事故の際に乗員を守るはずのエアバッグが、人命を奪うというのでは、自動車の安全性への信頼は地に落ちよう。
世界2位の占有率を持つタカタ製エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題で、対応の遅れなどに対する批判が強まっている。
車の衝突時にエアバッグが破裂し、飛び散った金属片が運転者などを傷つける恐れがあり、米国では関連した死亡事故が、少なくとも3件確認された。
タカタは原因究明を目的に、エアバッグの破裂が多発した米南部などに限ってリコールを実施してきたが、米運輸省は、範囲を全米に広げるよう命じた。
リコール前に原因特定を先行させる日本と、被害防止を優先して早めに踏み切る米国の違いがあるにせよ、安全性への不安が強まっている以上、タカタはリコールの実施を急ぐべきだ。
タカタによると、米国やメキシコの工場で工程の不備があり、2000年頃から欠陥のあるエアバッグが製造されていたという。
欠陥を把握したのは、2005年だったとしている。ところが、タカタ製エアバッグを使った車を販売したホンダが初めてリコールを実施したのは、2008年になってからだった。
米上院で開かれた公聴会では、議員から両社に対し、「事実を隠蔽しているのではないか」などと、厳しい批判が相次いだ。
多くの自動車メーカーで長期間、欠陥の恐れのあるエアバッグを搭載した車の生産が続けられた結果、リコール対象は世界で1300万台以上に上った。
当初からタカタが徹底した調査を行い、自動車メーカーも事態を深刻に受け止めていれば、これほど被害は拡大しなかったのではないか。認識の甘さで対応が後手に回り、日本のもの作りと安全性への信頼を傷つけた責任は重い。
にもかかわらず、タカタの経営トップである高田重久会長が、記者会見など公の場での説明責任を果たしていないのは、理解に苦しむ。早急な対応を求めたい。
日本国内でもこれまでに、トヨタ自動車やホンダなどの260万台がリコールされている。
各メーカーはリコール対象の車種などを公表し、ユーザーに修理を呼びかけているが、まだ90万台の改修が終わっていない。
自分の車にどんなエアバッグが使われているのか、意識しないドライバーも多いだろう。メーカーは周知徹底に努めるべきだ。
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