大統領とは首相就任後、公式に3回、非公式も含めると5回の会談を重ねてきた。そうした積極的な外交で得た関係性や人脈を、人質解放の一点に集中してほしい。

要求されている身代金は2億ドル(約236億円)だが、これを受け入れるわけにはいかない。テロに屈することは、新たなテロを誘発することになる。

2004年にイラクで日本人3人が過激組織に拘束された事件では、イラク・イスラム聖職者協会の仲介もあり、解放された。今回の事件でも、イスラム教指導者に積極的な介入を求めたい。

イスラム国やアルカーイダに代表される過激組織は、本来の平和を愛するイスラム教徒とはかけ離れた存在であるはずだ。

だからこそ、イスラム世界を挙げてこの蛮行を止め、人質救出に力を貸してほしい。日本政府も彼らに協力を求めるべきだ。

毎日新聞 2015年01月22日

オバマ演説 対テロへの強い指導力を

耳に心地よい言葉は並ぶが、実体には疑問が残る。そんな演説ではなかったか。米議会で一般教書演説を行ったオバマ大統領は、テロリストを追い詰め組織を解体することに強い意欲を表明した。過激派組織「イスラム国」が直前に日本人人質2人の殺害を予告しているだけに、心強く感じた日本人は多いだろう。大統領の意気込みは評価したい。

読売新聞 2015年01月21日

「イスラム国」 人質の殺害脅迫は許されない

安倍首相の中東歴訪に照準を合わせた、卑劣な脅迫である。断じて許すことはできない。

過激派組織「イスラム国」とみられる組織が、邦人2人の殺害を予告する映像をインターネット上で公開した。

人質解放の条件として、日本政府に対し、72時間以内に2億ドル(約236億円)の身代金を支払うよう要求している。2人は、湯川遥菜さんと、ジャーナリストの後藤健二さんとみられる。

湯川さんは昨年8月、シリア北部で写真を撮ろうとした際、イスラム国に拘束された。後藤さんは、湯川さん救出と取材のため、シリアに入国したとされる。

動画投稿サイトに登場したテロリストは、日本に対し、「イスラム国に対する十字軍に参加している。女、子供を殺し、イスラム教徒の家を破壊するために1億ドルを拠出した」と批判した。

「イスラム国拡大を防ぐ訓練費用」の1億ドル供与と合わせて、身代金額を算出したとしている。

身勝手で筋違いな要求だ。

安倍首相はエジプトでイスラム国対策の2億ドルの支援を表明したが、それは避難民向けの食料や医療など人道援助が中心だ。あくまで非軍事活動に徹している。

そもそも、民間人殺害などの蛮行を繰り返しているのはイスラム国の方である。イスラム国を空爆した米国や英国などの民間人の身柄を拘束し、空爆中止や身代金の要求が聞き入れられないとして、計5人を殺害している。

安倍首相は記者会見で、「人命を盾にとって脅迫することは許し難いテロ行為であり、強い憤りを覚える」と強調し、人質2人の早期解放を求めた。「人命尊重」の観点で対応する方針も示した。

政府は、ヨルダンに現地対策本部を設置し、首相に同行中の中山泰秀外務副大臣を派遣した。米欧や中東の各国と連携し、人質の救出に全力を挙げねばならない。

過去には、国際的な協力により、交渉を通じて人質が解放された例もある。イスラム国の様々な情報の収集と分析に力を入れたい。

不当な要求に応じれば、日本がテロに弱いとみなされる恐れがある。テロ組織を勢いづかせ、同様の事件を引き起こしかねない。

菅官房長官が「テロに屈することなく、国際社会とテロとの戦いに貢献する我が国の立場に変わりない」と語ったのは当然だ。

テロの連鎖を断ち切るため、テロ資金対策やテロリストの渡航阻止などで、国際社会が一致して取り組むことが欠かせない。

産経新聞 2015年01月22日

イスラム国「壊滅」 オバマ氏演説の実行望む

オバマ米大統領は一般教書演説で、過激組織「イスラム国」に対する米国主導の掃討作戦について、「このテロ組織を弱体化させ、最終的に壊滅させる」との強い決意を改めて表明した。

イスラム国は、拘束した日本人2人の殺害を脅迫するという許し難いテロの刃を日本にも突きつけている。

大統領はテロとの戦いで「標的にされた世界の人々と連帯」し、「米国と同盟国への脅威の排除」に全力をあげると強調した。心強い発言だ。

シリアとイラクで勢力を広げるイスラム国は、宗教的な少数派を迫害・虐殺するなど残虐な行為を繰り返し、既存の国境を認めず、支配地域を拡大させてきた。

米国は昨年8月、イラク領内で空爆を開始し、シリアにも拡大した。この戦いには欧州や中東の有志国も加わっている。

大統領は米地上部隊の派遣については重ねて否定したものの、有志国などとの国際連携で掃討作戦を進めてゆく意向を示した。

国際秩序を破壊しようとするイスラム国の行為は、日本を含む世界全体への脅威である。凶悪なテロ組織を壊滅に追い込むには、米国の強い指導力が欠かせない。

大統領は、イスラム国の勢力拡大に「歯止めをかけている」との認識を示し、壊滅には時間がかかるとしながらも「われわれは成功させる」と強調した。

イスラム国はネットを駆使し、テロを正当化する宣伝を行い、外国人戦闘員を勧誘している。各国が結束し、資金や人の流入を遮断する必要がある。国際社会は非軍事的な手段も含め、いっそう関与を強めるべきだ。

