少子化が進む中、小中学校をどう再編するか。自治体にとって、避けて通れない問題である。
文部科学省が、公立小中学校の統廃合に関する基準を59年ぶりに見直した。小学校は全校で6学級以下、中学校は3学級以下の場合、統合の検討を自治体に促している。
学級数があまりに少ないと、子供の人間関係が固定化する。同じ子供が長期間、いじめに遭う恐れもある。クラス対抗の行事や部活動にも制約が生じる。集団生活で社会性を身に付ける機会が少なくなることが懸念される。
子供たちの良好な教育環境を保つためには、一定の学校規模が必要になるのは間違いない。
旧文部省は1956年、望ましい学級数として、小中学校とも1校あたり「12学級以上18学級以下」との基準を示した。
だが、近年の児童・生徒数の減少により、公立小中学校の約半数が11学級以下になっている。地方の過疎地だけでなく、住民の高齢化が進む都市部の団地などでも、こうした状況に直面している。
新たな基準が、特に、クラス替えができない規模の学校について、統合の検討を急ぐべきだと指摘したのは理解できる。
新基準では、スクールバスなど交通機関の利用を想定し、「通学時間は1時間以内」との目安も加わった。これまでは、徒歩や自転車での通学を前提に、小学校は4キロ・メートル以内、中学校は6キロ・メートル以内という基準しかなかった。
通学範囲が広がることで、統合の選択肢は増えるだろう。
一方で、長時間の通学により、子供たちに過度な負担がかからないよう配慮すべきだ。
学校が地域コミュニティーの核としての機能を持っていることにも留意する必要がある。
休日に開放された運動場で、汗を流す住民は多い。災害時には避難所となる防災拠点でもある。学校をなくすことが人口流出に拍車をかけ、地域の衰退を招くような事態は避けねばなるまい。
離島や山間部などの小規模校では、地理的条件から統合は難しい。このようなケースでは、他校とのオンライン授業を行うなど、より多くの仲間と交流する機会を増やす工夫が欠かせない。
改正地方教育行政法が施行される4月から、首長と教育委員会で構成する「総合教育会議」が各自治体に設置される。学校統廃合はこの会議で扱う重要テーマとなろう。地域の将来も見据えた、多角的な検討が求められる。
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