第3次安倍内閣 異論に耳傾ける政治を

朝日新聞 2014年12月25日

第3次安倍内閣 数におごることなかれ

第3次安倍内閣がきのう発足した。政治資金問題を抱える江渡前防衛相が交代したほかは、選挙前と変わらぬ顔ぶれだ。

衆院を解散した首相が総選挙をへて引き続き政権を担うのは、2005年の小泉首相(当時)以来のことだ。

安倍政権は衆院で3分の2、参院で過半数の勢力を確保。自民党内に強力なライバルが見あたらない状況を考えると、長期政権を予感させる船出である。

であればこそ、安倍氏は数の力におごることなく、少数意見にも耳を傾ける丁寧な政権運営を心がけるべきだ。

忘れてはならないのは衆院選で示された民意のありようだ。

投票率は戦後最低の52・66%に終わった。自民党の小選挙区での得票率は、そのうちの48・10%。小選挙区で4分の3の議席を得たのは、「民意の集約」を重視した選挙制度の特性によるところが大きい。

選挙後の朝日新聞の世論調査では、自民、公明の与党が定数の3分の2超の議席を得たことには59%が「多すぎる」と評価。自民勝利の理由については、72%が「野党に魅力がなかったから」と答えた。

これらを考えあわせると、与党が勝ったというよりも、野党が負けた選挙だったと見るのが妥当だろう。

首相は選挙後、最大の論点だったのは、日本経済や国民生活をどのように豊かにしていくのかという経済政策のかじ取りだったと語った。

世論調査でも、首相に一番力を入れてほしい政策として30%以上の有権者が「社会保障」や「景気・雇用」と答えている。

首相が何よりもこれらの政策に全力を注ぎ、国民の期待に応えるべきなのは明らかだ。

一方で、首相は集団的自衛権の行使容認に伴う法整備を進め、憲法改正にも努力していきたいという。政権公約に示された政策は「進めていく責任がある」というが、選挙戦であまり論じられなかったこれらの課題もまとめて認められたと解釈するには無理がある。

自民党は、沖縄県の普天間飛行場の名護市辺野古への移設推進を公約に掲げた。だが、沖縄県内の4小選挙区すべてで移設反対派が議席を占めた。

首相がいうように「普天間の固定化はあってはならない」としても、このまま何事もなかったかのように移設を進めるのではあまりに強引だ。

首相が数に頼らず、丁寧に民意をくみ上げる政治を進めていくのかどうか。移設問題への取り組みはその試金石となる。

毎日新聞 2014年12月25日

第3次安倍内閣 異論に耳傾ける政治を

第3次安倍内閣が発足した。衆院選で与党が3分の2以上の多数を制した安倍晋三首相は長期政権をにらみ、新たなスタートを切った。

読売新聞 2014年12月25日

第3次安倍内閣 経済再生と好循環を完遂せよ

衆院選での与党圧勝を踏まえ、様々な政策課題を前進させ、具体的成果を上げねばならない。

第3次安倍内閣が発足した。安倍首相は、江渡防衛相を除いた閣僚17人全員を再任した。

9月に内閣を改造したばかりのうえ、現体制での予算編成の加速を重視したことは理解できる。

江渡防衛相は、自らの資金管理団体の支出をめぐり、野党の追及を受けていた。「政治とカネ」の問題で国会審議が停滞するのを避けるのは妥当な判断だ。

◆丁寧な国会運営が重要

後任に起用された中谷元・元防衛長官は、集団的自衛権や特定秘密保護法に関する自民党の作業チームのメンバーを務め、安全保障問題全般に詳しい。来年の通常国会では安保法制の整備を控えており、順当な人事である。

自民党役員も全員が留任した。谷垣幹事長らは、首相の電撃的な「アベノミクス解散」に的確に呼応し、大勝に貢献した。首相官邸が政策決定を主導する「政高党低」が続く中、自民党との足並みを乱さないことが大切だ。

衆院選における自民党に対する有権者の支持は、「他の党よりはまし」という消極的なものが多い。読売新聞の世論調査で、選挙結果を「よくなかった」とする回答が46%にも上ったことを謙虚に受け止めるべきだろう。

「1強多弱」体制下でも、自民党は、野党に配慮した、丁寧な国会運営を心掛ける必要がある。

安倍内閣は、第1次から通算すると、歴代7位の1095日となった。来秋の自民党総裁選、再来年の参院選を乗り切れれば、小泉、中曽根両内閣を抜き、歴代3位の長期政権も視野に入ろう。

安定した政権基盤は、内政・外交の困難な課題に取り組むことを可能にする。政策の実現には、指導者の揺るぎない決意と周到な戦略が欠かせない。国民への説明を怠らないことも重要だ。

