2014回顧・世界 顕在化した様々な脅威と危機

読売新聞 2014年12月28日

2014回顧・世界 顕在化した様々な脅威と危機

様々な脅威と危機が顕在化した1年だった。

本紙読者が選んだ「海外10大ニュース」の1位は、「エボラ出血熱で世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言」だ。

致死率が高い感染症、エボラ出血熱は、西アフリカのリベリアなど3国で死者が7500人を超え、米国や欧州に飛び火した。拡大封じ込めには、国際的な医療支援の強化が不可欠である。

日本では、幸いにも感染者は確認されていないが、空港などの水際対策の継続が重要だ。

「ロシアがウクライナ南部クリミアを編入」(5位)は、関係国に深刻な対立をもたらした。

欧米や日本は、この強引な国境変更を認めず、ロシアに数次にわたる制裁を科した。先進7か国(G7)は、プーチン露大統領を外し、首脳会議を開催した(17位)。

ウクライナ東部では、旅客機が撃墜され、乗客ら298人が死亡した(4位)。ロシアの後押しを受ける親露派武装集団がミサイルを発射したとの見方が有力だ。

中東情勢の混迷も懸念材料だ。シリアやイラクで勢力を拡大した過激派組織「イスラム国」に対し、米軍が空爆を開始した(6位)。米軍のイラク撤収を成果として誇ってきたオバマ大統領にとり、軍事介入は苦渋の決断だった。

オバマ氏への支持率は低迷し、民主党は中間選挙で歴史的な大敗を喫した(7位)。

女性が教育を受ける権利の確立を訴えるマララ・ユスフザイさんがノーベル平和賞を受賞した(3位)。イスラム武装勢力の銃撃で負傷した後も、信念を貫く勇気に多くの人が感銘を受けた。

だが、12月には母国パキスタンで、同じ武装勢力が学校を襲い、生徒ら多数を殺害した(「番外」)。テロ根絶の道は険しい。

韓国では、死者・行方不明者304人を出す旅客船「セウォル号」の沈没事故が起きた(2位)。高校生が携帯電話で家族に送った悲痛な最期のメッセージや、乗客を置き去りにして救助された船長の映像などが強い印象を残した。

香港で、行政長官選挙の民主化を求める学生らが街頭を占拠した(9位)。香港支配を強める中国の習近平政権への抗議である。南シナ海で実力で現状変更を図る中国は、ベトナムやフィリピンとの対立も深まった(13位)。

共産党独裁を墨守し、軍事・経済力を背景に領土や権益の一方的な拡大を狙う中国と、いかに向き合うのか。来年も、日本など周辺国にとって重い課題である。

産経新聞 2014年12月29日

回顧2014 「法と正義」の破壊許すな 平和を脅かしているのは誰だ

ベルリンの壁崩壊と冷戦終結から四半世紀がたち、自由と民主主義の勝利は世界の基調となった。だが、この1年は冷戦後の国際秩序を揺るがす脅威が、日本を含む自由主義諸国に向けられた。

軍事力で隣国ウクライナを蹂躙(じゅうりん)したロシアであり、東シナ海や南シナ海での覇権主義を隠さない中国のことだ。国際ルールや地域の平和と安定を軽視し、力による現状変更を狙う勢力が、鮮明にその姿を現した。

「法と正義」の価値観を守る戦いは、戦後70年となる2015年も続く。

≪中露の野望を阻止せよ≫

ウクライナ南部のクリミア半島を併合したロシアは、ウクライナ東部の親露派勢力への軍事支援を続けた。明白な主権侵害に対して米欧は対露制裁を科したが、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の攻撃能力などを脅威とみる「修正軍事ドクトリン」を発表して反論した。世界を冷戦時代に引き戻すかのような動きである。

自由と民主主義、法の支配に基づく価値観外交を唱える安倍晋三首相は、その一方でプーチン露大統領との個人的信頼関係を重視している。対露制裁で欧米に後れを取る印象も与えた。

北方領土問題を抱える日本固有の立場と、普遍的な価値観をどう両立させるかという難題に引き続き取り組まなければならない。

地域の安全保障や経済秩序に大きな影を落とすような、中国の動きもより顕在化した。

尖閣諸島奪取を狙う中国は、11月に安倍首相と習近平国家主席との初の首脳会談が実現した後も、自国の公船による日本領海侵入を繰り返している。

東シナ海上空に中国が一方的に設定した防空識別圏では、中国軍機が自衛隊機に異常接近する一触即発の事態が生じた。南シナ海では米軍の対潜哨戒機を威嚇した。米政府が「明白な挑発行為」と非難した意味は重い。

