佐賀県知事選 農協改革の後退許されぬ

毎日新聞 2015年01月13日

佐賀知事選 安易な中央主導の失敗

政権にとって、手痛い失点だろう。新人対決で保守分裂の戦いとなった佐賀県知事選は地元農協らが推す元総務官僚の山口祥義(よしのり)氏(49)が、自民、公明両党の推薦する同県武雄市の前市長、樋渡(ひわたし)啓祐氏(45)を大差で破る波乱となった。

産経新聞 2015年01月13日

佐賀県知事選 農協改革の後退許されぬ

保守の分裂選挙となった佐賀県知事選で、安倍晋三政権の農協改革に反発する地元JAの後押しを受けた無所属新人が当選した。

政権にとって昨年の滋賀、沖縄両県知事選と同様の手痛い敗北である。4月の統一地方選をにらんで農協改革が停滞する懸念が強まっている。

そんな事態を許していいのか。衆院選での与党大勝で、アベノミクスの継続に国民から信任を受けた。一部の地方選敗北に動揺し、改革を後退させることは断じて許されない。

岩盤規制の象徴である農業を抜本的に見直せるかどうかは、首相が目指す「強い経済」を実現するための試金石でもあるはずだ。

当選した山口祥義(よしのり)氏は早速、農協改革について「地方でしっかり話し合った上で進めるべきだ」と語り、政権側を牽制(けんせい)した。

地方創生のカギを握る農業強化策で、地域の声を吸い上げるべきなのは論をまたない。だからといって既得権益を守る議論にくみするわけにはいくまい。いま一度、原点を再確認すべきである。

日本の農業は担い手の高齢化が深刻化し、耕作放棄地も増えている。意欲ある農家の生産性を高める構造改革を先送りすれば、衰退傾向に歯止めをかけられない。

そのための農協改革である。

全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とするピラミッド構造を見直し、地域の農協や農家の実情に即した自由な経営を行えるようにする。政府が国会提出を予定する農協法改正案で、JA全中による一律の監査・指導権限をなくそうとするのは妥当だ。

何よりも、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉を進めている今こそ、「攻めの農業」に転じ、成長産業へと発展させる好機である。重要農産品の関税死守に終始するばかりでは、交渉に参加した意味はなかろう。

農業票は伝統的に自民党の選挙を支えてきた。ただでさえ、アベノミクスの恩恵は、地方に行き渡っていない。農業にかぎらず、統一地方選に向けて地方への配慮を求める与党内の圧力が高まることは十分に予想される。

だが、それで肝心の成長戦略が不十分になるようでは、経済最優先を掲げる首相の覚悟にも疑義が生じよう。首相に求めたいのは強力な政権基盤を生かし、効果的な改革を断行することだ。

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