エアバッグ まずはリコール徹底を

朝日新聞 2014年11月28日

エアバッグ まずはリコール徹底を

事故の時に命を守るはずの装置が、命を奪う凶器になるのでは、安全・安心への備えが根底からくつがえってしまう。

エアバッグで世界第2位、約2割のシェアを持つタカタ(東京)が製造したエアバッグの欠陥問題が、米国や日本を中心に拡大している。車の衝突時にエアバッグが破裂し、金属片が飛び散る恐れがあるという。

米運輸省は、タカタが米国の一部地域で進めているリコール(回収・無償修理)を、全米に広げるよう命じた。タカタ製品を使う自動車メーカーも対応を迫られ、全世界で1千万台規模というリコール台数がさらに膨らむのは必至だ。

タカタが関連を認めただけでも3件の死亡事故が米国などで起きた。日本でも死傷者こそいないとされるが、4件の事故が報告されている。

タカタと自動車メーカーはリコールに全力で取り組むべきだ。米当局の新たな指示に応じるのは当然だろう。

日本国内でのリコール台数は260万台余だが、10月末時点で90万台近くが未改修のままだ。10年近く前に造られた古い車が多く、所有者の追跡が難しいのが一因という。

各社ともホームページで対象車種を公開し、車台番号を入力すればリコール対象かどうかがわかるようにしているが、より広く注意を促してほしい。

業界を監督する国土交通省は、関連事故が見逃されていないか調査しつつ、リコールの範囲が適切かどうかも確認する必要がある。既にリコール対象外のタカタ製品の破裂がわかっており、対応は急務だ。

それにしても、タカタと自動車メーカー側、特にリコール台数が多いホンダの対応は後手に回ったと言わざるを得ない。

タカタが不具合に気づいたのは05年、ホンダからの連絡だったという。だが「特異な事例」と判断し、運輸当局に報告しなかった。07年になって破裂事故が相次ぎ、再調査した結果、08年に米国でリコールを始めた。

一方のホンダは、タカタ製エアバッグがらみの事故を含め、米当局に報告義務がある死傷事故について、過去11年で1700件余の報告漏れがあったと新たに発表した。

タカタ、ホンダとも隠蔽(いんぺい)は否定しているが、再発防止に向けた焦点であり、第三者機関による検証が必要だ。全容解明と責任追及に乗り出した米議会の関心もその点に集中する。

「安全」を売り物にしてきた自動車業界への信頼を守れるかどうかが問われている。

毎日新聞 2014年12月05日

欠陥エアバッグ 総力あげ対応を急げ

自動車部品大手タカタが製造したエアバッグの欠陥問題が、深刻度を増している。同社製エアバッグ関連の死亡事故が報告されている米国では、運輸当局がタカタに全米規模のリコール(回収・無償修理)を求め、タカタがこれに応じなかったため、議会や世論の批判が一段と強まった。

読売新聞 2014年12月03日

欠陥エアバッグ タカタは甘い認識を改めよ

事故の際に乗員を守るはずのエアバッグが、人命を奪うというのでは、自動車の安全性への信頼は地に落ちよう。

世界2位の占有率を持つタカタ製エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題で、対応の遅れなどに対する批判が強まっている。

車の衝突時にエアバッグが破裂し、飛び散った金属片が運転者などを傷つける恐れがあり、米国では関連した死亡事故が、少なくとも3件確認された。

タカタは原因究明を目的に、エアバッグの破裂が多発した米南部などに限ってリコールを実施してきたが、米運輸省は、範囲を全米に広げるよう命じた。

リコール前に原因特定を先行させる日本と、被害防止を優先して早めに踏み切る米国の違いがあるにせよ、安全性への不安が強まっている以上、タカタはリコールの実施を急ぐべきだ。

タカタによると、米国やメキシコの工場で工程の不備があり、2000年頃から欠陥のあるエアバッグが製造されていたという。

欠陥を把握したのは、2005年だったとしている。ところが、タカタ製エアバッグを使った車を販売したホンダが初めてリコールを実施したのは、2008年になってからだった。

米上院で開かれた公聴会では、議員から両社に対し、「事実を隠蔽しているのではないか」などと、厳しい批判が相次いだ。

多くの自動車メーカーで長期間、欠陥の恐れのあるエアバッグを搭載した車の生産が続けられた結果、リコール対象は世界で1300万台以上に上った。

当初からタカタが徹底した調査を行い、自動車メーカーも事態を深刻に受け止めていれば、これほど被害は拡大しなかったのではないか。認識の甘さで対応が後手に回り、日本のもの作りと安全性への信頼を傷つけた責任は重い。

にもかかわらず、タカタの経営トップである高田重久会長が、記者会見など公の場での説明責任を果たしていないのは、理解に苦しむ。早急な対応を求めたい。

日本国内でもこれまでに、トヨタ自動車やホンダなどの260万台がリコールされている。

各メーカーはリコール対象の車種などを公表し、ユーザーに修理を呼びかけているが、まだ90万台の改修が終わっていない。

自分の車にどんなエアバッグが使われているのか、意識しないドライバーも多いだろう。メーカーは周知徹底に努めるべきだ。

産経新聞 2014年11月29日

欠陥エアバッグ 事態の認識甘すぎないか

事は人命に関わる問題だ。対応の遅れは許されない。被害対応や情報開示で後手に回る限り、火の手は広がるだけだ。

自動車部品大手タカタのエアバッグ欠陥問題が拡大する様相だ。調査の過程で最大ユーザーであるホンダの米当局に対する大量の報告漏れも明らかになり、巨額の制裁金が科される可能性もでてきた。

経営トップであるタカタの高田重久会長兼最高経営責任者(CEO)が、いまだ公の場で説明責任を果たしていないことには首をかしげる。事態をこれ以上、悪化させないためにも誠実な対応が求められよう。

国土交通省も急遽(きゅうきょ)、対策本部を設置して国内のリコール(回収・無償修理)対応などに本腰を入れ始めたが、あまりに遅い。

このままでは、日本の自動車産業全体のブランドイメージまでが大きく傷つきかねない。政府も強い指導力を発揮して、事態の早期収拾を促すべきだ。

タカタはエアバッグ生産で世界第2位でシェアの2割を占める。ホンダをはじめ日米欧の名だたる自動車メーカーに納入しており、リコール対象は全世界で既に1000万台を超えている。

問題のエアバッグは2000~07年ごろ、米国やメキシコの工場で生産された。衝突時に高圧ガスでバッグを膨らませる装置に不具合があり、作動時に金属片が飛散する危険があるという。

旺盛な需要がある北米市場に生産拠点を構えたことにより、製造コストは大幅に低減されたという。だが、結果として品質管理が手薄になっては元も子もない。

日本では、いまのところ負傷例は確認されていないが、米国では欠陥との関連が疑われる死亡事故も報告されている。

リコール対象は当初、事故の発生率が高い米南部の高温多湿地域などに限られていたが、米運輸省は対象を全米に拡大するよう命じた。タカタやホンダの対応を消極的だと見て、不信感を募らせていることが背景にあるようだ。

リコールに際し原因究明を優先する日本と、最悪を想定し早めに踏み切る米国では微妙な認識の違いがあるにせよ、安全対応に強い不安の声が上がるのは当然だ。

問題を限定的に捉え、事態を悪化させたケースは、過去にもあった。そうした教訓が生かされなかったのは残念だ。

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