円安に苦しむ中小企業の支援や、消費の落ち込みを食い止めようとする狙いは理解できる。
ただ、景気の下支えを名目にバラマキ策が紛れ込む懸念は拭えない。
政府が、総額3・5兆円規模の経済対策を策定した。年明けには、対策の内容を反映した2014年度補正予算案を編成する。
今回の対策は、地方自治体の施策を国が支援する総額4200億円規模の交付金創設が柱だ。
「地域消費喚起型」と「地方創生型」の2種類を用意した。
消費喚起型は、地元の商店で使う商品券の発行や、低所得者層への燃料費補助、子育て支援などに取り組む自治体を助成する。
4月の消費税率引き上げや円安の進行に伴う物価上昇などで、消費の不振が続いている。「アベノミクス」の恩恵が、地方へ十分に及んでいないことも事実だ。
ただ、政府は、景気回復を優先して、15年10月に予定していた消費税率の10%への引き上げを17年4月まで先送りした。
それに加えて、景気対策を打つ以上は、当面の痛みを和らげる実効性の高い対策に絞り込むべきだったのではないか。
政府が過去に実施した「地域振興券」の配布は、景気刺激効果が限定的だったと指摘される。今回も効果の検証が欠かせない。
一方、地方創生型の交付金は、創業支援や少子化対策などを手がける自治体の助成に充てる。
自治体からの事業提案を政府が審査し、支給の是非を判断する仕組みの創設を検討している。
こちらは、中長期的に地域活性化に役立つ事業だけを支給対象とすべきである。
政府は、優れた提案を的確に目利きする能力が求められよう。
来春に統一地方選を控え、甘い審査体制で、地方から要望されるまま、交付金を支給するような事態を招いてはならない。
交付金事業の費用対効果について、事後的にチェックする仕組みを整えることも大切になる。
経済対策の財源は、14年度の税収が当初の見込みを上回った分と13年度予算の使い残しで賄う。
現在の危機的な財政事情を考えれば、新規の国債発行を回避したのは当然の判断と言える。
だが、予算の使い残しは本来、国の借金返済に回し、財政再建に役立てるのが筋だ。
財務省は14年度補正予算案の編成作業で、対策に不要不急の事業がないか、しっかり査定し、歳出をできるだけ圧縮すべきだ。
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