党の再生へ、急進的ではなく、穏健な改革路線を選択したのだろう。
民主党代表選は、決選投票の末、岡田克也代表代行が、細野豪志元幹事長を小差で破り、長妻昭元厚生労働相を含む三つどもえの戦いを制した。
党員・サポーターと地方議員を含む第1回投票では、細野氏が僅差で1位だった。決選投票では、長妻氏を支持した国会議員がより多く岡田氏支持に回った結果、岡田氏が逆転を果たした。
細野氏が「過去との決別」を訴え、より大胆な改革や世代交代を主張したのに対し、岡田氏は「原点回帰」を唱え、民主党の基本路線を踏襲する考えを示した。
野党再編を巡っても、岡田氏は自主再建路線を堅持し、維新の党との合流を強く否定した。
こうした岡田氏の主張が、長妻氏を支持するリベラル系議員に評価されたのだろう。
岡田氏は当選あいさつで、「統一地方選、参院選、衆院選を一つ一つ乗り越える。国民の信頼を取り戻す」と強調した。
岡田氏は、挙党態勢の構築を目指す方針だ。ただ、保守系の岡田氏がリベラル勢力に配慮しすぎれば、党の政策や体質の改革が停滞するのではないか。
代表選では、集団的自衛権の行使に関し、岡田、細野両氏が限定容認を否定しなかったのに対し、長妻氏が明確に反対するなど、党内の意見の隔たりが露呈した。
岡田氏は今後、集団的自衛権の行使の是非に関する統一見解の策定など、先送りしてきた外交・安全保障政策に関する党内論議を主導することが求められる。
非現実的な最低保障年金制度の創設など、2009年衆院選の政権公約(マニフェスト)の抜本的な見直しも急務である。
看過できないのは、岡田氏が安倍政権下では憲法改正論議に応じない考えを示したことだ。
岡田氏は、首相が「GHQ(連合国軍総司令部)の素人が8日間で作り上げた代物」と発言したとして、「首相は憲法をさげすんでいる」と主張している。
だが、憲法制定がGHQ主導だったのは事実だ。党が一丸となって政権奪還を目指すのなら、憲法改正論議は避けて通れない。
論議を経た党決定に全議員が従う文化を定着させる。安倍政権の経済政策「アベノミクス」など重要政策への現実的な対案を提示する。こうした改革なしには、失墜した民主党に対する国民の信頼を回復することはできまい。
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