地方創生戦略 国は支え役に徹せよ

朝日新聞 2014年12月28日

地方創生戦略 自治体の学び合いこそ

政府が地方創生戦略と経済対策を閣議決定した。

創生戦略は東京一極集中の是正を掲げ、「地方から東京圏への転入を現状より年に6万人減らし、東京圏から地方への転出は4万人増やす」といった数値目標をちりばめた。さらに、全ての自治体に数値目標付きの総合戦略づくりを求めている。

自治体への財政支援の柱が、経済対策に計上した新しい交付金だ。「自由度が高い」とうたい、創生戦略の目玉でもある。

ただ、実際に交付する際には、自治体の総合戦略を国が審査する。地域での消費を支えるための交付金も別に用意したが、こちらも商品券の発行や灯油購入の補助など、国が使い方を例示する。地方に任せきりにはしない姿勢は相変わらずだ。

政府の心配も、わからなくはない。四半世紀あまり前、竹下内閣が当時3300あった市町村に一律1億円を配った「ふるさと創生」事業では、必要性に乏しい施設が各地に作られ、金塊の購入など首をかしげざるをえない使い方が散見された。

しかし、あのころとは比較にならないほど、地方を取り巻く状況は厳しさを増している。少子高齢化はいやおうなく進み、集落の維持すらままならない自治体があちこちにある。

ここは思い切って地方に任せ、それぞれの置かれた環境や特徴に応じた知恵に期待してはどうか。人材が乏しく、自力では政策づくりが難しい小さな自治体は、国に尋ねるのではなく他の自治体に学べばよい。

国が旗を振り、おしりをたたくやり方から、自治体自身が考え、連携しつつ挑戦する――。そんな発想の転換が必要だ。

そう考えさせる取り組みが、島根県雲南市にある。東京23区の広さに匹敵する中山間地域に4万人余りが住むが、高齢化ぶりは全国平均の25年先を行き、人口の減少が止まらない。苦悩する自治体の一つである。

話は、「平成の大合併」で六つの町村がひとつになった10年前にさかのぼる。

地域社会を支える自治会の機能は、少子高齢化で着実に弱っていた。市が直接個々の集落を支えることは、財政的にも人手の面でも不可能だ。

ヒントになったのが、合併に加わった旧掛合町だった。82年に島根県で開かれた国民体育大会で相撲会場になった同町は、町民あげて全国から選手や応援団を受け入れたことがきっかけで、住民活動が活発だった。

自治会を生かしつつ、消防団や農業関係の組織、学校のPTAなど地域のさまざまな団体を一つにまとめ、統廃合が進む小学校区ごとに地縁に根ざした新たな組織へと作り直す。その活動拠点として公民館を交流センターに格上げし、交付金を出して、生涯学習だけでなく防災や福祉、まちづくりなどさまざまな活動を後押しする……。

こんな構想を打ち出し、今では市全域に約30の地域自主組織ができた。地区でただ一つの商店が撤退した後、旧小学校舎を使って住民管理でミニスーパーを営んだり、住民が水道検針を受託して各戸の見回りを兼ねたりと、全国から視察が相次ぐ活動が生まれている。

雲南市は自ら旗を振り、地域自主組織の全国的な推進組織を来年2月にも発足させる。数十の自治体が参加するという。

小さな自治体が、なぜ全国的な組織づくりにまで踏み込むのか。ここに、地方創生を巡る本質的な問題が潜んでいる。

自主組織が活動の幅を広げ、販売や作業受託などで収益を得るようになると、法人格が不可欠になってきた。雲南市は、地縁に根ざす新たな法人制度を実現しようと、歴代政権が導入してきた特区制度に挑戦する。

が、中央省庁の壁は厚かった。地方自治法上の認可団体、NPO法人、公益法人など、さまざまな制度をいくつかの省庁が所管しているが、どれも自主組織にはそぐわない。既存の制度のほうを自主組織に合わせてもらうこともかなわず、役所の間をたらい回しにされるばかりだったという。

住民の安全・安心をゆるがせるような提案でない限り、自治体の責任で実行してもらう。そして、成功のカギや失敗の原因を自治体間で共有し、次のステップにつなげる。「地方発」のそんな循環を後押しすることこそが、国の役割ではないか。

創生戦略にはこんな施策も並ぶ。地方で就職する大卒者の奨学金返済を免除する。本社機能を移す企業を税で優遇する。国のどんな機関がほしいか、自治体に手をあげてもらう。

これらは「東京から地方に移す」という従来型の発想に基づくが、しょせんは東京と地方の分け合い・取り合いだ。

地方が挑戦し、国が支える。そうして新たな価値を生み出し、国全体の活力を高める。地方創生の目標はそこにある。

毎日新聞 2014年12月28日

地方創生戦略 国は支え役に徹せよ

地方の人口減少に歯止めをかける「地方創生」に関し、政府は今後5年間の総合戦略と長期ビジョンを決めた。難しいテーマだけに、自治体との意思疎通が欠かせない。

読売新聞 2014年12月29日

地方創生戦略 目標達成へ実行力が問われる

掲げた多くの数値目標を、いかに実現するか。政府は自治体や民間と連携し、日本の総力を挙げて取り組むべきだ。

政府が、人口減少と東京一極集中の是正を目指す「地方創生」に関する長期ビジョンと、2015年度から5か年の総合戦略を決定した。安倍政権の看板政策は今後、実行段階に入る。

