ソニーの米映画子会社へのサイバー攻撃を、米連邦捜査局(FBI)が北朝鮮の犯行と断定し、オバマ米大統領は相応に対応すると表明した。
大統領は北のテロ支援国家への再指定を検討していることを明らかにした。北への警告として有効な選択肢といえる。
テロ支援国家の指定解除は、北が2008年、「すべての核計画申告」の口約束で、ブッシュ前米政権から引き出した。
産経新聞は、履行の保証がないと強く反対し、その後も北の核実験などに際し、解除の撤回を求めてきた。サイバー攻撃は歴然たるテロである。今こそ、再指定を決断してもらいたい。
日本人拉致事件が未解決であることも忘れてはならない。
テロ支援国家は米政府が独自に指定し、世界銀行などによる融資禁止や武器禁輸などを科す。北は大韓航空機爆破事件を受け、1988年から指定されていた。
米政府は北がテロ支援国家リストにあった05年、関連口座のあるマカオの銀行と米金融機関との取引を禁じ、北に打撃を与え、譲歩を引き出した。
核・ミサイル開発を含め北の脅威は増大している。対北圧力を強めるため、米国は同種の金融制裁にも踏み込むべきだ。
ソニー子会社は、北の金正恩第1書記の暗殺を描いたコメディー映画を製作し、標的になった。
映画は米国を代表する産業であり、文化である。劇場がテロ予告の脅迫を受け、身近な庶民の娯楽が奪われた。
映画に限らず、他の民間企業や政治、軍事の中枢、主要インフラ施設も標的となりうる。国家安全保障上の脅威だ。
ケリー米国務長官は中国の王毅外相との電話協議で、北のサイバー攻撃阻止への協力を求めた。中国は影響力を行使すべきだ。
日本や日本企業が標的となる可能性もある。専門の人材を集め、各国との連携を強化し、防御能力を高める必要がある。
23日にかけて原因は不明だが、北の主要ウェブサイトが接続できなくなる事態も起きている。
国連安保理が北の核・ミサイル開発に加え、人権侵害を議題化したことの意味も大きい。総会決議は安保理に、この問題を国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう促している。拉致を含む北の人権侵害も厳しく追及すべきだ。
この記事へのコメントはありません。