中国は「九段線」と呼ぶ独自に引いた境界を根拠に南シナ海の領有権を主張し、係争海域にある岩礁の軍事拠点化も急いでいる。

「アジアインフラ投資銀行」の設立を仕掛けるなど、軍事面のみならず経済的覇権への意図にも警戒を強めなければならない。

日本にとっての大きな誤算として、制裁を一部解除してまで再開した北朝鮮との政府間協議で、思ったような成果を挙げられなかったことを挙げざるを得ない。

「夏の終わりから秋の初め」と約束された日本人拉致被害者に関する再調査の初回報告は、ほごにされたままだ。国連では人権問題をめぐる北朝鮮非難決議の採択にこぎ着けたが、北は決議を主導した日本を「焦土化」するなどと威嚇している。協議の進展をどのように図っていくかが問われる。

≪自由貿易への姿勢示せ≫

厳しさを増す国際環境の中で、いかに繁栄を取り戻し、より確かな安全保障体制を実現するかを日本は突き付けられている。重要なステップとして、集団的自衛権の限定行使容認という判断に踏み込んだのは画期的だ。日米同盟による抑止力強化に欠かせない。

それを具体的に実現するための関連法案の成立と、「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」改定は来年の重要課題だ。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉は、日米の対立がネックとなって膠着(こうちゃく)状態にある。アジア太平洋地域の新たな貿易・投資ルールとなるTPPには、台頭する中国を牽制(けんせい)する戦略的な狙いもある。

アベノミクス路線を進める安倍政権は、デフレ脱却を確実にするため消費税の再増税を延期した。成長戦略の柱に位置付けたTPP交渉の妥結は極めて重要だ。自由貿易拡大も、世界で推進すべき重要な価値観だ。それに取り組む姿勢は内外から問われよう。

終戦70年の節目を、中国は「抗日戦争と反ファシズム戦争の勝利70年」とし、ロシアとも連携して大々的な反日宣伝を仕掛けてくる構えだ。韓国も慰安婦の「強制連行」に固執し、歴史認識で中国と歩調を合わせるだろう。

これらの国の宣伝戦で「歴史修正主義の安倍政権は戦後体制を否定している」との誤った認識が欧米の一部に浸透し始めている。

力による国境線や現状の変更は認めない戦後の国際秩序の根幹を侵しているのは一体誰なのか。日本が世界に発すべき点だ。

読売新聞 2014年12月27日

2014回顧・日本 災害への備えを問われた1年

今年も、悲喜こもごもの出来事があった。

戦後最悪の火山災害に自然の猛威を改めて思い知らされた。

読売新聞の読者が選ぶ今年の「日本10大ニュース」の1位に、9月27日に起きた「御嶽山噴火で死者57人、行方不明者6人」が選ばれた。

噴火の予兆は捉えられなかった。紅葉に彩られた、のどかな風景が一変し、噴石が容赦なく襲いかかる。登山客がスマートフォンで撮影した生々しい映像に、衝撃を受けた人は多かっただろう。

「広島市北部の土砂災害で74人が死亡」も6位に入った。

広島県では15年前にも同様の災害が起きていた。教訓を生かせなかったことが悔やまれる。

万一に備えた防災体制の充実が欠かせない。

科学分野では明暗が交錯した。「ノーベル物理学賞に青色LEDを開発した赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏」(3位)は、日本人として誇らしく思うニュースだった。LEDが世界に普及する礎を築いたことが評価された。

「新たな万能細胞」との期待を裏切ったのが、「STAP細胞論文に改ざんなど不正」(7位)だ。実験の記録も整っておらず、既存の万能細胞であるES細胞が混入したとほぼ断定された。

スポーツ界からは、明るい話題が届いた。「全米テニスで錦織圭が準優勝」(4位)は、日本選手初の快挙だ。体格で上回る世界のトップ選手と、互角以上に渡り合う姿に元気をもらった。

「ソチ五輪で日本は金1、銀4、銅3」も8位に選ばれた。フィギュアスケートで、羽生結弦選手の金メダル獲得は見事だった。フリーで渾身こんしんの演技を披露した浅田真央選手の涙は、感動を呼んだ。

11月には「高倉健さん死去」(10位)の報に、惜しむ声が広がった。スクリーンの中で圧倒的な存在感を放った。その名は、映画史に深く刻まれよう。

「消費税8%スタート」(2位)は、家計に直接影響するだけに、読者の関心が高かった。増税により、消費は低迷している。

「『アベノミクス』の評価を問う衆院選」(5位)は、「安倍首相が消費税引き上げ先送りを表明」(16位)して衆院を電撃的に解散したものだ。「集団的自衛権を限定容認、政府が新見解」(12位)も争点の一つになった。

自民、公明の両党が大勝し、首相は国民の信任を得た。

来年は、アベノミクスの真価が問われる年となるだろう。

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