成人の日のきょう、126万人の新成人が大人の仲間入りをする。
自覚と責任を胸に、夢に向かって力強く歩み出してほしい。
新成人は昨年より5万人多い。21年ぶりの増加だ。団塊ジュニア世代の子供が成人に達し始めた。バブル経済崩壊後の「失われた20年」に育った若者たちである。
景気の低迷が続き、非正規労働者が増えた。若者が安定した仕事に就きにくくなっている。少子高齢化に伴う社会保障費の増大で、国の財政は極めて厳しい。そのツケが若い世代にのしかかる。
若者たちにとっては、明るい展望を描きにくい時代だろう。
だが、困難な状況の中で、未来を切り開いていくことができるのもまた、若い力である。
新入社員を対象に、日本生産性本部が実施しているアンケートでは、働く目的として「楽しい生活をしたい」を挙げる人が最も多い。「社会のために役立ちたい」との回答が増えているのは心強い。
一方で、「自分の能力を試したい」「経済的に豊かになりたい」は減少傾向にある。
仕事とプライベートの両方を充実させ、心豊かに暮らすことを望んでいるのがうかがえる。
地方に目を向ける若者が増えているのも、その反映ではないか。内閣府の調査によると、都市部の20歳代の過半数が「地方に移住してもよい」と答えている。政府が掲げる「地方創生」にとっては、明るい材料と言えよう。
徳島県の山あいにある神山町には、若い世代の転入が相次ぐ。地元のNPO法人などが、IT(情報技術)企業のサテライトオフィスの誘致や、空き店舗を活用した起業支援を進めてきた成果だ。
総務省の「地域おこし協力隊」への参加も広がっている。都会の若者が農村や山間部に移り住み、最長3年の任期で地域活性化に取り組む。2013年度の隊員は全国で978人に上った。
地場の特産品を使って新商品を開発する。古民家を改装してカフェや住民交流サロンを営む。独自の文化や自然を生かした体験型ツアーなどを企画する。
若い感性で地域の魅力を掘り起こし、事業展開につなげた例も多い。任期終了後も隊員の6割が、現地に定住したり、地域おこし活動を続けたりしている。
都会で頑張る人材も、地方に活力をもたらす人材も、日本の将来にとって欠かせない。社会の中で見聞を広め、自分にふさわしい進路を見いだしてもらいたい。
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