台湾の馬英九・国民党政権の性急な対中融和路線が、否定された。
先月末に行われた統一地方選で、国民党が大敗を喫した。
22県市の首長選で、国民党のポスト数は、15から6に激減した。1998年以来無敗だった台北市長選では、党名誉主席の長男が、無所属新人に敗れた。
野党の民進党のポストは、一気に6から13に増えた。
馬総統は、大敗の責任を取り、党主席を辞任した。残り約1年半の任期中のレームダック(死に体)化は避けられまい。
選挙は、2012年に再選された馬総統の政権運営に評価を下す中間選挙の意味合いがあった。
馬氏は10年に、中国との事実上の自由貿易協定である「経済協力枠組み協定」を締結した。2期目に入ってからも、経済面での中台一体化を推し進めてきた。
経済界は概ね、中台の融和を歓迎したが、庶民の間では「格差が拡大した」との声が高まっていた。中国マネーの流入で住宅価格が高騰したことなどが原因だ。
今年3月には、サービス分野などで中台間の規制が大幅に緩和されることに反対し、学生らが立法院(国会)を占拠した。
中国は台湾に対して、香港と同様の「一国二制度」による統一を呼びかけている。
中国にのみ込まれることへの台湾住民の危機感は、民主化を求めてデモを繰り広げる香港の学生と通じるものがある。
今後の焦点は、16年の次期総統選に移る。国民党が党勢を立て直すには、急ぎ過ぎた対中融和路線の修正が不可欠だろう。
台湾独立の志向が強い民進党が勢いづくのは間違いない。ただ、住民の圧倒的多数は、中台関係について、「統一でも独立でもない現状維持」を望んでいる。経済成長には、中国にある程度依存せざるを得ないのも事実である。
現実的な対中政策を打ち出せるかどうかが、民進党の課題だ。
台北市長選における無所属候補の当選は、2大政党への批判の表れと言える。国民党、民進党は共に、岐路に立っている。
今回の選挙結果を受けても、経済面を足がかりにした中国の統一攻勢は変わるまい。台湾を取り込むことは、日米が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)に対抗し、経済圏を拡大する上でも重要な意味を持つ。
中台関係の動向は、日本を含む東アジア全体の安定にかかわる。情勢を注視する必要がある。
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