小中学校統廃合 地域の将来見据えて進めたい

毎日新聞 2015年01月20日

学校統廃合 地域に根差した視点を

明治以来、学校は子供の公教育の場であるだけでなく、しばしば地域の行事や社交、情報や意見交換の場の役割も担ってきた。近年は防災拠点としての比重も高い。

読売新聞 2015年01月20日

小中学校統廃合 地域の将来見据えて進めたい

少子化が進む中、小中学校をどう再編するか。自治体にとって、避けて通れない問題である。

文部科学省が、公立小中学校の統廃合に関する基準を59年ぶりに見直した。小学校は全校で6学級以下、中学校は3学級以下の場合、統合の検討を自治体に促している。

学級数があまりに少ないと、子供の人間関係が固定化する。同じ子供が長期間、いじめに遭う恐れもある。クラス対抗の行事や部活動にも制約が生じる。集団生活で社会性を身に付ける機会が少なくなることが懸念される。

子供たちの良好な教育環境を保つためには、一定の学校規模が必要になるのは間違いない。

旧文部省は1956年、望ましい学級数として、小中学校とも1校あたり「12学級以上18学級以下」との基準を示した。

だが、近年の児童・生徒数の減少により、公立小中学校の約半数が11学級以下になっている。地方の過疎地だけでなく、住民の高齢化が進む都市部の団地などでも、こうした状況に直面している。

新たな基準が、特に、クラス替えができない規模の学校について、統合の検討を急ぐべきだと指摘したのは理解できる。

新基準では、スクールバスなど交通機関の利用を想定し、「通学時間は1時間以内」との目安も加わった。これまでは、徒歩や自転車での通学を前提に、小学校は4キロ・メートル以内、中学校は6キロ・メートル以内という基準しかなかった。

通学範囲が広がることで、統合の選択肢は増えるだろう。

一方で、長時間の通学により、子供たちに過度な負担がかからないよう配慮すべきだ。

学校が地域コミュニティーの核としての機能を持っていることにも留意する必要がある。

休日に開放された運動場で、汗を流す住民は多い。災害時には避難所となる防災拠点でもある。学校をなくすことが人口流出に拍車をかけ、地域の衰退を招くような事態は避けねばなるまい。

離島や山間部などの小規模校では、地理的条件から統合は難しい。このようなケースでは、他校とのオンライン授業を行うなど、より多くの仲間と交流する機会を増やす工夫が欠かせない。

改正地方教育行政法が施行される4月から、首長と教育委員会で構成する「総合教育会議」が各自治体に設置される。学校統廃合はこの会議で扱う重要テーマとなろう。地域の将来も見据えた、多角的な検討が求められる。

産経新聞 2015年01月21日

学校統廃合 地域の知恵集め活性化を

公立小中学校の統廃合に関する基準を文部科学省が約60年ぶりに見直した。1学年1学級以下になった場合をめどに統廃合を含めた検討を自治体に求めるものだ。

少子化で学校の小規模化が進めば、集団活動もままならず切磋琢磨(せっさたくま)して学ぶ学校の機能が失われかねない。学校を活性化させる取り組みを工夫したい。

文科省によると、小学校の児童数は昭和30年代初めに約1340万人だったが、平成25年には約656万人と半数以下になった。中学生もピーク時の半数以下だ。

さらなる少子化が見込まれ、学校統廃合は地方だけでなく都市部でも大きな課題となっている。

ところが手をこまねく自治体が多いのが現状だ。文科省の調査では、7割を超える市町村が「学校の規模が適正でない」などの課題を認識しているものの、解決策を検討しているところは半数以下にとどまる。学校統廃合には「母校が消える」といった地元の反対も根強く、簡単には進まない。

しかし過度に小規模な学校では教育の場としてさまざまな支障が生じる。人間関係が狭まり、多様な意見に触れる機会が少なくなる。運動会など行事の教育効果も下がる。また学級数が減れば教員数も減少し、子供たちを多面的に教える指導も難しくなる。

文科省の今回の基準見直しは、こうした課題を明示し、統廃合の難題から目を背けずに検討してもらい、統合などによって魅力ある学校づくりを促すものだ。

もちろん、地域の事情で統廃合が困難な場合もある。文科省は、小規模校として存続する場合も想定し、社会教育施設との複合化やインターネットの活用を通じて体験や教育活動の幅を広げるなど、小規模校の欠点を補う取り組みも求めている。

さらに、いったん休校しても、山村留学の受け入れや伝統文化の保存・継承の活動拠点、宿泊施設として学校を活用するなどの工夫も必要だと指摘した。

地域によっては統廃合を機会に小中一貫校に再編するなど、少子化を逆手にとって教育改革を模索する動きもある。各地の事例をさらに積極的に紹介してほしい。

学校はとかく閉鎖的になりがちだ。少子化時代の学校の問題について、より多くの人が関心を持ち、地域の知恵を集めて、学校を元気にしていきたい。

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