郵政の上場計画 経営改革を加速させよ

朝日新聞 2014年12月27日

日本郵政上場 将来の具体像を示せ

政府が100%保有する日本郵政株が来年度、売り出される見通しになった。郵政民営化計画の一環である。しかし、まだ郵政グループの将来像には不確かな点が多い。政治に翻弄(ほんろう)されてきた郵政民営化をどう着地させるのか、政府は早急に具体像を示すべきだ。

日本郵政の傘下には、日本郵便と金融2社(ゆうちょ銀行とかんぽ生命)がある。日本郵便は上場せず、金融2社については上場させて全株を売却することになっている。

計画では、持ち株会社の日本郵政と、金融2社の計3社の株を同時に上場するという。まず親会社を上場させるのが一般的なのに、親子同時上場となった背景には、郵政グループならではの事情がある。

問題は、郵便事業は電子メールの普及で経営が厳しく赤字続きで、グループの収益の大半を金融2社が稼いでいることだ。親会社の日本郵政だけを上場させようとしても、将来、金融2社を手放すことが決まっているため、稼ぎ手から切り離された日本郵政にどれだけの価値があるのか判断できないのだ。

同時上場となったことで、投資家は金融2社と日本郵政のそれぞれの企業価値を判断することになった。金融2社については、日本郵政の持ち株比率が50%程度になるまで段階的に売り、時間をかけて「グループ内の有機的な結合が担保されているか検証したうえで」(西室日本郵政社長)、残りの株を売っていくという。

上場後、当面は金融2社が郵便事業を支えることになる。それなら、郵便事業を今後、どうするのか、将来像がほしい。金融2社株を100%手放した後のグループの姿もわからない。

政府は現在、郵便・金融ともに全国一律の「ユニバーサルサービス」を日本郵政に義務づけている。その費用を、上場した後も郵政グループ内で負担するのが適正なのか。議論の残るところだ。

グループの収益を担う金融2社の改革も喫緊の課題だ。郵政民営化の狙いの一つは、肥大化した公的金融の縮小だった。しかし今もゆうちょ、かんぽ合計で資産規模は約300兆円と、メガバンクや大手保険会社を大きく上回る。その巨額の資金の7割を国債で運用している。

2社の上場を急いだのは、「民業圧迫」という批判を受けずに新規事業などに進出し、収益力を高めるためでもある。

スリム化も含め、市場の評価に耐えられる体質改善が欠かせない。

毎日新聞 2014年12月27日

郵政の上場計画 経営改革を加速させよ

日本郵政グループが、持ち株会社の日本郵政と、傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命の計3社の株式について、来年後半の同時上場を目指す方針を発表した。小泉純一郎内閣時代の2005年10月に郵政民営化法が成立して10年目にして、ようやく民営化の仕上げ段階に入る。

読売新聞 2014年12月27日

郵政3社上場へ 市場に評価される将来像示せ

株式上場をきっかけに郵政民営化をどう進展させていくか。

政府と日本郵政は、将来戦略を明確に示すことが求められる。

日本郵政グループが、持ち株会社の日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の金融2社の株式を、東京証券取引所に同時に上場すると発表した。来年度半ば以降の上場を目指す。

日本郵政の純資産額は14兆円に近く、1998年のNTTドコモ以来の大型上場になると見られている。異例の「親子同時上場」に、市場や投資家の関心は高い。混乱を招かぬよう、政府と日本郵政は万全を期してもらいたい。

政府は、全株保有する日本郵政株の一部を、上場時に売却する。段階的に「3分の1超」まで持ち分を引き下げ、売却収入のうち4兆円は、東日本大震災の復興財源に充当する。

気がかりなのは、財源が確保できるよう、日本郵政株が市場で高い評価を得られるかどうかだ。郵便の減少が続き、頼みの金融事業も、貯金残高や保険契約数はピークから大きく落ち込んでいる。

日本郵政は3年間で1兆3000億円を投じて郵便局の改修やシステム高度化を進め、収益基盤を強化するとしている。だが、成長実現の道筋はあいまいだ。

持ち株会社と金融2社との、今後の関係も大きな課題である。

郵政民営化法は、日本郵政の保有する金融2社株の全株売却を目指し、できる限り早期に処分すると定めている。最終ゴールは、2社の完全民営化ということだ。

日本郵政は上場時に売却を開始し、当面は保有比率が50%程度になるまで売却する方針を示した。だが、完全民営化のスケジュールや手順は、はっきりしない。

日本郵政の持ち分が50%に下がれば、金融2社は、新規事業の開始などに必要な関係省庁の認可が、届け出で済むようになる。

経営の自由度が増し、収益改善だけでなく、郵便局の利便性向上も期待できる。

ただ、国が多くの金融2社株を間接保有したまま、事業範囲を急拡大させれば、民業圧迫の批判が高まる心配がある。

他方、金融2社が完全民営化すると、日本郵政は有力な収益源を失う。全国の郵便局で、郵便と基本的な金融・保険サービスをあまねく提供する義務を果たすのにも、支障が出ないだろうか。

こうした課題に、解決策を示さねばならない。上場後は市場の評価にさらされることになる。

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