大統領は国家やハッカー集団によるサイバー攻撃にも言及し、「政府の情報力を結集し、断固戦う」と表明した。

昨年12月、北朝鮮の金正恩第1書記の暗殺計画を描いたコメディー映画を制作したソニーの米子会社がサイバー攻撃を受け、テロ予告で公開がいったん中止に追い込まれている。サイバーテロの脅威は日本にとっても無縁ではなくなっている。

大統領は、東シナ海や南シナ海を念頭に、海洋紛争での「ルールに従った行動」を求めた。大統領が掲げた外交上の課題の多くは日本も共有している。同盟国として相応の役割を果たしたい。

毎日新聞 2015年01月21日

「イスラム国」人質 早期解放に全力挙げよ

恐るべき事件と言うしかない。安倍晋三首相の中東歴訪(エジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ)中に、イスラム過激派「イスラム国」を名乗る組織が日本人人質2人の身代金2億ドル(約240億円)を要求し、応じなければ72時間以内に2人を殺害すると予告したのだ。

産経新聞 2015年01月22日

首相中東歴訪 演説の意義さらに発信を

中東歴訪中だった安倍晋三首相は一部予定を変更して帰国した。イスラム過激組織「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件の陣頭指揮を国内で執るためだ。

事件は首相の歴訪が招いたものとの批判があるとすれば、誤りだ。卑劣なテロによって評価が左右されることはない。

歴訪中、最も意義深かったのは、ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺の犠牲者を追悼する「ホロコースト記念館」での首相の演説である。

首相は「このような悲劇を二度と繰り返させない」と訴え、第二次大戦中にユダヤ難民6千人に「命のビザ」を発給した外交官、杉原千畝(ちうね)の存在に触れた。そして「日本としても、人々の人権を守り、平和な暮らしを守るため、世界の平和と安定に、より積極的に貢献していく」と述べた。

首相の言葉は、自らが掲げる「積極的平和主義」遂行への決意であり、民主主義や人権といった普遍的価値観への深い共感を世界に向けて力強く発信したものであると受け止めたい。

今年は戦後70年にあたる。首相はこの夏、平和国家としての日本の戦後の歩みを強調し、アジア太平洋地域や世界にどのような貢献を果たしてゆくのかを盛り込んだ談話を発表する。

今回の演説は、その最初のメッセージである。同時に、米国にすら存在する「安倍首相は歴史修正主義者的である」という、根拠のない非難を打ち消す狙いも込められていたのではないか。

一般的に「歴史修正主義」は、ユダヤ人大虐殺を否定する立場について用いられてきた。しかし、慰安婦問題などで誤った事実関係を正そうとする日本の努力に対しても同様のレッテルを貼り、日本の国際的孤立を狙う動きが強まっている。今年は、そのせめぎ合いがさらに激しさを増すだろう。

日本の発信力の弱さが、米国や欧州の一部にも反日宣伝が広がる事態を招いてきた。不当な宣伝に対しては、堂々と事実をもって反論していくべきである。

そのうえで、日本が今後も平和国家として生きてゆく強い覚悟を、国を挙げて世界に向けて発信し続ける努力が必要だ。

直面する過激主義やテロとの戦いについても、日本が国際社会とともにあることを強調し、行動しなければならない。

産経新聞 2015年01月21日

邦人人質脅迫 テロに屈してはならない

極めて卑劣で残忍な犯行である。日本政府は「テロに屈せず」を大前提に邦人の解放に向けて全力を挙げてほしい。

過激派「イスラム国」とみられるグループが、身代金2億ドル(約236億円)を72時間以内に支払わなければ日本人2人を殺害すると警告する映像をインターネット上で公表した。

映像では、拘束された2人がナイフを突きつけられていた。身代金は、中東歴訪中の安倍晋三首相がイスラム国対策に拠出を表明した額と同額である。

イスラム国は、シリアからイラクにかけて実効支配を広げるイスラム教スンニ派過激組織で、過去にも空爆停止要求が入れられなかったなどとして拘束していた米国人フリージャーナリストらを殺害している。日本人を人質にとっての身代金要求は初めてだ。

声明は「日本の首相と国民へ」と題され、「おまえは8500キロも離れていながら、自発的に十字軍に参加した」などとして、米欧の対イスラム国政策への協力を批判している。身勝手な要求を受け入れるわけにはいかない。

エルサレム市内で会見した安倍首相は「人命を盾に脅迫することは許し難い行為で、強い憤りを覚える。日本人に危害を加えないよう、直ちに解放するよう強く要求する」「国際社会は断固としてテロに屈せず、対応していく必要がある」と述べ、2億ドルの拠出は避難民への人道支援であることを強調し、実施する考えを示した。

菅義偉官房長官も「テロに屈することなく、国際社会とともにテロとの戦いに貢献していく」と述べた。この姿勢を支持する。

2004年にイラクのテロ組織が日本人を人質にとった際には、当時の小泉純一郎首相が直ちに「テロには屈しない」との大原則を示した。

事件は最悪の結末を招いたが、それでも大原則を曲げるわけにはいかない。無法な要求を受け入れれば、日本が脅迫に屈する国であると周知され、同様の犯罪を招くことにもつながる。

日本が歩むべき道は、国際的な反テロリズムの戦いと連携することである。

同時に邦人救出に向けたあらゆる努力を尽くすことだ。イスラム国の支配地域などへの渡航禁止を最高度の喫緊課題とし、徹底することも忘れてはならない。

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