◆現実的な電源構成を議論せよ
日本経済を持続的に成長させるには、企業や国民生活を支える電力を安価かつ安定的に確保する必要がある。
このまま「原発稼働ゼロ」が続けば、電力の安定供給体制は大きく揺らぐ。日本のエネルギー政策に原子力発電をどう位置づけるのか。
各党は、企業や家計、環境に与える影響なども踏まえて、現実的な論議を展開すべきだ。
◆各党公約は割れている
自民党は公約で、原発依存度を可能な限り低減させる一方で、原発を「安全性の確保を大前提に、ベースロード電源との位置付けの下、活用する」と明記した。
発電コストや供給力を考えれば、原発の活用は不可欠だ。政権党として妥当な政策である。
公明党は再稼働を容認しつつ、「原発に依存しない社会・原発ゼロを目指す」と公約している。
民主党は、野田政権時代にまとめたエネルギー戦略を踏襲し、「2030年代原発ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と主張する。有権者に脱原発をアピールしようという狙いだろう。
しかし、「政策資源」という抽象的な文言だけでは、具体的な道筋は見えない。
維新の党は、核燃料廃棄物の最終処分問題の解決を条件に再稼働を容認しながらも、「原発依存からの脱却」を訴えている。
共産党は「即時原発ゼロ」、社民党も再稼働を一切認めず、新増設の「白紙撤回」を主張する。生活の党も「原発はすべて廃止」し、新増設も容認しない立場だ。
国内の電力事情は、老朽化した火力発電所をフル稼働させ、供給力を確保しているのが現状だ。電気料金の高騰が続いていることも見過ごせない。
こうした厳しい状況を改善する具体策なしに、原発ゼロを主張するのは無責任に過ぎよう。
原発の必要性について、地に足の着いた議論が求められる。
東京電力福島第一原発の事故後、原発の新増設は当面、難しくなっている。原子力規制委員会が安全性を確認した原発を円滑に再稼働させることが肝要である。
◆着実に進めたい再稼働
九州電力川内原発は、鹿児島県など立地自治体の同意を得て、年明け以降に再稼働できるメドがついた。原子力規制委は、これに続く原発の安全審査も効率的に進めてもらいたい。
自民党は「再稼働にあたっては国も前面に立ち、立地自治体など関係者の理解と協力を得るように取り組む」と主張している。
12年の前回衆院選では「原子力に依存しなくてよい経済・社会構造の確立を目指す」としていたのに対し、今回、再稼働実現に着実に取り組む姿勢を示したことは、深刻な電力事情を考慮した判断として評価できる。
民主党は、「責任ある避難計画がなければ、原発を再稼働すべきではない」と訴えている。再稼働のハードルをいたずらに上げることにはならないか。
政府は既に、原発の立地自治体による避難計画の作成を支援する体制を整えている。
原発技術を継承する人材育成も重要な論点である。脱原発を安易に進めれば、培ってきた技術力が失われる恐れがある。福島第一原発の事故収束や廃炉作業、核廃棄物の最終処分に関する技術開発などに支障が出かねない。
次世代の党が、廃炉など「世界最先端の原子力技術の維持」を掲げたことは理解できる。他の党の見解が聞きたい。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーには、二酸化炭素の排出量が少ないといった利点がある。可能な限り、発電量を増やしていくことは重要だ。
各党が積極的な導入を主張しているのは、もっともだ。
◆再生エネ普及に工夫を
だが、天候などによって発電量が変動する再生エネの欠点を忘れてはならない。現時点で主力電源と位置づけるには無理がある。
再生エネを巡っては、民主党政権時代に始まった固定価格買い取り制度がうまく機能していない。価格設定が高過ぎたため、買い取り申請が殺到し、混乱を招いた。民主党が公約で制度見直しに言及していないのは理解に苦しむ。
特定の電源に過度に依存することは、エネルギーの安全保障上、リスクが高い。原発、火力、再生エネなどを組み合わせた将来の最適な電源構成について、各党は議論を深めてもらいたい。
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