関電再値上げへ 原発停止の負担はもう限界だ

朝日新聞 2014年12月26日

関電再値上げ いつまで原発頼みか

関西電力がおととい、来年4月からの電気料金の再値上げを申請した。昨年5月に値上げしたばかりだが、原発の代わりに動かしている火力発電のコストが想定以上に膨らんだ。

値上げ幅は家庭向けで10%、企業向けは13%を超す。中小企業からは「これ以上の節電は無理だ」との悲鳴が相次ぐ。

値上げの大前提は、徹底的な経営効率化だ。関電は「聖域なく取り組んでいる」と強調するが、人件費を中心に切り込み不足との指摘がある。国は認可前に厳しく点検すべきだ。

もっとも、赤字の最大の要因は、福島第一原発事故前に発電量の5割を占めていた原発がほとんど動いていないことだ。

関電は前回の値上げ時、複数の原発の再稼働を見込んだが思い通りにいかず、再値上げに追い込まれた。社長はそれでも「早期再稼働に努める」と繰り返す。認識が甘くないか。

事故後、原発の安全性への疑問が広がった。関電は対策に巨費を投じているが、原子力規制委員会の審査をクリアし、再稼働への社会の理解を得るのは容易ではない。

関電が持つ原発11基のうち9基は来年で運転開始から30年を超す。建て替えや新設は相当に困難だろう。原発頼みでは、どのみち先行きは厳しい。

一方、値上げすれば、企業や自治体が、関電以外から電力を買う動きが強まるのは確実だ。すでに1万を超す事業所が、割安な新電力に切り替えた。

節電の定着で、家庭が使う電力も減少傾向だ。16年に家庭向け電力販売が自由化されれば、関電離れは加速しかねない。

関電は岐路に立っている。原発に依存せず生き残るにはどうすればいいか。長期的な戦略を示すべきだ。それこそが利用者の理解を得る最良の道だろう。

関西地域は70年代以降、福井県に集中立地した原発にエネルギーの多くを頼ってきた。だが原発事故を経て、原発を消費地外に押しつけてよしとしてきた考え方は反省を迫られている。

原発から他の電源に切り替える過程で、値上げはある程度避けがたい。せめてあるべきエネルギー社会を地域でいま一度深く考える機会にしたい。

7府県と4指定市でつくる関西広域連合は今年、再生可能エネルギーの導入量を20年度には今の3倍にするとの目標を掲げた。だが原発依存度を下げていく道筋はほぼ手つかずだ。

国任せにしていても物事は進まない。関西から率先して声を上げ、関電や福井県とともにビジョンを練っていくべきだ。

読売新聞 2014年12月26日

関電再値上げへ 原発停止の負担はもう限界だ

安全性の確認された原子力発電所の再稼働を進め、電気料金上昇の悪影響を和らげる必要性が日に日に増している。

関西電力が、東日本大震災後で2度目の電気料金値上げを、政府に申請した。北海道電力に続く2社目の再値上げだ。経済産業省などの審査を経て、来年4月からの実施を目指す。

申請された値上げ率は、家庭向けが平均10%で、標準家庭の料金は月8000円台から8900円台に跳ね上がる計算になる。企業向けは14%とさらに大幅だ。

関電は昨年4~5月に、家庭向け10%、企業向け17%の値上げを実施したが、これは原発4基が稼働することが前提だった。

実際には全原発停止が続き、代替する火力発電の燃料費は今年度上半期だけで、震災前より5000億円も余計にかかっている。

最近の原油安の恩恵で、液化天然ガス(LNG)など燃料の調達価格は下がる見込みだが、この分は「燃料費調整制度」による値下げに反映され、関電の収支改善にはつながらない仕組みだ。

関電は今年度、4期連続の赤字となり、来年度は債務超過に陥る恐れもあるという。電力の安定供給体制を維持するため、一定の追加値上げは、やむを得まい。

ただし、消費税率の引き上げや円安による物価高で苦境に立つ家計や中小企業にとって、電気料金の値上げは手痛い打撃だろう。

関西財界からは「中小企業のみならず、大企業にも大きな影響がある」との懸念が出ている。値上げはできる限り圧縮すべきだ。

関電は今年度、人件費や修繕費などで2700億円近い経営効率化を計画している。再値上げに向けてさらなるリストラの余地はないか、検討してもらいたい。

ただ、関電をはじめ電力会社の経費削減が限界に近づいているのも事実だ。九州や四国などの各電力も、赤字決算が続いている。

各社は、火力発電の点検・修繕の繰り延べなどで費用を浮かせているが、老朽化した施設の故障リスクは高まっている。停電などで電力供給に支障が出る事態は、何としても避けねばならない。

関電の値上げは、原子力規制委員会の安全審査で「合格」している高浜原発の2基が来秋に再稼働することが前提だ。これが遅れれば、事態はさらに悪化しよう。

関電が規制委に求められた設備改修などに最善を尽くすのはもちろん、政府も地元の説得などに全力を挙げ、再稼働を着実に実現しなければならない。

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