仏紙銃撃テロ 表現の自由は揺るがない

朝日新聞 2015年01月09日

フランス週刊紙襲撃 言論への暴力を許すな

ことばを失う凄惨(せいさん)なテロである。民主社会の根幹である言論の自由への重大な挑戦だ。

フランスの週刊新聞「シャルリー・エブド」のパリの事務所が武装した男たちに襲われた。

発行人のステファン・シャルボニエ氏ら編集幹部や、記者、風刺画家ら12人が殺害され、多数がけがを負った。

この新聞は、刺激的な風刺画で知られ、反権威、反権力の立場を鮮明にしている。近年は、しばしばイスラム主義を批判したり、揶揄(やゆ)したりした。イスラム教徒らの反発を招いていたのは確かだ。

ただ、いかに気に食わなくとも、言論を暴力で封じる行動は断じて許されない。一刻も早く容疑者が法にもとづいて裁かれるよう望む。

言論に対する暴力や脅しはフランスに限った問題ではない。世界の国々で大小いくらでも存在する。この事件を日本も自らの問題として受け止め、言論封殺に向けたいかなる動きにも反対する立場で連帯すべきだ。

1987年、朝日新聞阪神支局が散弾銃を持った男に襲われ、記者1人が死亡、1人が重傷を負った。事件はいまだに解決されていない。今回の犠牲者に対し、心から哀悼の意を表するとともに、言論の自由を守る決意を新たにしたい。

フランスは、風刺画が社会に根付いた国である。有力紙ルモンドの1面にも、その時々のニュースを読み解く風刺画が連日掲載される。

「笑い飛ばす」ことは、力なき市民にとって大いなる抵抗の手段だ。風刺画は、権威や権力に挑むジャーナリズムの本質的な使命の一翼を担ってきたといえる。

シャルリー・エブドは、そのなかでも過激な編集方針で知られてきた。他のメディアが扱いたがらないタブーにも挑み、右翼やカルト宗教なども取り上げてきた。1960年創刊の前身の月刊紙から、週刊紙化して70年に現在の紙名になった後も、物議を醸す報道を展開した。

2005年、デンマークの新聞が預言者ムハンマドの風刺画を掲載。イスラム諸国が反発すると、シャルリー・エブドは風刺への支持を表明し、ムハンマド風刺の特集号を発行した。

挑発的とも言える風刺画の掲載は、部数を増やす話題づくりの側面がうかがえる一方、「表現の自由」「政教分離」といったフランスの原則を内外に示す意識も働いただろう。

2011年、事務所に火炎瓶が投げ込まれ、編集部が全焼した。国際テロ組織アルカイダから名指しで非難され、脅迫も相次いだことから、警備が強化されていたという。

事件の全容解明はこれからだ。ただ、容疑者がアルカイダを名乗ったとの証言もあり、イスラム過激派にかかわりを持つ人物たちである可能性は高い。

昨年来、カナダやオーストラリアなどでも、イスラム過激派に触発された可能性のあるテロ犯罪が頻発している。

戒めるべきなのは、こうした事件の容疑者と、イスラム教徒一般とを同一視することだ。そのような誤った見方が広がれば、欧米市民社会とイスラム社会との間に緊張関係をつくりたい過激派の思うつぼである。

貧困や専制政治などによる社会のひずみから、イスラム世界には過激思想に走る者が一部いることは否めない。だが、圧倒的多数の人々は欧米と同様に、言論の自由や人権、平等などを尊ぶ社会の実現を望んでいる。

今回の事件を「西洋文明対イスラム」の対立に置き換えてはならない。フランスのイスラム団体代表も「これは、イスラムの名の下になされたことではない」と非難した。

安倍首相を含む主要各国の首脳らが、事件の犠牲者に対する哀悼や犯行への非難を表明した。テロ捜査と防止には国際協調が欠かせず、今後も協力や情報の共有が求められる。

イスラム教徒の多いアラブ諸国からも、テロを非難する声明が相次いでいる。国内に過激派を抱える国々が多くあり、テロの拡散は自身にかかわる深刻な問題だ。イスラム諸国の側からも、積極的に実態解明と再発防止の営みに加わるべきだ。

フランス国内で、特に右翼などがこれを機に、反イスラムの言動を増やす懸念は拭えない。差別や偏見が強まり、ヘイトスピーチのような現象が起きるかもしれない。

そのような事態に陥らないためにも、イスラム教徒や移民など少数派と多数派市民とが共生できる社会づくりに向けて、取り組みの強化が欠かせない。

パリだけでなく、欧米各地の主要都市で多くの人々が連帯の集会を開いているのは、心強い反応である。この悲惨な事件を、共生社会の建設に向けた議論が広まるきっかけへと、転じたいものだ。

