大学入試改革 個別試験がカギだ

朝日新聞 2014年12月23日

大学入試改革 個別試験がカギだ

高校と大学の教育を、入試の仕組みを変えることで転換する。そんな改革を求める答申を、文部科学相の諮問機関である中央教育審議会が出した。

国レベルで導入するテストは二つある。高校2、3年で教科の知識をはかる「高等学校基礎学力テスト」と、大学受験生の知識の活用力をみる「大学入学希望者学力評価テスト」だ。

ともに1点刻みの成績表示をやめる。これまでの日本の入試を大きく見直すものだ。

だが、両テストですべてが変わるわけではない。高校、大学がどう動くかがカギを握る。

一つのポイントは大学の個別試験だ。答申は「人が人を選ぶ選抜」として面接や討論、活動報告書などを見るよう求めた。

だが、こうした方法は人手が要り、時間がかかる。国が支援しなければ難しい。大人数の受験生を抱える大学で、どこまで可能かなどの課題も多い。各大学は求める学生像をもとに、自校の方法を検討してほしい。

もう一つは、高校、大学が教育をどう見直すかだ。

改革の出発点は学生の学力不足が問題になったことだった。

少子化で「全入時代」を迎え、受験勉強をしなくても大学に入りやすくなった。学生確保のために推薦、AO入試を選び、テストを課さない大学が増えた。高校の教育も選択科目が増え、幅広く学ばなくなった。

もっと教科の学力をつけるべきだとの声は高い。

さらに改革を促しているのがグローバル化と情報化だ。

知識を覚え込む人から、自ら問いを立て動く人へ。社会の求める人材像は変わりつつある。

この二つの要請に、どう向き合うか。高校が「大学入試が変わらないと」、大学が「高校が学力をつけないのが悪い」と言い合うだけでは済まない。

高校はいまや9割以上が通い、進学率では義務教育に近い存在だ。小中の内容も含め、学力の底抜けを防いでほしい。それは「基礎学力テスト」への対策以前のことだ。高校の授業は知識注入型が多い。教科の壁を越えてどう伸ばすか。各校で話し合う必要がある。

大学も、大学生がエリートだった時代は遠い。学生が目標を探り、学習習慣をつけるのを助ける。グループ学習やインターンシップを組み合わせ、意欲を高める。そんな教育が必要だ。

18歳人口は2021年ごろから再び減り始める。入試でふるい落とすことで学力を担保するのは、さらに難しくなる。小学校から大学までの教育をどう積み上げるか。議論を進めたい。

毎日新聞 2014年12月26日

新大学入試 もっと開かれた議論を

「1点刻み」のテストを転換し、多面的に思考力や適性、主体性などを評価する。「グローバル化」を見すえ、大学入試を改める。

読売新聞 2014年12月24日

大学入試改革 山積する課題を克服できるか

大学入試の見直しをテコに、高校・大学教育を充実させる。掲げる理念はもっともだが、実現に向けて克服すべき課題はあまりに多い。

中央教育審議会が、大学入試改革に関する答申をまとめた。

現行の大学入試センター試験を廃止し、思考力や表現力を中心に評価する「大学入学希望者学力評価テスト」を導入する。各大学は、その成績に加え、面接や集団討論など多面的な手法で受験生の主体性や協調性も見極めるという。

昨秋に政府の教育再生実行会議が出した提言に沿った内容だ。

教科書を暗記するだけでは、社会の様々な問題に適切に対処するのは難しい。従来の入試が知識偏重だったことは否めない。

柔軟な発想と問題解決能力を備え、社会に貢献できる人材を育成するには、入試の在り方の大胆な転換が必要だ、という答申の指摘には理解できる面がある。

しかし、肝心の学力評価テストの具体像は見えない。どんな問題で思考力や判断力を測るのか。

答申は、複数の教科にまたがる「合教科・科目型」や、教科の枠にとらわれない「総合型」の問題も出すとしている。だが、高校は教科ごとの学習が中心だ。高校生は入試の準備に戸惑うだろう。

学力評価テストの成績は「1点刻み」ではなく、大まかなランクの段階別に表示する方向だ。点数という客観的な物差しをなくすことで、大学の選考作業に不都合は生じないか。また、社会的な理解は得られるだろうか。

各大学の個別選抜の行方も不透明だ。面接や集団討論のノウハウを持つ大学は少ない。評価基準があいまいなら、選抜の公平性が疑われる。大規模な大学が全受験生を面接するのは不可能に近い。

難関大学からは、幅広い知識や学力の習得を個別試験で確認したいという異論も出ている。

答申は、高校2、3年生を対象にした「高等学校基礎学力テスト」の導入も提言した。学力の定着度の把握が目的で、小中学校の全国学力テストの「高校版」だ。入試の参考資料にも使うという。

両方の新テストは、年に各複数回の実施を想定している。生徒が「テスト漬け」にならないか、学校行事や部活動の時間を確保できるか、高校側には懸念が強い。

答申は新たな入試の2020年度からの実施を求めているが、拙速は避けねばならない。教育現場に混乱をもたらさないよう、文部科学省は、実現性を考慮し、慎重に検討を進めるべきだ。

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