◆成長戦略強化に全力を

第3次内閣が最優先すべきは、無論、足踏み状態にあるデフレ脱却を再び加速し、経済再生を成し遂げることだ。衆院選で論点となった格差の是正や実質賃金の上昇にも力を入れねばなるまい。

それには、企業の利益を賃金や投資に回し、消費を拡大して、企業業績の向上につなげる「経済の好循環」の実現が肝要である。

安倍首相は記者会見で、「アベノミクスの成功を確かなものにするのが最大の課題だ。さらに進化させたい」と強調した。

首相は、麻生副総理兼財務相、菅官房長官、甘利経済再生相らとより緊密に連携し、機動的な経済運営に努めるべきだ。

安倍政権は近く、地方活性化を柱とする経済対策と、来年度税制改正大綱を策定する。年明けには今年度補正予算案と来年度予算案を決定する予定だ。費用対効果の高い内容にせねばならない。

成長戦略の強化も急務だ。

農業、医療、労働など岩盤規制の改革は、担当の有村規制改革相はもとより、西川農相、塩崎厚生労働相も汗をかく必要がある。

東京一極集中の是正や、地方創生特区などを通じた地域振興は、日本全体の成長にも役立つ。石破地方創生相は、各府省を総合調整する手腕が問われる。

安全性の確認された原発の再稼働も円滑に進めたい。宮沢経済産業相は、地元自治体を説得、調整する力が試されよう。

安倍首相は2年間で、過去最多の50か国を訪問し、高速鉄道や原発などのインフラ輸出を中心に、戦略的な経済外交を展開した。各国首脳との信頼関係を深め、日本の発言力と存在感を高めることは経済にも好影響を与えよう。

重要なのは、やはり日米同盟の強化である。集団的自衛権の行使を限定容認する7月の新政府見解を反映する安保法制の整備と日米防衛協力の指針(ガイドライン)見直しを着実に進めるべきだ。

◆日中韓首脳会談を急げ

首相や岸田外相、中谷防衛相は、集団的自衛権の行使容認の意義と必要性に関する国民の理解を広げる努力を倍加させてほしい。

来年は戦後70年を迎える。

歴史認識で対立する中韓両国との外交は、従来以上に注意深く進めねばならない。11月の日中首脳会談に続き、日中韓首脳会談を実現することが大切だ。まずは、年明け以降、準備会合の3か国外相会談を早期に開催したい。

領土や歴史認識で2国間関係全体を停滞させ、相手国に対する国民感情を悪化させるのは、双方にマイナスだ。首脳や閣僚の対話を重ね、接点を探る必要がある。

産経新聞 2014年12月25日

第3次安倍内閣 強い日本へ加速する時だ

■「成長」「憲法」で成果を示せ

第3次安倍晋三内閣の発足に先立ち、首相は「強く誇りある日本」をつくる決意を表明した。それは衆院選で国民が信任した路線であり、首相は言葉通り、山積する困難な課題に逃げることなく取り組み、実績を挙げてほしい。

強く、誇りある日本がなぜ必要か。周辺国の威圧に負けないためにも、経済を揺るぎないものにすると同時に、国のかたちを整える必要があるからだ。

デフレ脱却を確実にし、憲法改正に着手する道のりは険しい。首相の覚悟と与党で衆院の3分の2以上の圧倒的な数を持つ現政権でこそ、それらを可能にする。

≪信任を糧に政策遂行を≫

首相は記者会見で「戦後以来の大改革だ」と語った。懸案を解決する最大の好機を迎え、その責務を果たす意志と受け取りたい。

衆院選で大勝しても、過去最低を更新した低投票率を理由として「おごってはいけない」との注文が相次いでいる。

為政者がおごってはならないのは言うまでもない。しかし、「おごるな」という注文が「安倍政治」の路線を否定し、政策遂行のスピードダウンを迫る意味だとすれば、大きな間違いだ。

2年前の衆院選で自民、公明両党への政権交代が実現した。日本の経済も安全保障も弱めてしまった民主党政権への有権者の批判の受け皿として、自公両党が明確に選択されたということだ。

これと比べ、昨年の参院選と今回の衆院選は、有権者が安倍政権の継続を認めた意味合いが大きい。首相は自身の路線の加速に力を注ぐ時だ。萎縮すれば、懸案への取り組みは遅れ、日本は衰退に向かってしまう。

衆院選で最大の争点となったアベノミクスは、より具体的な成果を求められる段階に入った。

消費税再増税は平成29年4月へ先送りされたが、今後見込まれる医療費など社会保障費の激増を考えれば、確実に増税を実施できる経済環境をつくらなければならない。とりわけ、アベノミクスの3本目の矢である成長戦略の強化が求められる。

