安全審査に「合格」したとはいえ、再稼働への課題はなお多い。
原子力規制委員会は、関西電力高浜原子力発電所(福井県)3、4号機の審査合格証に当たる審査書案を決定した。
東京電力福島第一原発事故を踏まえた新たな規制基準に適合していると認められた原発は、今秋の九州電力川内原発を含め、これで4基になった。他の原発についても、規制委は安全確認を遅滞なく進めてもらいたい。
規制委は今後、高浜原発の補強工事計画や保守点検体制、緊急時対応手順などを審査する。関電による昨年7月の審査申請から1年5か月が過ぎている。安全最優先は当然だが、効率性も重要だ。
保有原発が全て停止し、関電の電力供給は綱渡りの状況が続く。東日本大震災以降、2度目の電気料金値上げも検討している。
再稼働にこぎ着ければ、状況は改善しよう。
高浜原発の安全確保のため、関電は、想定する地震の規模を震災前の1・3倍に、津波の高さを4倍超に引き上げた。従来は検討の対象外だった竜巻など他の災害も考慮した。自然災害への備えは大幅に強化されたと言える。
関電は、対策の柱である防潮堤整備や配管補強工事、保守点検の充実などをしっかり進めねばならない。新たに追加された機器や設備の取り扱いなどでの人的ミスを防ぐため、現場の作業員の訓練を重ねることも求められる。
再稼働に対する周辺自治体の理解を得る上でも、こうした着実な取り組みが欠かせない。
川内原発では、鹿児島県と地元の薩摩川内市の同意により、再稼働へのめどがついた。
高浜原発についても、福井県の西川一誠知事は「同意の(必要な)範囲は福井県と地元の町」と述べ、立地する高浜町も再稼働に一定の理解を示している。周辺自治体では、防災対策や避難計画の整備が政府の支援で進んでいる。
京都府と滋賀県は、原発から概ね30キロ・メートル圏内が避難計画策定の範囲になったことを根拠に、同意を得るよう求めている。関電に安全協定の締結も迫っている。
だが、安全性の判断は、政府が高度に専門的な観点から責任を持つべきものだ。地元の不安を軽減するには、政府が前面に立ち、安全確保策の現状を丁寧に説明することが大切になる。
再稼働の必要性や、防災対策に関しても、理解を広げるよう努めることが肝要である。
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