ビジョンは、昨年時点で1・43の出生率が「若い世代の結婚・子育ての希望が実現すると、1・8程度に向上する」と分析した。

出生率が30年に1・8、40年に人口維持に必要な2・07に回復すれば、「60年に総人口1億人を確保」という長期目標が実現できるとの推計も示している。

人口減少に歯止めをかけ、活力ある社会を維持するには、出生率の向上が必須だ。長期目標の達成は困難を伴うが、こうした目標を掲げることには意義がある。

総合戦略は、5年間で達成すべき数値目標を多数掲げた。

地方に若者30万人分の雇用を創出する。それを受け皿に、東京圏から地方への転出を4万人増やす一方、地方からの転入を6万人減らし、転出入を均衡させる。これらの達成も容易ではない。

男性の育児休業の取得率を2%から13%に高める。新規学卒者の県内就職率を72%から80%に上げる。こうした目標も明記した。

重要なのは、目標達成に必要な施策を講じ、目標の進捗しんちょく度に応じて随時、施策を見直す作業に政府全体で取り組むことである。

戦略は、地方移住の推進策として、希望者のための一元的窓口の設置、地方で仕事ができる「サテライトオフィス」や在宅勤務型の「テレワーク」の普及などを盛り込んだ。企業の地方移転には税制上の優遇措置も講じるという。

効果が不透明な施策も少なくない。戦略は、歴代政権が人口減対策で目立った成果を上げられなかった要因として、府省の縦割り行政や、効果を検証しない予算のバラマキなどを指摘した。

失敗を教訓に、様々な政策から相乗効果を引き出したい。

肝心なのは、各自治体が地域の現状について強い問題意識を持つことだ。地元の大学や民間企業と知恵を出し合い、実情に応じた政策を考案せねばなるまい。

政府は自治体に15年度中の「地方版総合戦略」策定を求めている。その策定を前提に、使途の自由度が高い交付金も新設した。

政府は、ノウハウの提供や人材派遣を通じて自治体の戦略策定を多角的に支援する必要がある。

産経新聞 2014年12月27日

地方創生 地域の「覚悟」が試される

地方が「消滅」の危機を脱するには、地域の自立を成し遂げる覚悟が必要だ。

政府が今後5年間の地方活性化政策を「総合戦略」にまとめ選択肢として提示した。税制優遇や自由度の高い地方自治体向け交付金を設け、小規模自治体には国家公務員の派遣など人的支援を行う考えも示した。

地方創生の真の目的は人口減少に歯止めをかけることにある。政府が本格的に人口対策に乗り出すのは初めてだ。「50年後に1億人程度」との目標実現に向けた道筋を示した意義は大きい。

今のままならば人口減少の波は大都市にもおよび、50年後の総人口は現在の3分の2になるとの推計もある。地方創生を「ラストチャンス」と位置付け、国民総がかりで取り組みたい。

ただ、実際に政策を遂行するのは国ではない。地域によって強みや課題は異なる。政府は各自治体に「地方版総合戦略」の策定を求めており、首長は自治体職員のみならず住民や企業、学校などを巻き込み、それぞれの特色を生かしたアイデアを練り上げていくことが求められる。

総合戦略は政策に目標値を記した。東京圏への一極集中の是正では、平成32年までに地方に30万人の若者雇用を創出するとした。地方移住を促進し、東京圏の転出・転入を均衡させる。高めの数値目標であるが安倍晋三政権の危機感の裏返しであろう。

目標設定は地方に現実的な政策を迫ることでもある。政府は効果をみながら不断に見直しを求めるというが当然だ。バラマキは徹底排除しなければならない。

若者の結婚・出産・子育ての希望を実現するため切れ目のない支援も行うが、Uターン、Iターンが増え、出生数も増加すれば地方は活力を取り戻す。政策を総動員して目標を達成したい。

具体的方策として挙げたのは、企業の地方移転支援やサテライトオフィス促進などだ。目新しさはなく、「各省の政策の寄せ集め」との批判もある。だが、人口減少対策に特効薬があるわけではない。地味な政策を着実に積み重ねていくしかない。

地方創生を地域産業振興にとどめてはならない。安倍首相は国民の価値観や国の形を変える大事業との認識に立ち、大胆かつ細心に政策を推進してもらいたい。

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