パキスタン乱射 子らへの憎むべき蛮行

朝日新聞 2014年12月18日

パキスタン テロ根絶へ国際支援を

世界のどこでも、どんな時でも、子どもたちは守られなければならない。それが大人の責務である。こともあろうに、その子どもたちが標的になった。

パキスタン北西部のペシャワルで、軍の運営する学校が武装集団に襲われた。死者140人以上の多くは児童や生徒だ。

犯行声明を出した過激派は、「パキスタン・タリバーン運動(TTP)」だ。軍が掃討作戦を続けており、今回の襲撃は、その報復だという。

どんな主張であれ、子どもを狙う暴力は断じて許されない。子どもの殺害は、その国の未来そのものの破壊でもある。

TTPは一昨年も、当時15歳のマララ・ユスフザイさんを銃撃し、大けがを負わせた。彼女がノーベル平和賞を受けると、「マララたちは何人でも殺されることになる」と脅迫した。

その卑劣な態度を、世界は声を大にして糾弾すべきだ。

同時に、このような悲劇を繰り返させないためには、どうするべきか考える必要がある。

パキスタンのシャリフ政権は今年に入って一時、TTPとの和解をめざしたものの、失敗。夏にはTTPがカラチの国際空港を襲撃するテロが起きた。

過激派に対する軍事力による対策はやむを得ない。だが、同時に今後も政治的な対話の模索も続けるほかない。シャリフ政権には辛抱強い治安対策と柔軟な統治が求められる。

欠かせないのは国際社会の支援である。TTPは、隣国アフガニスタンの反政府勢力タリバーンと連携している。両勢力が近年活発になったのは、米軍率いる国際治安支援部隊がアフガンから徐々に撤収するなど、欧米のかかわりが薄まったことと無縁ではない。

両国が社会を安定させられない以上、欧米各国の監視と支援は引き続き必須だ。手を抜けば、この地域はアルカイダなどの拠点に逆戻りしかねない。

テロを生む社会の根源には、貧困と腐敗がある。核兵器を持つ国なのに、教育が行き渡らない矛盾がパキスタンにもある。

マララさんがノーベル賞の演説で語った言葉が重い。「なぜ戦車を造ることは簡単なのに、学校を建てることは難しいのでしょうか」「政治家や世界の指導者だけでなく、私たち皆が貢献しなくてはなりません」

過激思想に走る大人を減らすためにも、子どもの教育制度を充実させ、貧困対策を進めねばならない。そのためには、日本を含む国際社会全体が、政府・市民レベル双方の重層的な協力を広げるべきだろう。

毎日新聞 2014年12月18日

パキスタン乱射 子らへの憎むべき蛮行

驚きや怒りとともに、深い悲しみを覚える。多くの命が奪われた悲しみはもとより、子供らに銃を向けて無差別発砲する人間がいることが情けなく、やりきれない。パキスタンのイスラム組織の犯行とされるが、聖典コーランをどう読み解けばそんな行為が許されるのか。事もあろうに学校で、罪もない子らの死体の山を築いたのは、世界に約16億人の信者を擁する一大宗教をおとしめた歴史的な蛮行である。

読売新聞 2014年12月19日

パキスタン襲撃 テロ封じへ国際協調を強めよ

いかなる理由をつけても許されない、残虐非道な行為である。

パキスタン北西部で、イスラム武装勢力パキスタン・タリバン運動(TTP)の集団が軍設立の学校を襲撃し、生徒・教員ら140人以上を殺害した。

過激派のテロが頻発するパキスタンでも最悪の惨事である。

オバマ米大統領や安倍首相ら各国指導者が「最も強い言葉で非難する」と表明したのは当然だ。

女子が教育を受ける権利を主張し、TTPの銃撃で重傷を負ったノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんは、「凶悪で卑劣な行為。私たちは決して負けない」と語った。国際社会がその決意を共有することが重要である。