毎日新聞 2015年01月14日

パリ200万人行進 暴力許さぬ連帯示した

いかなる理由であれ、暴力を許すことはできない。その強いメッセージが全世界に連帯の輪を広げた。

読売新聞 2015年01月11日

仏銃撃犯射殺 テロ連鎖阻止へ連帯を強めよ

パリで起きた新聞社銃撃事件は、実行犯の死亡という形で決着した。イスラム過激派組織の関与など事件の全体像を解明し、国際社会全体でテロの連鎖や拡散を阻止すべきだ。

政治週刊新聞社を襲い、12人を殺害したアルジェリア系フランス人の容疑者兄弟2人は、パリ郊外の印刷所での銃撃戦の末、警察と軍の特殊部隊に射殺された。

パリでは、ユダヤ人向け商店に銃で武装した男が押し入り、買い物客を人質に取る事件も発生した。特殊部隊が犯人を射殺したが、人質4人が犠牲となった。

人質犯は、女性警官の殺害容疑で指名手配されており、仏テレビに対し、「彼らは新聞社、私は警察だ」と襲撃対象の役割分担があったと説明した。両事件は、連携した犯行だった可能性が高い。

オランド大統領はテレビ演説で犠牲者に哀悼の意を表明し、国民に「テロに立ち向かおう」と訴えた。今後もテロの脅威が続くとの厳しい認識に立ち、結束を呼びかけたのは、当然である。

捜査の焦点は、両事件の犯人と国際テロ組織とのつながりだ。

銃撃犯の弟は仏テレビに、イエメンに拠点を置くテロ組織「アラビア半島のアル・カーイダ」から資金を得た、と明かした。

人質犯も、中東で勢力を拡大する過激派組織「イスラム国」のために行動した、と強調した。

事実とすれば、中東のイスラム過激派組織が、複数の重大なテロを同時に発生させられるほど、欧州に深く浸透していることになる。極めて深刻な事態である。

イスラム過激派組織は恒常的に、欧州のイスラム系若者を仲間に引き入れ、戦闘員を養成するため、インターネットによる宣伝活動などに力を入れている。

今回のテロの舞台は、約500万人ものイスラム系住民を抱えるフランスだったが、欧米や豪州などは「共通の脅威」に直面していると言えよう。

グローバル化によって人的往来が活発化する中、無論、日本も国際テロへの警戒が怠れない。

犯人が携行していた自動小銃などの武器の入手先や、資金源の解明も急務だ。各国の連携を強め、テロに使われる武器や資金を封じ込めねばならない。

パリでは11日、テロに対する団結を訴える行進が行われ、仏英独伊の首脳などが参加する。閣僚級のテロ対策会議も開かれる。

国際社会が、テロに屈しないという明確な意思を示し、実務的な協力を強化する必要がある。

産経新聞 2015年01月14日

仏370万人デモ 連帯をテロ根絶に生かせ

週刊紙銃撃など一連のテロが起きたフランスで犠牲者追悼のデモ行進が行われ、戦後最大規模の370万人が参加した。パリの行進では、オランド大統領をはじめ英国やドイツなど約50カ国首脳らも手を携えた。

テロに屈せず表現の自由を守るという強い連帯の意思表明として評価したい。これを、テロ阻止を目指す国際社会の連携強化へとつなげなければならない。

週刊紙銃撃では風刺画家ら12人が容疑者兄弟2人に殺害され、連動して別の男が警官を射殺してユダヤ系食料品店に立てこもり、人質4人が犠牲になった。

容疑者の兄は、イエメンで国際テロ組織「アラビア半島のアルカーイダ」の軍事訓練を受け、その指示で犯行に及んだとされる。

先進国出身者が過激組織の影響を受けて自国でテロを起こす「国産テロ」であり、3容疑者に同調する過激思想信奉者による連鎖テロも懸念されている。

仏当局は、容疑者兄弟を監視対象にしていたにもかかわらず、武器所持を見逃すなど犯行を未然に防げなかったばかりか、逃走も許して制圧に時間を要した。

オランド政権は当面の警備に万全を期すとともに、テロ対策を抜本的に見直してもらいたい。

だが、それだけではテロは根絶できない。仏政府に求められるのはテロの温床を断つ努力だ。

兄弟のような北アフリカ系を主とするイスラム教徒は、仏人口の約8%を占め、「郊外」と呼ばれる貧困地区に集中し教育や就職などで差別感、疎外感を抱く。過激思想に染まりやすい素地がそこにある。彼らを孤立させず社会に吸収していく施策が必要だ。

パリでは今回、欧米諸国のテロ対策閣僚級会合が開かれ、欧州連合(EU)各国が域内外の渡航者情報を共有していくことなどで一致した。オバマ米政権も来月、テロ対策のための首脳会議をワシントンで開催するという。

「国産テロ」はこのところ、カナダやオーストラリアでも起きている。ナイジェリアでは、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が、女児を自爆させる陰惨極まりないテロを実行し、世界に衝撃を与えたばかりだ。

