高浜原発「合格」 再稼働に政府支援が不可欠だ

朝日新聞 2014年12月19日

高浜原発 集中立地を直視せよ

複数の原発が同時に事故を起こせば、国の存続さえ揺るがしかねない。

福島第一原発事故で直面した現実である。ところが、電力会社も原子力規制委員会も、同時多発事故のリスクをあえて直視していないように見える。

関西電力高浜原発(福井県)の3、4号機について、規制委が新規制基準に適合するとの審査書案をまとめた。事実上、九州電力川内(せんだい)原発に次いで、再稼働に向けた最初の大きなハードルを越えたことになる。

だが、川内原発とは違い、高浜原発の近隣には多くの原発がある。

高浜原発には今回の3、4号機のほかに1、2号機があり、計4基の原子炉がある。直線距離で約15キロ離れた関電大飯原発の4基と合わせると、計8基になる。約50キロ離れた関電美浜原発の3基、日本原子力発電の敦賀原発2基まで含めると、13基にものぼる。

この中で廃炉が決まった原発はない。関電は大飯原発3、4号機の審査を申請しており、高浜原発1、2号機についても申請する構えを見せている。

田中俊一規制委委員長は「集中立地は検討課題で、新設の際には十分考慮されるべきかも知れない」という。だが、既存原発に対する現在の審査は、原子炉ごとに別々に事故対応できるかにとどまっている。高浜原発3、4号機と大飯原発3、4号機のリスクを総合的に見ることはしていない。

現在の審査のままなら、個別に対応できる限り既存原子炉は何基再稼働してもいいことになる。従って、原発の集中再稼働がなし崩し的に進みかねない。

規制委自ら認めるように、新規制基準に適合しても事故リスクはゼロではない。

大地震などで、狭い地域で多数の原子炉が同時に事故を起こした場合、他の原発からの放射性物質飛散が事故対応に影響を及ぼし、制御は著しく困難になる。単独事故とはまるで異なる対応に迫られるはずだ。本社や社会の能力も問われよう。

日本ほど原発が集中立地している国は世界でもほとんど例がない。ならば、集中立地していることを踏まえて審査すべきだろう。狭い地域へのリスク集積がどこまで許されるのか、議論する。動かすというのなら、納得いく説明がほしい。

集中立地のリスクをどう考えるのか。

電力会社や規制委にゆだねるには重すぎるテーマだと言うのなら、政府全体で正面から議論すべきである。

毎日新聞 2014年12月18日

京都、滋賀の声 尊重を

新規制基準に基づく関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の安全審査で、原子力規制委員会が事実上の合格証となる審査書案を了承した。国民からの意見募集を経て正式決定する。新規制基準への「合格」は九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)に続き2例目で、再稼働に向けた地元同意手続きが始まる。

読売新聞 2014年12月19日

高浜原発「合格」 再稼働に政府支援が不可欠だ

安全審査に「合格」したとはいえ、再稼働への課題はなお多い。

原子力規制委員会は、関西電力高浜原子力発電所(福井県)3、4号機の審査合格証に当たる審査書案を決定した。

東京電力福島第一原発事故を踏まえた新たな規制基準に適合していると認められた原発は、今秋の九州電力川内原発を含め、これで4基になった。他の原発についても、規制委は安全確認を遅滞なく進めてもらいたい。

規制委は今後、高浜原発の補強工事計画や保守点検体制、緊急時対応手順などを審査する。関電による昨年7月の審査申請から1年5か月が過ぎている。安全最優先は当然だが、効率性も重要だ。

保有原発が全て停止し、関電の電力供給は綱渡りの状況が続く。東日本大震災以降、2度目の電気料金値上げも検討している。

再稼働にこぎ着ければ、状況は改善しよう。

高浜原発の安全確保のため、関電は、想定する地震の規模を震災前の1・3倍に、津波の高さを4倍超に引き上げた。従来は検討の対象外だった竜巻など他の災害も考慮した。自然災害への備えは大幅に強化されたと言える。