実行犯は、逃げまどう子供らを追いつめて銃撃したという。TTPは、パキスタン軍の掃討作戦による家族殺害への「報復」というが、無辜むこの弱者を標的にした無慈悲な虐殺は正当化できない。

隣国アフガニスタンの旧支配勢力タリバンも、「イスラムの原理に反する」と襲撃を非難した。

パキスタンは近年、治安が悪化している。イスラム法統治を目指すTTPなどが、軍の基地、政府機関への攻撃や、市民へのテロを繰り返しているためだ。

核を保有するパキスタンの混乱は地域全体を不安定化させる。対テロ戦略のてこ入れが急務だ。

パキスタン軍は事件直後、TTPの拠点への空爆を開始した。オバマ大統領も軍事支援の継続を表明した。パキスタン独力のテロ掃討活動には限界があるためだ。

ただ、米国の無人機攻撃は、民間人を巻き添えにするため、パキスタン国民の反米感情を高めている。より効果的な軍事支援の手法を検討せねばならない。

アフガンでは年内に米軍戦闘部隊が撤収する。パキスタンとの国境地帯に巣食う凶暴なテロ集団の活動が活発化し、パキスタンの治安回復の障害となりかねない。

今回の襲撃には、TTPと協力関係にあるアラブ系テロリストも関与したとされる。TTPの一部は中東の過激派組織「イスラム国」と連携しており、テロの脅威は国境を超えて拡散しつつある。

テロ封じ込めには、国際社会の強固な連携が欠かせない。TTPにどう対処するかを、米国など関係国は改めて検討すべきだ。

TTPが拠点を置くパキスタン北西部の部族地域の貧困解消や資金源の取り締まりなど、非軍事分野の取り組みも重要だ。日本も、応分の役割を果たしたい。

産経新聞 2014年12月18日

学校テロ 癒着絶ち徹底的な掃討を

パキスタン北西部のペシャワルにある軍運営の学校がイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」に襲撃され、生徒ら約150人が死亡した。

武装勢力は銃を乱射し、生徒らは恐怖のなか逃げ場を失った。罪のない子供の命を奪った卑劣で残忍なテロは断じて許せない。

TTPは国内の過激組織の連合体で、イスラム法の厳格な適用を求め、反政府テロを繰り返している。女子の就学を否定し、これに批判の声を上げたマララ・ユスフザイさんを2年前に襲撃して瀕死(ひんし)の重傷を負わせた。

マララさんが今年のノーベル平和賞を受賞した際、TTPは「マララのような者は何人でも殺される」と声明を出した。

パキスタン政府は真っ向からテロと立ち向かい、TTPを壊滅に追い込んでもらいたい。

同国の政府と軍はかつて、領土問題で対立するインドに対抗するためイスラム過激組織を利用してきた。アフガニスタンの旧支配勢力タリバンも、アフガンに影響力を及ぼすため、パキスタン軍情報機関が育てた経緯がある。

同国のシャリフ政権は今年6月、ようやくTTPとの対話路線から転換し、掃討作戦に乗り出した。TTPは、学校襲撃はその報復だとしている。

TTPの一派は先月にも印パ国境の検問所で自爆テロを起こし、約60人を殺害した。軍の一部には依然、過激派と通じた勢力が残ると指摘される。シャリフ政権は徹底した掃討作戦とともに、内部から過激派との不正常な関係を絶つ必要がある。

シリアとイラクでイスラム過激組織「イスラム国」が勢力を拡大させ、オーストラリアでこれに共鳴するイラン系の男が立てこもり、2人を死亡させる事件を起こすなど、国際テロの脅威はいっそう深刻になっている。

安倍晋三首相ら各国首脳は事件を非難し、テロと戦うパキスタン政府への支援を約束した。

パキスタン北西部もまた、アルカーイダなど国際テロ組織の温床となっている。国際的な対テロ戦で、シャリフ政権が果たすべき役割は大きい。

「胸が張り裂けるような気持ちだ。しかし、私たちが屈することは決してない」とのマララさんの言葉を真摯(しんし)に受け止めたい。

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