テロは平穏な社会の意表を突いて起きる。その防止に向け、日本も国際社会と情報を共有し相応の役割を担うべきだ。

読売新聞 2015年01月09日

パリ新聞社銃撃 表現の自由に挑戦する蛮行だ

言論機関を標的にした残忍、冷酷なテロである。断じて許されない。

武装グループがパリの政治週刊紙の本社で自動小銃を乱射し、編集長ら12人を殺害した。

捜査当局は、アルジェリア系フランス人の兄弟を容疑者として特定し、関係者を身柄拘束した。容疑者は事件現場で、「預言者の復讐ふくしゅうだ」などと叫んだという。

犯行は、週刊紙がイスラム教の預言者ムハンマドを風刺する漫画を掲載したことなどと関係があるとの見方が有力だ。

民主主義の根幹をなす「表現の自由」に対する、暴力による重大な挑戦であると言えよう。

事件はフランス社会に強い衝撃を与えた。オランド大統領は犯行を「フランス全体への攻撃だ」と非難し、8日を「追悼の日」として国民に黙とうを呼びかけた。

事件当日の7日に、各地で計10万人規模の抗議集会が開かれたことは強い怒りの表れだろう。

週刊紙は、宗教の風刺もタブーとしない論調で知られ、再三、イスラム教の風刺画を掲載し、物議を醸していた。2011年には、火炎瓶攻撃を受け、編集部がほぼ全焼したこともある。

05年にデンマーク紙が掲載したムハンマドの風刺画を巡っては、イスラム諸国で抗議デモが相次ぎ、流血の事態に発展した。今回の事件は、新聞社を狙った計画的な犯行であり、従来の抗議とは次元が異なる蛮行と言えよう。

オバマ米大統領ら各国首脳は犯行を非難した。安倍首相も「いかなる理由であれ、卑劣なテロは許せない」と表明した。

仏当局は、容疑者の組織的な背後関係を含め、事件の全容解明を急ぐべきだ。国際社会全体が、テロ資金の封じ込めや出入国管理の厳格化に向けて、連携を強めることが肝要である。

昨年春以降、欧米や豪州などでイスラム過激派による襲撃やテロが頻発している。懸念されるのは今回の事件が、各国でのイスラム教徒を巡る社会的な軋轢あつれきに拍車をかけかねないことだ。

欧州のイスラム系住民の若い世代は、高い失業率や貧困、差別などから疎外感を抱きがちだ。イスラム過激思想に染まり、中東で勢力を拡大する過激派「イスラム国」に合流する者も増えている。

実際、今回の容疑者の1人は05年、過激派に加わるためイラク渡航を画策し、身柄拘束された。

欧州各国は、穏健なイスラム教徒の孤立を回避し、社会的共生を進める努力が求められよう。

産経新聞 2015年01月09日

仏紙銃撃テロ 表現の自由は揺るがない

いかなる理由であれ、表現や言論の自由を暴力で踏みにじる卑劣な行為は断じて許されない。

イスラム教の預言者ムハンマドを登場させた風刺画などを掲載したフランス週刊紙シャルリー・エブドのパリの本社が襲撃され、編集長ら12人が殺害された。

捜査当局によると、犯人らはフランス生まれのイスラム教徒とみられる。国際テロ組織アルカーイダや「イスラム国」の過激思想に共鳴していたようだ。

オランド大統領は「フランスの報道の歴史で最も暗い日だ」と残忍な犯行を非難した。国民の間には「私たちは皆、シャルリーだ」と連帯の声が広がっている。犠牲者に深い哀悼の意を表したい。

欧州では2005年、デンマーク紙がムハンマドの風刺画を掲載し、イスラム世界が激しく反発して、宗教に絡む表現の自由が問題となった。

シャルリー・エブド紙はその風刺画を転載し、その後もムハンマドを何度か題材に取り上げ、編集長はアルカーイダから殺害の標的の一人に挙げられていた。

犯人らは現場で「ムハンマドの敵を取った」と叫んだという。

偶像崇拝を排するイスラム教では、預言者ムハンマドを絵に描いたり、笑いの対象にしたりすることは禁忌である。同紙はキリスト教、ユダヤ教や政治家たちも含め幅広いテーマを扱ってきた。

信教に関わる問題では、侮辱的な挑発を避ける賢明さも必要だろう。だが、漫画を含めた風刺は、欧州が培ってきた表現の自由の重要な分野である。

テロの恐怖に屈し、自己規制してしまってはテロリストの思うつぼだ。

昨年は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記暗殺計画を描いた、ソニー米映画子会社制作のコメディー映画がテロ予告を受け、米国での公開がいったん中止に追い込まれた。

イランの死刑宣告を受けた英作家の著作「悪魔の詩」を翻訳した筑波大助教授が、1991年に構内で殺害された事件は、未解決のままだ。日本も表現の自由に対するテロの脅威と無縁ではない、という認識を新たにしたい。

フランスをはじめ欧州には多くのイスラム教徒移民が暮らす。過激思想に染まった、そのごく一部への反感がイスラム教徒全体の排斥につながらないような、寛容な社会であり続けてほしい。

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