再生エネ買い取り 価格引き下げ促す改革を

朝日新聞 2014年12月24日

再エネ新ルール 既存事業はこのままか

太陽光発電など再生可能エネルギーの新たな受け入れを大手電力が中断している問題で、政府の対応策が決まった。

受け入れ余地を上回る申し込みがあった結果の中断である。電力会社が再エネ事業者から買い取る量を制限しやすくなるようにルールを改め、代わりに送電網に接続できる事業者数を増やすことをねらう。これから電力会社に契約を申し込む新規事業者が対象となる。

当座の手当てだ。やむをえない面もあるが、問題は残っている。すでに発電を始めていたり電力会社と契約が済んでいたりする既存事業者が、新ルールの対象外となっている点だ。

新ルールは、契約時期で線引きしている。仮に新規事業者が効率的な経営をしていても「買い取りは既存事業者優先」となってしまう。経営の優劣より事業を始めた時期がものを言うようでは、公平な競争と言えるのか。優れた事業者が勝ち残るための改善・工夫が必要だ。

また、利用者の負担が過大になる恐れもある。

買い取りにかかる費用は、再エネ事業者のコストに一定利益を乗せて計算し、電気料金に含めているので結局、電気を使う利用者が負っている。

資料などから試算すると、制度が当初想定していた利益率を上回る計画が半数近くある。

利益を保証して事業への参入を促す。再エネが普及して原材料費が下がれば買い取り価格も下げ、やがて再エネ事業が独り立ちできるようにする。これが制度の本来の狙いだ。それでも利用者の負担が過大になるようなら、改善するべきだろう。

また、現行制度では経営情報を公開する義務もなく、事業者や発電所ごとのコストと利益が利用者には見えないままだ。

まず、利用者に対し事業者が経営データを公開する仕組みを取り入れる。既存事業者の財務状況を確認したうえで、新規事業者と同等のルールを適用できれば、制度がより公平なものになるうえ、新規参入の受け入れ枠をさらに増やすことにもつながる。

事後変更があまりに頻繁だと事業の先行きが見通せなくなり、制度そのものが信用されなくなる。しかし、規制と競争が混合する新産業育成だ。試行錯誤の要素は除けない。ドイツは、既存事業者にさかのぼって新たなルールを適用する対策を実施してもいる。

利用者負担を抑えながら再エネを普及させる。大きな目標にそって、制度の改善に努力してもらいたい。

読売新聞 2014年12月22日

再生エネ普及 見直しの副作用は最小限に

大手電力5社が、太陽光など再生可能エネルギーの新規受け入れを中断ている問題で、政府が対策をまとめた。

太陽光による発電量が急増した際、再生エネの発電事業者に出力抑制を求める制度を拡充することが柱だ。

国内自給でき、地球環境への負荷が小さい再生エネは、できる限り普及させたい。

だが、政府がすでに認定した太陽光発電所がフル稼働すると、発電量が送電網の許容量を超え、停電などが起きる恐れがある。

現行の買い取り制度が正常に機能していない以上、大幅に見直すことは当然だ。

現行制度では、電力が余った場合、電力会社は年間30日まで、太陽光発電事業者に補償金を払わず受け入れを制限できる。

これから買い取りを開始する契約については、日数の上限なしに制限をかけられるよう改める。事業用に限っていた出力制限の対象に、家庭用も加える。

太陽光の買い取り申請が特に多い九州電力や東北電力は、政府の認定した発電能力の半分程度しか受け入れられない計算だ。

出力制限を拡充して発電量を調整しやすくし、認定を受けた設備が発電を開始できなくなる事態を防ぐ狙いは妥当だろう。

ただ、買い取り量が見込みより大きく落ち込めば、採算が合わなくなる事業者もいよう。売電収入をローン返済の一部に充てようとしていた人が、住宅購入を見合わせるケースも出ているという。

各電力会社は、できるだけ再生エネで発電した電気を受け入れるよう、工夫してもらいたい。

2012年に1キロ・ワット時40円でスタートした太陽光の買い取り価格は、32円に引き下げられたが、それでも欧州の約2倍の高さである。政府はこれを来年4月から、さらに下げると見られる。

これまで、価格を引き下げる前になると、買い取ってもらえる権利だけは確保しておこうと、実態のない計画が申請され、政府の認定を得ることを繰り返してきた。政府は計画を精査すべきだ。

予定日を過ぎても発電を開始しない場合は、特段の事情がない限り契約解除を原則としたい。

太陽光だけでなく、風力や地熱など特性の違う再生エネをバランスよく導入することが、電力の安定供給にも資するはずだ。

参入が突出して多い太陽光については固定価格による買い取りから入札制に改めるなど、より抜本的な改革が求められる。

産経新聞 2014年12月22日

再生エネ買い取り 価格引き下げ促す改革を

太陽光など再生可能エネルギーを固定価格で買い取る制度の見直し策がまとまった。電力会社が受け入れる発電量を制限しやすくする仕組みなどを導入するという。

今の制度では、太陽光の買い取り価格が高く設定されているために申請が殺到し、電力会社が受け入れを中断する事態に陥っている。当面の対策にとどまる見直しでは不十分だ。

再生エネの電力を買い取る費用は、すべて電気代に上乗せされている。国民負担の軽減や健全な産業育成につなげるためには、事業者の競争を通じ、買い取り価格の引き下げを促す抜本的な改革を急ぐべきだ。

国は事業者が申請した発電計画について、内容に問題がなければ原則として認可している。だが、経済産業省がまとめた電力会社による受け入れ可能量は、国が認定した発電量の半分程度にとどまっているという。

電力会社の受け入れ能力を考慮せず、認可を先行させた制度設計に問題があったからだ。

天候などにより発電量の変動が大きい太陽光の受け入れが増えすぎれば、電力の安定供給に支障が出る恐れがある。九州や北海道など電力5社が新規の受け入れを停止したのもそのためだ。見直しを経て受け入れを再開する。

現行では、電力会社が無補償で受け入れを制限できるのは年30日だが、この上限を引き上げる。買い取り価格の決定も、申請時点から契約時点に延ばし、価格引き下げを反映しやすい方式にする。

民主党政権当時に導入が決まった買い取り制度は、原発に代えて太陽光や風力、地熱など再生エネの普及を目指し、それらによる電力を電力会社が固定価格で20年購入することを義務づけた。割高に設定された太陽光に、参入が集中する弊害を招いた。

標準的な家庭で、電気代に上乗せ徴収されている賦課金は年2700円に上る。再生エネの導入が進むと年1万円を超える。買い取り価格の引き下げは急務だ。

発電した電力の品質や価格に基づく競争も十分に働いていない。再生エネの導入量目標を定め、競争入札を実施し、質や価格を見比べて買い取る仕組みが重要だ。

環境負荷が小さな再生エネは、地域産業としても期待が高い。地熱なども含めたバランスの取れた導入を図りたい。

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