「岩盤規制」を打ち抜くことをためらわず、確実に効果が期待できる方策を打ち出すべきだ。

高齢化や医療の高度化によって伸び続ける社会保障費の抑制も、喫緊の課題である。支払い能力に応じた負担を求めることを進め、本当に必要とする人へ重点的にサービスを提供するよう改めていかなければ、制度そのものが維持できなくなる。

「痛み」を伴う改革を成功させるには、社会保障が置かれた実情を丁寧に説明し、国民の理解と協力を得る必要がある。

首相は22日の経済財政諮問会議で、平成27年度予算編成にあたり「社会保障の自然増も含め、聖域なく見直す」と意気込みを語った。ところが、政府内には75歳以上の低所得高齢者の保険料を安くする特例措置の廃止時期を、先送りする動きがみられる。

≪首相が国のかたち語れ≫

統一地方選や参院選を控え、与党が高齢有権者の反発を恐れているからだという。選挙のたびに改革を足踏みしていては、少子高齢社会を乗り越えることはできない。大衆迎合政治との決別が、力を得た政権の進むべき道だ。

首相は憲法改正への使命感も繰り返し言及してきた。会見では「歴史的なチャレンジだ」と位置付け、意欲を示した。

首相自身が憲法改正の必要性を具体的に説いていかなければ、国民の間に理解は広がらない。自民党任せではなく、自分の言葉で国民に語りかけてほしい。

その際、日本の防衛を不備なままにしている憲法9条の改正は避けて通れない。国防軍の保持を明記した自民党憲法改正草案の意義を訴えるべきだ。

安倍政権は来年の通常国会に、集団的自衛権の限定行使を可能にする安全保障関連法案を提出する。日米共同の抑止力を高め、日本の平和と安全を確かなものにするため、早期成立が不可欠だ。

法案審議を意識し、政治資金問題を抱える江渡聡徳(えと・あきのり)氏を防衛相から外し、中谷元(げん)氏を起用した。

「政治とカネ」の問題は、前内閣での2閣僚辞任の形でも国民から強い不信を招いた。収支に巨額の食い違いが生じた小渕優子前経産相の問題は、説明責任が果たされていない。首相と自民党は自浄能力を示すべきだ。

朝日新聞 2014年12月25日

第3次安倍内閣 財政再建に道筋つけよ

「アベノミクスをさらに強く、大胆に実施していく」。安倍首相はこう強調する。

好調な企業収益を、働く人の賃金増につなげる。社会保障制度を安定させ、安心して消費できる環境を整える。規制・制度の見直しなど「成長戦略」の加速を含め、課題は山積みだ。

ただ、それらの前提となる課題がある。財政再建への取り組みだ。先進国の中で最悪のわが国財政への疑念が膨らみ、国債相場の急落に伴う「悪い金利上昇」が生じれば、あらゆる努力が吹き飛びかねない。

消費税の10%への再増税を先送りしたことを受けて、日本国債は格下げされた。財政再建の重要性を直視すべきだ。

リーマン・ショックのような経済混乱がない限り、景気の変動に左右されず17年4月に消費税率を10%に上げる。消費増税を定めた法律の、いわゆる「景気条項」は削除する。首相はこう明言したが、まずは確実に実行しなければならない。

さらに、基礎的財政収支の20年度までの黒字化という政府目標がある。首相は来年夏までに具体的な計画を作ると語ったが、その中身が問われる。

過去に発行した国債の元利払いのための国債発行は認めるが、毎年度の社会保障や公共事業などの政策費用は基本的にその年度の税収でまかなう。これが基礎的収支の黒字化である。

状況は厳しい。国・地方の14年度の収支は25兆円の赤字。内閣府の試算では、今後「実質2%、名目3%」という、アベノミクスでも未達成の高い成長に基づいて税収を見込んでも、今の調子で予算を組めば、20年度になお11兆円の赤字が残る。

この差を埋める方法は、三つしかない。経済成長に伴う税収の自然増、歳出の抑制・削減、そして税制改革による増税だ。

政府の経済財政諮問会議では、民間議員が足もとの潜在的な成長率を0・6%程度としたうえで、これを前提に財政再建を目指すよう提案した。手堅い姿勢として評価できる。

一方、安倍首相は、基礎的収支の黒字化という目標だけでは経済成長に伴う国内総生産(GDP)の伸びが考慮されないという問題を提起した。

さまざまなデータで財政再建の進み具合をチェックするのは結構だが、国際的にも約束してきた基礎的収支の黒字化を骨抜きにすれば、国債市場からしっぺ返しを食らいかねない。

足もとの政策課題に対応しつつ、財政再建を進めるのは、困難を伴う「狭い道」だ。しかし、両立しか道はない。

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