関電は、対策の柱である防潮堤整備や配管補強工事、保守点検の充実などをしっかり進めねばならない。新たに追加された機器や設備の取り扱いなどでの人的ミスを防ぐため、現場の作業員の訓練を重ねることも求められる。

再稼働に対する周辺自治体の理解を得る上でも、こうした着実な取り組みが欠かせない。

川内原発では、鹿児島県と地元の薩摩川内市の同意により、再稼働へのめどがついた。

高浜原発についても、福井県の西川一誠知事は「同意の(必要な)範囲は福井県と地元の町」と述べ、立地する高浜町も再稼働に一定の理解を示している。周辺自治体では、防災対策や避難計画の整備が政府の支援で進んでいる。

京都府と滋賀県は、原発からおおむね30キロ・メートル圏内が避難計画策定の範囲になったことを根拠に、同意を得るよう求めている。関電に安全協定の締結も迫っている。

だが、安全性の判断は、政府が高度に専門的な観点から責任を持つべきものだ。地元の不安を軽減するには、政府が前面に立ち、安全確保策の現状を丁寧に説明することが大切になる。

再稼働の必要性や、防災対策に関しても、理解を広げるよう努めることが肝要である。

産経新聞 2014年12月19日

高浜原発「合格」 再稼働への流れ作りたい

福井県の若狭湾に臨んで立地する関西電力高浜発電所3、4号機の安全対策が新規制基準を満たしていることを認める「審査書案」が、原子力規制委員会によって了承された。

再稼働に向けた事実上の合格証だ。九州電力川内(せんだい)原子力発電所1、2号機(鹿児島県)に続く2番目の関門通過となった。

別の必要書類の提出や地元同意などをへて、来春以降には発電再開が実現する見通しだ。川内原発1、2号機に、高浜原発3、4号機が加わることで、全面停止が続く国内原発の復活へ、はずみとなることを期待したい。

四国電力伊方発電所(愛媛県)でも審査書案作成に必要な基準地震動が確定するなど、高浜原発に続く動きも見えてきている。

エネルギーの安定供給や二酸化炭素の排出削減を確実にする上で歓迎すべき潮流の形成だが、惜しむらくは動きが遅い。

先頭を進む川内原発は今年7月に審査書案が了承され、11月には再稼働の地元同意も済んでいる。しかし、規制委による原発機器類の使用前検査などが残り、再稼働は越年することが確実だ。

高浜原発の場合は、避難計画が関係する30キロ圏内に京都府と滋賀県が入ることから、本来なら立地自治体の高浜町と福井県の同意だけでよい地元手続きが複雑になりかねない。

原発再稼働への地元同意に法律の定めはない。信頼関係を深めるための慣例として電力会社との間で続けられてきただけだ。

隣接府県が再稼働に難色を示すような事態となれば、国が前面に出て、しっかりと説明しなければならない。

規制委にも注文がある。現段階で再稼働が近いのは、規制委の主張に歩み寄って基準地震動を引き上げた原発である。

高浜原発は昨年7月、川内原発と同時に安全審査を申請したが、断層の連動性や深さをめぐって関電が容易に譲らなかったため、遅れが生じた。九電は早々と規制委に従った結果、差が生じた。

電力会社は電気代の値上げ回避のためにも審査を早めたい。規制委に異論を唱えると損をする。そうした判断が規制委への迎合につながれば、真の安全文化の芽が摘み取られることになる。

リスクの低減には、対等な議論の成立こそが重要だ。

毎日新聞 2014年12月17日

大間原発の審査 脱依存の道踏み外すな

Jパワー(電源開発)が、青森県大間町に建設している大間原発の稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請した。2020年12月の完成を目指すという。建設中の原発の申請は初めてで、合格すれば原則40年の稼働が可能となる。だが、それでは、多くの国民が望んでいる脱原発依存の道を踏み外してしまう。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2040/