成人の日 大人への一歩は投票から

読売新聞 2015年01月12日

成人の日 若い力で豊かな未来を築こう

成人の日のきょう、126万人の新成人が大人の仲間入りをする。

自覚と責任を胸に、夢に向かって力強く歩み出してほしい。

新成人は昨年より5万人多い。21年ぶりの増加だ。団塊ジュニア世代の子供が成人に達し始めた。バブル経済崩壊後の「失われた20年」に育った若者たちである。

景気の低迷が続き、非正規労働者が増えた。若者が安定した仕事に就きにくくなっている。少子高齢化に伴う社会保障費の増大で、国の財政は極めて厳しい。そのツケが若い世代にのしかかる。

若者たちにとっては、明るい展望を描きにくい時代だろう。

だが、困難な状況の中で、未来を切り開いていくことができるのもまた、若い力である。

新入社員を対象に、日本生産性本部が実施しているアンケートでは、働く目的として「楽しい生活をしたい」を挙げる人が最も多い。「社会のために役立ちたい」との回答が増えているのは心強い。

一方で、「自分の能力を試したい」「経済的に豊かになりたい」は減少傾向にある。

仕事とプライベートの両方を充実させ、心豊かに暮らすことを望んでいるのがうかがえる。

地方に目を向ける若者が増えているのも、その反映ではないか。内閣府の調査によると、都市部の20歳代の過半数が「地方に移住してもよい」と答えている。政府が掲げる「地方創生」にとっては、明るい材料と言えよう。

徳島県の山あいにある神山町には、若い世代の転入が相次ぐ。地元のNPO法人などが、IT(情報技術)企業のサテライトオフィスの誘致や、空き店舗を活用した起業支援を進めてきた成果だ。

総務省の「地域おこし協力隊」への参加も広がっている。都会の若者が農村や山間部に移り住み、最長3年の任期で地域活性化に取り組む。2013年度の隊員は全国で978人に上った。

地場の特産品を使って新商品を開発する。古民家を改装してカフェや住民交流サロンを営む。独自の文化や自然を生かした体験型ツアーなどを企画する。

若い感性で地域の魅力を掘り起こし、事業展開につなげた例も多い。任期終了後も隊員の6割が、現地に定住したり、地域おこし活動を続けたりしている。

都会で頑張る人材も、地方に活力をもたらす人材も、日本の将来にとって欠かせない。社会の中で見聞を広め、自分にふさわしい進路を見いだしてもらいたい。

産経新聞 2015年01月12日

成人の日 大人への一歩は投票から

めでたく大人の仲間入りをした20歳の皆さん、きょうの新たな門出を心から祝福します。

平成27年1月1日時点の新成人は126万人だ。前年より5万人増えたものの、昭和45年のほぼ半分で、平成7年以降の減少傾向にも大きな変化は見られない。

若者の減少は国家を支えるべき生産年齢人口の減少にもつながるから、根本的な人口増対策が急がれるのは当然ながら、若者世代の声が相対的に政治に反映されにくくなるという一面も見逃すわけにはいかない。

それでなくとも政治に無関心な若者が多く、国政選挙の年代別投票率がそのことを如実に物語る。昨年末の総選挙の詳細な分析はまだだが、平成24年までの過去15回の総選挙では、20歳代が最も低い投票率となっている。2年を最後に50%超えはない。

社会人としての役割をわきまえ、信念をもって行動することが大人である要件の一つだと考えるならば、自らの境遇や社会の矛盾に不平を言うだけだったり、投票しても何も変わらないなどと諦めたりするのではなく、意思を明確にする行動力を身につけたい。

公職選挙法における投票権年齢を18歳以上とする法案が、今月召集予定の通常国会に提出される見通しだ。20歳でも未熟なのにと懸念する声も少なくはないが、初めから完成された大人なんていまい。一歩一歩着実に、大人に成長していってほしい。

成人として自らのスネで立つには、何より仕事に就かなくてはならない。しかし昨今は、職を得ても「自分に向いていない」などとすぐに投げ出してしまう若者気質が指摘されてもいる。

作家の水上勉は9歳で家を出てから膏薬(こうやく)の行商、洋服の展示販売など多くの職業を経験し、見聞きする中で、「職業というものは、それにたずさわる側の人の心で、ずいぶんちがうものであり、いいかえれば、天職にもなるし、ならぬこともある」(『働くことと生きること』)と知った。いかなる経験も将来への糧とする前向きな生き方を学びたい。

弱冠二十歳の弱には、柔らかいの意もある。どうせ…と諦めるのではなく、自身や日本の将来を若者らしい柔軟な発想で展望し、行動につなげてほしい。今春の統一地方選での「一票」がさしずめ、大人への第一歩となろうか。

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