いかなる理由をつけても許されない、残虐非道な行為である。
パキスタン北西部で、イスラム武装勢力パキスタン・タリバン運動(TTP)の集団が軍設立の学校を襲撃し、生徒・教員ら140人以上を殺害した。
過激派のテロが頻発するパキスタンでも最悪の惨事である。
オバマ米大統領や安倍首相ら各国指導者が「最も強い言葉で非難する」と表明したのは当然だ。
女子が教育を受ける権利を主張し、TTPの銃撃で重傷を負ったノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんは、「凶悪で卑劣な行為。私たちは決して負けない」と語った。国際社会がその決意を共有することが重要である。
実行犯は、逃げまどう子供らを追いつめて銃撃したという。TTPは、パキスタン軍の掃討作戦による家族殺害への「報復」というが、無辜の弱者を標的にした無慈悲な虐殺は正当化できない。
隣国アフガニスタンの旧支配勢力タリバンも、「イスラムの原理に反する」と襲撃を非難した。
パキスタンは近年、治安が悪化している。イスラム法統治を目指すTTPなどが、軍の基地、政府機関への攻撃や、市民へのテロを繰り返しているためだ。
核を保有するパキスタンの混乱は地域全体を不安定化させる。対テロ戦略のてこ入れが急務だ。
パキスタン軍は事件直後、TTPの拠点への空爆を開始した。オバマ大統領も軍事支援の継続を表明した。パキスタン独力のテロ掃討活動には限界があるためだ。
ただ、米国の無人機攻撃は、民間人を巻き添えにするため、パキスタン国民の反米感情を高めている。より効果的な軍事支援の手法を検討せねばならない。
アフガンでは年内に米軍戦闘部隊が撤収する。パキスタンとの国境地帯に巣食う凶暴なテロ集団の活動が活発化し、パキスタンの治安回復の障害となりかねない。
今回の襲撃には、TTPと協力関係にあるアラブ系テロリストも関与したとされる。TTPの一部は中東の過激派組織「イスラム国」と連携しており、テロの脅威は国境を超えて拡散しつつある。
テロ封じ込めには、国際社会の強固な連携が欠かせない。TTPにどう対処するかを、米国など関係国は改めて検討すべきだ。
TTPが拠点を置くパキスタン北西部の部族地域の貧困解消や資金源の取り締まりなど、非軍事分野の取り組みも重要だ。日本も、応分の役割を果たしたい。
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