大阪府市の統合再編で二重行政の解消を図るという大阪都構想の設計図(協定書)が、府市両議会から選ばれたメンバーで構成する法定協議会で了承された。
2月の両議会に提案されるが、公明党が昨年暮れに住民投票実施に協力すると方針転換したことから、可決は確実視される。5月17日に大阪市で住民投票が行われる見通しだ。
昨年10月には両議会とも否決した案件である。議会の承認を経ない、専決処分による住民投票もほのめかしていた橋下徹大阪市長は「してやったり」だろう。だが、急転直下の事態に至った経緯の不透明さは見過ごせない。
さきの衆院選で、維新の党は大阪府での比例代表獲得票がトップだった。公明党の方針転換は、支持母体である創価学会や党本部が、維新との関係修復を求めたためとされる。
ただ、党大阪府本部は中央の指示に反発した。だから、住民投票の実施は認めても、都構想そのものには従来通り反対するという、極めて分かりにくい対応となった。誰もが納得できる説明を行うべきだ。
橋下氏や議会にも苦言を呈したい。都構想は大阪の都市構造を大きく変え、住民の生活にも影響を及ぼす。最終的には住民の選択に委ねられるとしても、さらに議論を重ね、対案を出して修正を図る作業などに努めるべきだった。
ところが法定協議会での協議が行き詰まると、橋下氏は反対する野党会派のメンバーを排除し、維新の議員だけで協定書を作った。強引すぎる運営だった。
野党会派は、議会では数の優位があるため、否決できることを前提に論戦を挑まなかった。公明党の豹変(ひょうへん)で、否決された協定書がほぼそのまま息を吹き返した。
都構想には、地盤沈下した大阪を活性化する期待もある。新しい大都市制度のモデルとしても注目される。
一方で「大阪都」というネーミングや、大阪市を5つの特別区に再編する区割り案には異論がある。行政コストの削減効果には疑問も持たれている。多くの課題が残されているのだ。
協定書が提案される2月の両議会では、住民投票ありきではなく、大阪の将来像を議論し尽くしてもらいたい。そうでなくては「百年の計」が禍根を残す。
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