ロシア通貨であるルーブルの為替相場が急落し、国の経済が激しく揺れている。
プーチン大統領は、欧米からの制裁を招いて経済を深く傷つけた、これまでの強硬政策の転換に早急に踏み切るべきだ。
主要輸出品である原油の安値も受け、インフレが悪化している。来年は経済のマイナス成長も見込まれている。
資源の輸出に頼る他の新興国もおしなべて通貨安に悩んでいる。だが、そのなかでもルーブルの急落は突出している。
ロシア経済は新興国の中で規模が大きく、景気後退が深刻な欧州経済と密接な関係を持つ。その変調が世界経済の新たな懸念材料となるゆえんである。
この苦境から脱する道のりはきびしい。いま直面している事態は、プーチン氏による長年の政策のつけだからだ。
まず、今週の記者会見で自ら認めたように、資源依存を抜け出して、国際競争力を持つ製造業を育て、経済を多角化する必要に迫られていたのに、長らくその努力を怠ってきた。
経済の腐敗・汚職体質も依然深刻である。中でもプーチン氏の側近が資源や国防などの基幹産業を牛耳る不透明な国家主導型の経済運営は、外資導入の重大な障害になっている。
なのに、改革を求める野党勢力をプーチン氏は力で抑えてきた。一方で、米欧と真っ向から対立する強硬策で国民の愛国心を刺激し、自分への高い支持を保とうと努めている。
隣国ウクライナの領土であるクリミア半島を併合し、さらにウクライナ東部の分離派武装勢力を支援していることも、国民の大国意識をあおり、政権の求心力につながっている。
しかし、その代償として、欧米から発動された経済制裁の重みが、原油安とともにロシア経済にのしかかった。
会見でプーチン氏は「世界経済の成長で資源価格は再び上昇し、ロシア経済も早期に回復に向かう」と強気だった。
だが、資源依存の構造を残したまま、不利益を省みない冒険的な対外政策を続ける限り、経済の脆弱(ぜいじゃく)さはこの国を揺さぶり続けるだろう。
必要な行動は明らかだ。ウクライナの領土保全を約束した9月の停戦合意に従い、紛争の平和的解決に真剣に努め、制裁の解除につなげる。そして、抜本的な経済改革に今度こそ本腰を入れねばならない。
国際社会との協力関係の回復と地道な改革以外に経済の再生はないことを、プーチン氏は心にきざむ必要がある。
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